GROWTH VERSE、シリーズCで総額29.2億円を調達──AI開発加速とM&A推進へ

GROWTH VERSE、シリーズCで総額29.2億円を調達──AI開発加速とM&A推進へ

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AI SaaS事業を展開する株式会社GROWTH VERSEは、シリーズCラウンドにおいて、NBジャパン・アセンダント・クロスオーバー株式ファンド1号、株式会社デジタリフト、個人投資家を引受先とする総額9.2億円の第三者割当増資を実施した。あわせて、みずほ銀行からの借入20億円を得て、合計29.2億円の資金調達を完了。これにより、同社の累計調達額は54.8億円に達している。

同社は2021年の創業以来、「BUILDING AI to maximize Business Growth」をミッションに掲げ、マーケティング、カスタマーサポート、売上管理、人流分析など多様な業務領域でAI SaaSを展開してきた。マーケティングAI SaaS「AIMSTAR」、人流分析AI SaaS「ミセシル」、売上管理AI SaaS「Zero」を展開し、2025年7月1日付でIVRクラウドサービスの株式会社電話放送局を子会社化。通販、金融、アパレルなどのエンタープライズ企業を中心に急成長を続けている。

「AIが出てきた今、新たな事業機会が広がっており、スピードが極めて重要だ」。代表取締役会長兼CTOの南野充則氏はこう強調する。同社では新規開発よりもM&Aを重視し、既に市場で実績のある企業にAIを導入することで、短期間での価値創出を図っている。AI導入による成果は2~3ヶ月で現れることも多く、従来の新規開発と比較して約3倍のスピードで事業化が進むという。

売り上げ収益棒グラフ
未上場時からM&Aを行うことで非連続的な成長を実現し、2027年9月期までに既存事業の成長およびM& Aにより売上5~10倍を目指す(画像はプレスリリースより)

M&A戦略の核となるのは、業界横断型と業界特化型のサービスを組み合わせた「クロス展開」だ。AIMSTARや電話放送局のIVRサービスは業界を問わず広く使える横断型サービスである一方、Zeroやミセシルは特定業種に特化したサービスとなる。これらを組み合わせることで、深い業界知見と幅広い展開力の双方を備えた事業基盤を形成している。

M&Aで重視するのは、(1)市場性、(2)既存事業とのシナジー、(3)AIを導入することでの拡張性、の3点である。「AIを入れたときにどれだけ価値が伸ばせるかが、私たちと組む理由になる」と南野氏は述べ、買収前には自社AIの適用可能性を事前検証することも多いという。

同社は業界ごとの有力企業でAI導入の成功事例を作り、それを起点に業界全体への普及を図る戦略を取っている。「業界のこの会社でAIを活用したらこんなに数字が良くなったという事例をどんどん作っていくことで、その業界ごとに普及を図っていく」と説明する。

マルチバーティカル戦略の図
全ての企業活動をAI化し、業務最適 ・ 売上最大化するために、各業界に入り込んで業務をAI化していく(画像は公式サービス資料より)

主力市場は通販、金融、アパレル分野の大手エンタープライズ企業であり、売上モデルはストック型のサブスクリプション契約が中心となっている。既存事業の年間成長率は30~50%を計画しており、クロスセルやアップセルも進めている。グループ内の連携を通じた顧客単価の向上も狙いの一つだ。

今回調達した資金は、主にAI開発の加速とM&Aの強化に充当される。EPS(1株当たり利益)を意識し、希薄化を抑えるためにエクイティとデットをバランスよく組み合わせた調達構成とした。

新規株主との関係も今後の成長に向けた布石となる。NBジャパンは上場前から上場後まで一貫して支援する姿勢を示すクロスオーバー型のファンドであり、GROWTH VERSEの中長期戦略にとって重要なパートナーとなる。デジタリフトとは業務提携も進行中で、マーケティング領域での連携が始まっている。

さらに、同社は主力市場である通販、金融、アパレル分野での関係構築を重視しており、これらの業界企業との協業や出資関係の強化を進める方針だ。加えて、GoogleやNVIDIAといったAI技術に注力するグローバル企業との資本業務提携にも前向きな姿勢を示している。

将来的な海外展開にも意欲を見せる同社。「日本のAI活用は遅れているが、私たちがそのモデルを作り、海外に展開することで日本の存在感を高めていきたい」と南野氏は語る。LLMの普及により翻訳や英語化が容易になったことを受け、アジア展開の準備を進めている。

GROWTH VERSEは今後、業界ごとの有力企業でAI導入の成功事例を積み重ね、各業界での普及を目指す構えだ。AIの社会実装が加速する中、スピードと確実性を兼ね備えた戦略で、同社がどこまで市場を拡張できるかに注目が集まる。

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