Entaar、プレシリーズAで1.5億円を調達──大企業IT企画部門向けAI共創型サービスを強化

Entaar、プレシリーズAで1.5億円を調達──大企業IT企画部門向けAI共創型サービスを強化

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株式会社Entaarは、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により、1.5億円のプレシリーズAラウンドを実施した。これにより累計調達額は約2.1億円となる。

同社は「テクノロジー経済圏の再構築」を掲げ、巨大なエンタープライズIT市場の構造変革に挑むスタートアップである。主に大企業のIT企画部門を対象に、企画業務やシステム刷新に伴う調査・検討・調整といった日常的な業務を支援する。

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大手企業向けにIT投資/ナレッジDBとIT企画部門に特化したAIエージェントによる業務の型化と省人化を図るAI共創型エグゼキューションサービスを開発・提供

サービスは、ITコンサル出身者を中心とした非常駐型のコンサルタントチームと、IT企画業務に特化したAIエージェントを組み合わせた「共創型エグゼキューションサービス」で構成される。ユーザー企業は、IT投資ポートフォリオの分析やRFP作成、システム更改計画、ROI試算、ベンダー選定などを、通常のコンサルティング費用の約4分の1のコストで依頼でき、同時に業務データやナレッジが自動的に蓄積される仕組みになっている。これにより、属人的な業務や外注依存、レガシーシステムに起因する課題を解消し、企業内部に知見を残すことが可能となる。

代表の齋藤大和氏は、公務員やIT総合商社での経験を経て、メドレーやアスエネで事業開発に携わった後、2024年にEntaarを共同創業した。インタビューで齋藤氏は「SierやITコンサルが長らく独占してきた市場を再設計する必要がある。私たちは、その変革に挑戦する事業家集団だ」と語る。また創業から約1年半で、既に数十社の大手企業がサービスを利用している点を強調した。

日本のDX推進は依然としてIT人材不足やレガシーシステムの制約に直面しており、大企業は日常業務に膨大なリソースを割かざるを得ない状況が続く。その結果、高額なコンサルファームへの依存が増し、コスト負担の重さが課題となっている。齋藤氏は「コンサルに発注するほどではないが、自社で人材を採用できない。その間を埋める存在になることが私たちの役割だ」と説明した。

IT実務ナレッジデータベース イメージ画像
IT専任担当が不在のグループ会社に対して、一人月以下のリソースからでも提供が可能で、Entaarが支援したデータ/実務ナレッジは、共通データベースに自動蓄積される

今回の資金調達により、同社は主に三つの領域を強化する。第一に、既存サービスの拡充として、IT実務者向けエグゼキューションサービスやAIエージェント機能の提供を進める。第二に、PdMや事業開発、営業責任者を中心とした採用を加速させる。第三に、得られた顧客リレーションやデータを活用し、新規領域への参入を目指す。

今回のラウンドでは、ジェネシア・ベンチャーズが新規投資家として参画し、既存株主であるアスエネCEOの西和田浩平氏も引き続き出資した。齋藤氏は「CVCを含む事業会社との連携を一層深めたい」と語り、特にグループ会社を多数抱える大企業との協業を通じて、IT企画部門への浸透を進める方針を示した。また、流通領域を持つ大手プレイヤーについても「敵対ではなく協業の形を模索したい」と述べ、業界全体との関係強化に前向きな姿勢を示している。

同社のサービスはすでに国内の大手メーカー、インフラ事業者、金融・保険業界など幅広い分野で導入されている。対象は数千億円から兆円規模の企業グループに及び、齋藤氏は「ホールディングスだけでなく、子会社単位のIT企画部門にもフィットする。日本は子会社ごとに権限を持つケースが多く、導入余地が大きい」と強調した。

また将来構想として、AIアバターによる実務相談機能の開発を進めており、Gartnerのアドバイザリーサービスを参考に「実務者版アバター」を提供する構想を描く。さらに海外展開については、北米ではなく韓国やインドネシアなどアジア地域からの進出を検討していると明かした。

齋藤氏は創業の背景について「消防官として人命救助に携わった経験から、テクノロジーを通じて社会的課題を解決できると考えるようになった」と語り、今後も「大企業の効率化を通じて日本経済に寄与する」ことを目指す姿勢を示した。

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