イルミメディカル、シリーズAで3.4億円調達──光医療機器の量産・グローバル展開を加速

イルミメディカル、シリーズAで3.4億円調達──光医療機器の量産・グローバル展開を加速

xfacebooklinkedInnoteline

イルミメディカル株式会社がシリーズAラウンドの1stクローズとして総額3.4億円の資金調達を実施した。リード投資家はUntroD Capital Japanで、既存投資家に加えSMBCベンチャーキャピタルが新たに出資した。年内には2ndクローズに向けた追加調達も計画されている。

イルミメディカルは2023年2月設立のスタートアップで、名古屋大学発の技術を基盤としている。主力技術の「ET-BLIT(Endovascular Transluminal Biophotonic Light Irradiation Technology)」は、血管内カテーテルを通じて体内の深部臓器に光を照射する医療機器である。この技術により、がんや神経疾患など従来治療が難しい疾患への低侵襲治療アプローチが可能となる。現在、国内外での薬事承認取得を目指し、グローバル臨床試験の準備や量産体制への移行、品質・安全性の確保体制の整備を進めている。治療パイプラインもがん領域だけでなく、神経系疾患への応用拡大が視野に入っている。

代表取締役社長の塚本俊彦氏は、大学院修了後、製薬、化学、医療機器の各研究開発職を経て、2023年にイルミメディカルを創業した。塚本氏は、「イルミメディカルは、光を用いた革新的な医療技術の提供を通じて、医療の未来を切り拓き、健康寿命の延伸に寄与する医療技術の社会実装を目指して取組を積極的に進めていきます。」とコメントしている。(一部抜粋)

医療機器業界全体では、低侵襲かつ高精度な治療法の需要が世界的に拡大している。がん治療領域では国内外のバイオベンチャーや大手医療機器メーカーによる開発競争が活発化しており、スタートアップによる独自技術の事業化事例も増加傾向にある。国内医療機器の市場規模は拡大しており、成長の勢いが継続している。イルミメディカルは、血管内アプローチという独自の技術基盤を活かし、複数の疾患領域への応用開発に取り組んでいる点が特徴である。

今回の資金調達には、UntroD Capital JapanやSMBCベンチャーキャピタルといった国内外のベンチャーキャピタルが参加している。既存投資家も引き続き出資しており、資金だけでなくネットワークやグローバル連携の観点からも支援を受ける体制が整いつつある。調達資金は、治験対応製造体制の強化、国際治験や海外規制を見越した薬事・保険戦略、アライアンスによる治療・診断パイプラインの拡充、専門人材の採用・組織拡充などに活用される計画だ。

イルミメディカルはこれまでに複数の助成金やインキュベーション支援も受けてきた。2024年には「Aichi Deeptech Launchpad」や「あいち創造研究開発補助金」等のプログラムに採択されている。また、創業から約1年半という短期間で特許出願を進め、独自の光照射デバイス技術に関する特許査定も取得している。臨床研究や国際薬事承認手続きが進展すれば、事業としての本格展開が現実味を帯びてくる段階に差し掛かっている。

イルミメディカルの今回の資金調達は、国内スタートアップによる医療機器開発が資金面でも支援を受けられる環境が整いつつあることを示している。今後は治験開始やグローバル薬事展開、疾患領域ごとのアライアンス拡大、人材確保など、複数の課題に対応しながら事業推進が求められる。医療機器開発には長期にわたる検証と承認プロセスが必要だが、国内外の資金調達や技術商業化の事例が増加している中で、同社の動向が業界内で注目されている。

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業