多様な応用が期待される「匂い」分野
匂いは目に見えないが、私たちの日常生活や環境に深く影響を与える重要な要素だ。人工知能やIoT技術の発展と消費者の体験重視の傾向が相まって、さまざまな産業で香りを戦略的に活用する動きが広がっている。今回は、匂いに関連した事業を手掛ける国内スタートアップ5社を紹介する。
スタートアップ5選
株式会社レボーン
企業HP:https://www.revorn.co.jp/
AI技術等のテクノロジーを活用し、においに関する事業を展開している。QCM(水晶振動子)を用いた「においセンサー」や、AIを用いた「においAI」を提供している。においセンサーは、人間の嗅覚を独自開発したセンサーで「香り」を情報化し、AIで解析。においAIは、においセンサーで取得したデータを学習し、様々なソリューションを実現する。
2023年3月には、佐銀ベンチャーキャピタル投資事業有限責任組合第五号、ひびき未来三号投資事業有限責任組合などを引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。
プロモツール株式会社
企業HP:https://www.promotool.jp/
香りを活用する事業を行う。オリジナルアロマオイルの販売や、香りを利用して視覚と聴覚に加え、嗅覚を刺激することによって、さらなる売上アップを目指す香りマーケティングを提供する。他にも、匂いを利用した害虫・害獣対策や香りでおもてなしをする香りの空間デザインも行う。
2022年11月には、Asia Accelerate Partnersと業務資本提携を行った。2024年4月には、同社が開発した新商品「アロマカード」がリコーの最新AI技術を活用するDX実現のための価値共創拠点「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO」のノベルティに採用された。
オドレート株式会社
自宅で出来る体臭の郵送検査キット「odorate」などの開発・販売を行う。odorateは、科学的な指標から体臭を分析し、一人ひとりに合わせた最適なケア方法を設計する体臭評価キット。体臭を周りの人がどう感じるか、臭いの強い箇所や体臭の原因をつきとめ、体臭の悩みを解決する。
2023年2月には、odorateシリーズが、開発元のオドレートの本社所在地である埼玉県和光市のふるさと納税返礼品に採用された。
株式会社Qception
超小型の新型センサ「MSS(膜型表面応力センサ)」を用いたニオイセンサを開発する。このセンサを用いてニオイを測定し、機器分析やMSSによる試験測定を通じて、ニオイに関するアプローチ方法の提案やソリューションを提供し、コンサルティングも行っている。また、生体ガス測定により生体から発生するニオイに注目し、酪農、ヘルスケア、医療分野での展開も目指す。他にも、感応膜付きMSSチップ販売、簡易測定器販売している。
2023年11月には、茨城県内において科学技術に関する研究に携わり、顕著な研究成果を収めた研究者を顕彰する「2023年度 つくば奨励賞 実用化研究部門」にて、同社の村岳氏と吉川元起氏が受賞した。2023年12月には、イノベーションリーダーズサミット実行委員会主催の「ILS2023 AWARD Top of Startups」を受賞、公益財団法人広沢技術振興財団の令和5年度ものづくり技術助成事業試験研究助成に採択された。
株式会社アロマビット
ニオイを可視化するセンサー「aroma bit」を開発する。aroma bitは、センサーが匂いをデジタルデータ化し、これまで人の感覚でしか判断できなかったあらゆる匂いが、目で見えるようになる。また、食品・農業、日用品、コスメその他産業向けの品質管理や製品開発、研究等に利用できるニオイ測定分析機器の販売や、匂いをデータ化するソフトウェア「ScentifAI™️」や匂いをデータ分析する「Aromalyzer®」も開発している。
2022年9月には、明治ホールディングスを引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。
医療や食品業界での活躍に期待
今回紹介した企業は、匂い分析技術の進化を加速させている。匂い分析が病気の診断や食品の品質管理など医療や食品業界などさまざまな分野で活用されることが期待される。今後も、匂い分析関連のスタートアップの動向にはさらに注目が集まりそうだ。