音響スタートアップ、「気配感」武器にエンタメ領域への展開加速

音響スタートアップ、「気配感」武器にエンタメ領域への展開加速

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KEPPLE編集部

目次

  1. 「気配感」を再現する独自の音響技術
  2. すでに実績多数、活路はエンタメ
  3. Re:Sense™を誰でも使える技術に

2024年4月、独自の音響技術「Re:Sense™」を開発する株式会社クレプシードラがシリーズAエクステンションラウンドにて、第三者割当増資による1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、ユナイテッド、テレビ東京、バスキュール、MIXIと個人投資家。

「気配感」を再現する独自の音響技術

同社が開発するRe:Sense™は、独自の収録手法や人工知能を活用した音響技術。Re:Sense™を活用して制作されたコンテンツは、ヘッドホンやイヤホンを通して聴くことで、実際にその場にいるような音の遠近感や臨場感を体験できる。

気配感や息遣いを収録・再現する特徴を活かし、エンターテインメント領域を中心に、企業と連携したコンテンツ制作を進めてきた。収録には、クレプシードラが用意するマイクを使用する。特殊な専用スタジオ環境を準備する必要はなく、既存の環境で収録可能だ。

今後は、Re:Sense™活用の幅を広げると同時に技術利用のハードルを下げ、同社が展開する音声プラットフォーム「Echo Canvas」上のコンテンツ拡充に取り組む。

今回の資金調達に際して、代表取締役CEOの今氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

すでに実績多数、活路はエンタメ

―― 御社の開発した技術「Re:Sense™」について教えてください。

今氏:Re:Sense™は、音声コンテンツの迫力を存在感や気配感まで伝わるレベルまで再現する音響処理技術です。

立体音響や空間オーディオという今までの技術は、空間感のある音声を収録しようとすると、大掛かりな機材や音響専門のエンジニアが必要になることも多くありました。弊社が独自に開発したマイクとAI機械学習を使った信号処理を使えば、現実に溶け込むような臨場感を手軽に再現できます。技術としては、画面の解像度がフルHDから4Kに上がったようなイメージをするとわかりやすいかもしれません。

この技術の特徴はエンターテインメントとのシナジーが高いことです。昨今はネットやSNSを中心にVTuberのような新しいコンテンツが日々増えています。キャラクターが画面の中から出てきたかのような体験で特別感の演出につながり、「推し活」との相性が良いのです。

立体音響や空間オーディオがシアターや音楽視聴では広く使われていますが、Re:Sense™はヘッドホンやイヤホンを使用した際の立体的かつ空間的なサウンドに特化しており、IPやキャラクターの存在感を再現することに向いています。個人消費をターゲットとしている点が主な差別化ポイントです。

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―― エンタメ分野での活用が多いのですね。

JR東海の「推し旅」という企画にて、VTuber事務所の「ホロライブプロダクション」とコラボした「ほろ~かる京都篇」というプロジェクトがあります。

Re:Sense™を活用した、VTuberと一緒に京都を旅しているような特別感のあるオリジナルボイスを、東海道新幹線の車内で聞けるというもので、移動中の時間を忘れさせるような体験の提供につながり、高い顧客満足度を得ることができました。 

イベントで使用された画像
ご当地応援と絡めた「推し活」イベントでRe:Sense™が使用された (画像:クレプシードラ提供)

また、男性アイドルグループJO1の旅ロケ動画もあります。実際にメンバーの隣を歩いているかのような体験ができるんです。他にも、声優の佐倉綾音さんによるボイスドラマや、アニメIPとコラボしたボイスラリーなど、エンタメ業界を中心とした活用実績があります。X(旧:Twitter)やYouTubeでは、空間音響に関する多くの反響をいただきました。

―― 創業のきっかけは?

エンタメやオーディオが好きで、以前はソニーのAR/VRやサラウンドの技術開発部門に12年ほど勤務していました。技術をコンテンツ制作に活かし、クリエイティビティの可能性を広げていくことに以前から強く関心を持っていたんです。

多くの知見やアセットを持つ環境での技術開発に魅力を感じつつも、次第に「これまでの枠組みを外れた技術開発に取り組みたい」と思うようになりました。そこで、ソニーを離れて東京工業大学で画像と音響に関して学びなおすことにしたのです。その中でRe:Sense™の原型となる技術を開発し、創業に至りました。

Re:Sense™を誰でも使える技術に

―― 調達資金の使途について教えてください。

これまでの各社とのコラボレーション活動を通じて、エンタメ業界における親和性の高さが顕著に見えてきました。それに伴い、コンテンツ制作に関する要望の幅が広がってきております。まずは機材を使ったコンテンツ制作を支援する人材を中心に採用を進め、誰もが使える技術にするための研究開発も強化する予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

足元では、企業を中心にRe:Sense™を活用いただいていますが、長期的には配信者などの個人クリエイターそれぞれがRe:Sense™を使って、コンテンツを簡単に作れるように技術をパッケージ化させることが目標です。

また、VTuber事務所と協力して新規コンテンツによる知名度アップを目指し、Re:Sense™作品のコンテンツプラットフォームとしてEcho Canvas®を拡充させることで、クリエイターが自由に活動するための環境整備を進めていきます。

我々は音響技術と音声コンテンツを共に事業として成長させることで、人の琴線に触れる体験とカルチャーを創造したいと思っています。ご興味いただける企業はぜひお声がけください。

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