“広告のアナログ慣習”を変える──オーマッチ、1.2億円でOOHプラットフォームを強化

“広告のアナログ慣習”を変える──オーマッチ、1.2億円でOOHプラットフォームを強化

xfacebooklinkedInnoteline

オーマッチ株式会社が、OOH(Out of Home:屋外)広告分野に特化したプラットフォーム「オーマッチ」の開発および運営強化のため、総額1.2億円の資金調達を実施した。今回のラウンドではファーストライト・キャピタルがリード投資家となり、既存株主のSBイノベンチャーおよびソフトバンクが引き続き参加した。

オーマッチは20212年に設立されたスタートアップで、ソフトバンクグループの社内起業制度「SBイノベンチャー」からスピンアウトした。主要事業は、屋外広告の情報を可視化し、取引のデジタル化を推進することにある。同社が提供する「オーマッチ」は、交通広告や大型ビジョン、デジタルサイネージなど多様な屋外メディア約20万件を掲載する広告プラットフォームである。利用者はエリアやメディア属性、ターゲットなど複数の条件で広告枠を横断的に検索し、料金や出稿方法といった情報も一元的に把握できる。従来は電話やFAX、メールなどアナログな営業コミュニケーションが中心だったOOHメディアの選定・手配プロセスを、オンラインで効率化する仕組みを目指している。

「オーマッチ」では、広告主が希望する予算やターゲット、出稿エリアなどの条件を入力すると、合致する広告枠のリストアップや関連資料が迅速に提供される仕組みを備えている。加えて、プランナーが検索や選定から掲出までサポートする体制も整えている。今後は人流データなど外部データとの連携を進め、広告掲出地点における推定接触者数や属性分布を可視化する分析ツールの提供も予定していると同社は説明している。

代表取締役CEOは杉山憲史氏。杉山氏は大手通信会社で新規事業開発やプロダクトのデジタル化推進に従事した経歴を持つ。2021年の設立以降、市場の構造的課題に着目し、IT技術を活用した業界の効率化・透明化に注力してきた。取締役CTOの山口裕氏と、取締役CXOの鈴木孝宜氏がそれぞれ開発・デザイン領域を担っている。創業時からSBイノベンチャーおよびソフトバンクの出資を受け、事業成長を続けている。

OOH広告業界は、テレビやインターネット広告などのマス広告に比べると市場規模は限定的だが、近年再評価の動きがみられる。電通の推計によれば、2023年の国内OOH広告市場は屋外2865億円、交通1473億円(合計4338億円)となっている。国際的なCookie規制や個人情報保護の強化、Web広告のアドブロック普及を背景に、オフラインでの接点や環境文脈を活かしたプロモーション手段としてOOHへの注目が高まっている。都市再開発や大規模イベントの開催、人流回復も追い風となり、デジタルサイネージや交通系広告の新設・リニューアルが活発化している。特に都市部では交通系大型ビジョンや駅・施設内デジタルサイネージの広告枠が増加し、広告主の需要も多様化している。

一方で、OOH広告市場には多くのメディア所有者が存在し、情報が分散しやすい。また、標準化された効果測定指標が少なく、国内市場全体でのデジタル化の進行度は限定的である。

今回調達した資金は、主に三つの領域で活用される予定だ。第一に、人流データとの連携機能の追加による広告枠ごとのリーチ推計の可視化。第二に、広告主や媒体社がオンラインで取引を完結できるワンストップ機能の拡充。第三に、広告掲載事例の体系的なデータベース化やOOH初心者・業界関係者向けノウハウ資料の公開が計画されている。

国際的には、アメリカのVistar MediaやAdQuickなど、屋外広告市場に特化したデジタルマーケットプレイスの存在感が増している。日本国内でも、IT化やデータドリブンなマーケティング手法の重要性は今後さらに高まる見通しだ。OOH広告市場のDX推進にあたっては、既存慣習や業界構造、媒体情報の正確性と網羅性などの課題に対応する必要がある。今回の資金調達を通じて、オーマッチは屋外広告取引の利便性や透明性向上に向けた開発を進める方針だ。

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業