操電、シードラウンドで22.6億円を調達──仮想発電所構築を加速

操電、シードラウンドで22.6億円を調達──仮想発電所構築を加速

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仮想発電所ベンチャー®︎ の株式会社操電は10月17日、シードラウンドで累計22.6億円の資金調達を実施したと発表した。

エクイティによる調達が約6.5億円で、アイビスパートナーズ、RSホールディングス、AGキャピタル、HERO Impact Capitalが引き受け先として参画。残額はデットファイナンスで調達している。

今回調達した資金は、商業施設併設型の蓄電池ソリューション開発と、仮想発電所(VPP)における制御基盤の強化に投入される。

操電は2022年6月の創業以降、EV充電インフラ事業を皮切りに事業領域を拡張してきた。現在はEV充電・蓄電池・電力小売・PPA型太陽光発電までを横断的に展開し、これらをAIによる需給予測と自動制御を組み合わせたエネルギーマネジメントシステム「SODEN Platform」で統合管理する構想を掲げる。

操電が提供するソリューション
操電が提供するソリューション

同社は、2025年5月期に売上28億円・営業利益1.8億円を達成。創業3期目を迎えた現在も黒字経営を実現している。代表取締役の飯野塁氏は、「今回の出資を通じて、技術開発と事業拡大の両面でアクセルを踏めるようになった」と語る。

飯野氏は過去に消防車両製造の株式会社ベルリングを創業し、M&Aまで導いた経験を持つ連続起業家だ。「前回の事業で培った企画力と実現力を活かし、エネルギー領域でも一気通貫のソリューション提供を武器にしている」と自信を見せる。

「蓄電池は"貯める"だけではなく"出す"ことも重要であり、ソフトウェアによる最適制御こそが鍵になる」と飯野氏は強調。操電は分散配置された蓄電池を一元制御し、まるで大容量蓄電施設のように機能させる仮想発電所の実現を目指している。

従来のエネルギー業界では、企画・開発・機器調達・施工・運用が分業化されていたが、操電はこれらを内製化。地方の電気工事会社をM&Aして施工網を拡充し、全国対応可能な設置体制も構築した。

「企画から設置・運用までを一本化できるため、コスト効率と導入速度で差別化できる。分業体制では実現困難な、分散電源を束ねる仮想発電所のような新しいソリューションも、当社なら素早く社会実装できる」と飯野氏は説明する。

実際、EV充電事業ではサービス開始1年で全国約3.6万台のうち5000台に関与し、国内シェア14%でトップ3入りを果たした。今期はさらに急速充電器を中心に1500台の設置を予定しており、設置台数では国内トップクラスに躍進する見込みだ。

SODEN Platform イメージ画像
SODEN Platformを通じて「分散型エネルギー社会の実現」 を目指す

加えて、同社は2030年までに2GWh規模(一般家庭18.5万世帯分に相当)の分散電源を統合する目標を掲げている。系統用蓄電所・商業用蓄電池に加え、将来的には家庭用蓄電池やEVのバッテリーも「SODEN Platform」に参加させ、電力の需給最適化と安定化に貢献する構想だ。

資本政策も戦略的に設計しており、2029年のIPOを目標に据える。「社会インフラ分野に挑むには、資本の厚みと実績の積み上げの両輪が不可欠。黒字経営を維持しながらエクイティで資本を厚くし、デットファイナンスもレバレッジとして最大活用する」と飯野氏は語る。

海外展開についてもすでに検討を進めており、電力インフラが不安定で電気料金も高い東南アジア市場を中心に、2026年以降の早期進出を計画している。「国内で実証したソリューションは、電力課題がより深刻な海外市場でこそ価値を発揮できる」と意欲を示す。

中長期的には、家庭向け(toC)サービスの展開も視野に入れている。「電気代高騰時代において、家庭レベルでのエネルギーマネジメントは社会的意義が高い。利用者自身が電気を"操る"感覚を実感できるサービスを提供したい」と飯野氏は述べる。

現在、アセット保有企業や商業施設運営会社との連携も強化中だ。飯野氏は「われわれがアセットを持たなくても、パートナー企業の施設に蓄電池を設置し、ソフトウェアで制御させていただくことで、目標とする2GWhは十分に実現可能だ」と説明した。

最後に飯野氏は、「EVから始まり、今や蓄電池、発電、電力制御まで領域を広げてきたが、最終的に目指すのは"誰もが電気を自由に操れるオープンな世界"。分散電源の普及はその第一歩。過去に消防車や救急車を作ってきた経験と同じく、多くの人の生活に貢献することを目標に頑張っていく」と今後の意気込みを語った。

操電の事業は、エネルギー業界の構造転換期において重要な役割を担う可能性を秘めている。今後の技術開発と市場拡大の動向が注目される。

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