株式会社Goals

食品産業向けAIプラットフォームを開発・提供する株式会社Goalsが、プレシリーズBラウンドで総額13.3億円の資金調達を実施した。新規投資家としてWiL、サーバーワークス・キャピタルが参画し、ALL STAR SAAS FUND、Angel Bridge、みずほキャピタルなど既存投資家も引き続き出資した。これにより、同社の累計調達額は40.9億円となった。
Goalsは2018年7月に設立され、食品業界が直面する食品ロス、原材料価格の上昇、人手不足、非効率なサプライチェーンといった課題の解決に取り組んでいる。主力製品の「HANZO」シリーズは、AIを活用した需要予測や自動発注、人件費の最適化機能を備え、飲食チェーンのオペレーション効率化およびコスト削減を支援する。2020年10月に「HANZO 自動発注」をリリース後、「HANZO 人件費」「HANZO 原価分析」などのラインナップを拡充。導入先には大手飲食チェーンが含まれ、店舗運営における食材ロスや品切れ防止、発注業務の効率化、来客数予測に基づく人員配置の最適化など、具体的な成果が報告されている。
代表取締役社長CEOの佐崎傑氏は、ワークスアプリケーションズにてソフトウェアエンジニアおよび事業責任者を経験した後、Goalsを創業した。バックエンド業務改革や大手企業でのサプライチェーン改善プロジェクトに従事したことが創業のきっかけとなっている。現COOの渡邉真啓氏は、複数企業で新規事業立ち上げや組織マネジメントを経験し、2023年9月よりCOOに就任、2025年2月から代表取締役COOを務めている。CFOの竹村隆氏は、証券業界やAIスタートアップでの財務責任者を歴任し、2024年12月より経営に参画している。
日本の食品産業はGDPの約1割を占める重要な産業であり、農林水産省の統計によると、事業系食品ロスは年間231万トン、家庭系と合わせると464万トンに達する。人材不足や原材料・エネルギーコストの上昇、物流業界での人員確保の難しさ(いわゆる「2024年問題」)など、複数の要因が業界の利益を圧迫している。特に外食業界では、食材費と人件費の2大コスト管理が大きな課題となっている。さらに、発注や在庫管理、需要予測などが属人的になりやすく、サプライチェーン全体の最適化が課題となっている。
こうした背景から、AIやクラウドを活用したサプライチェーンの効率化に対する関心が高まっている。市場には、POSや在庫・勤怠管理を提供する大手ITベンダーや、外食業向けの特化型SaaSなど複数の競合が存在する。その中でGoalsは、店舗と本部間のデータ連携とAIによる業務自動化・標準化を特徴としている。たとえば、串カツ田中ホールディングス全店への導入や、JR西日本グループの飲食事業での活用事例など、導入先での実績も公表されている。
今回の資金調達により、外食産業の利益率向上に向け、サービスのさらなる高度化、導入支援体制の強化を図る計画だ。また、今後は現在のサービスで得た食品需要データや知見を用いて食品流通企業、食品メーカーの在庫最適化に向けた新サービスの開発を進め、食品産業全体の食品ロス削減などの課題解決を目指す。
食品産業におけるAI導入や業務自動化の動きが加速する中、Goalsは調達資金をもとに事業領域の拡大とプロダクトの機能強化を図っている。日本の食品供給体制が複雑化するなか、同社が提供するデータドリブンな業務支援サービスは、外食業界や流通・製造分野での業務効率化やコスト管理の高度化に寄与するものとみられる。