AIで越境ECの複雑さを解消ーーSAZO、7.1億円を調達し物流・BtoB展開へ

AIで越境ECの複雑さを解消ーーSAZO、7.1億円を調達し物流・BtoB展開へ

xfacebooklinkedInnoteline

AI技術を活用した越境ECプラットフォームを展開する株式会社SAZOは、国内外のベンチャーキャピタルや事業会社、金融機関を引受先とする総額7.1億円の資金調達(第三者割当増資、融資)を実施した。

SAZOは2023年10月設立のスタートアップで、AIを活用した国際間電子商取引(越境EC)プラットフォームの開発・運営を主な事業とする。「SAZO」は日本在住者が韓国ECサイトの商品を購入できるサービスとして2024年5月に提供を開始。今後は韓国在住者向けに日本商品の購入機能も追加する予定で、日韓間の双方向取引の基盤構築を進めている。

「SAZO」サービスでは、ユーザーが海外ECサイトの商品URLを入力すると、AIが商品ページの翻訳、梱包サイズの推定、為替・関税・配送料・各種手数料の自動計算を実施し、購入総額を即時提示する。これにより、情報入力や支払い総額の不透明性、複雑な手続きを大幅に軽減し、国内ECサイトと同様の感覚で越境購入が完結する設計となっている。また、海外トレンド商品を検索・購入できる機能も搭載する。SAZOによれば、サービス提供開始直後から取扱高は四半期ごとに179%を超える成長を記録している。

代表取締役のギル・マロ氏は韓国出身。日本への留学経験があり、起業支援プログラムへの参加を通じてビジネスアイデアを具体化した。留学中に海外EC商品の購入手続きの複雑さを実感したことが、AI活用による越境ECプラットフォーム構想の起点となった。ビザ取得や資金調達など、多面的な創業課題に直面しながらも、大学や自治体の支援、アクセラレータープログラムを活用し2023年に創業に至った。

越境EC市場は経済産業省の調査によれば、日本、アジア、北米を中心に拡大している。特に日本・韓国・中国間ではファッション、コスメ、雑貨など消費者需要が高まっているが、言語、決済、物流、関税など多層的な障壁が存在し、従来は「購入代行」型サービスが主流だった。近年はAIや自動化技術を活用したワンストップ型の新興プレーヤーが台頭しており、ユーザー体験の向上と取引工程の簡素化が進んでいる。競合としては、Buyee(tenso運営)などが挙げられる。Buyeeは現地サイトと連携し比較的スムーズな購入体験を提供してきたが、総額表示や手続きの簡便さには課題が残る。大手マーケットプレイスであるAmazonや楽天も越境対応を進めているが、AIやユーザー体験の面で各社に違いがみられる。

今回の資金調達ラウンドには、日本郵政キャピタル、鈴与、D4V、SMBCベンチャーキャピタル、愛知キャピタル、ポーラ・オルビスHD、MVC、ゼロイチキャピタル、パートナーズファンド、複数の個人投資家が参加した。借入先としては名古屋銀行、日本政策金融公庫が加わっている。

調達した資金は、以下の目的に充当する。

  1. AI技術の高度化:越境ECにおける検索、決済、物流、関税処理の自動化・効率化技術を開発。

2. グローバル物流網の拡充:日韓を含む国際配送に向け、日本および海外で物流拠点を強化。

3. プラットフォームとマーケティングの拡大:SAZOのグローバル越境ECプラットフォームの認知向上と、顧客基盤拡大のためのマーケティング活動の強化。

4.関税・輸送コスト予測のBtoB展開:通関業務のDXと人材不足解消に資する法人向けソリューションを開発。

5.組織体制の強化:エンジニア、マーケティング、コーポレート人材の採用・育成を通じて事業成長を加速。

SAZOはまず日本―韓国間の取引で基盤を固め、今後は対象国や地域を順次拡大していく計画だ。

画像はSAZO HPより

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

投資家向けサービス

スタートアップ向けサービス