テラスマイル、シリーズBで1億円超を調達──営農データ×流通をつなぐ「ジャスタウェイ」開発へ

テラスマイル、シリーズBで1億円超を調達──営農データ×流通をつなぐ「ジャスタウェイ」開発へ

xfacebooklinkedInnoteline

アグリテック領域に取り組むテラスマイル株式会社が、シリーズBラウンドで1億円超の資金調達を実施した。第三者割当増資の引受先には三菱UFJキャピタル、Future Food Fund、なんぎんキャピタルなど複数の投資機関が参画した。調達資金は、農業分野で蓄積してきた営農データ活用ノウハウを活かし、小売業や食品工場など流通領域と連携した新たなプラットフォーム「ジャスタウェイ」の開発・実装・普及に充てると発表されている。

テラスマイルは2014年に設立。農業経営管理クラウドサービス「RightARM」を主力とし、圃場・収穫・出荷などのデータを一元管理・分析する経営支援プラットフォームを提供している。RightARMは全国の自治体、農業法人、JAなど幅広い組織で導入されている点が特徴だ。営農者向けの「RightARM」と、指導員・普及員向けの「RightARM for Extension」という2種類のパッケージを展開し、農業経営の意思決定をデータに基づいて支援している。

サービス開発にあたっては、生産現場ごとの個別課題(いわゆる「N1」の課題)に即した現場起点のアプローチを重視してきた。お茶、露地野菜、水稲、施設園芸などさまざまな作目や地域に対応してきた実績がある。

代表取締役は生駒祐一氏。生駒氏は、シーイーシーでソリューションセールスを経て医療ネットワークやFAの新規事業に従事。ビジネススクール修了後は関連会社の農業法人に派遣され、MBAでの学びとデータ活用により単年黒字化を達成。2014年に宮崎でテラスマイルを創業し、2018年からは情報基盤「RightARM」を中核に事業を再構築。2019年以降は宮崎県農業経営指導士、農研機構WAGRIアドバイザリーボード、総務省地域情報化アドバイザーを務める。

農業分野では、少子高齢化や農家数の減少により、経営の大規模化・集約化が進行しており、農業人口は減少傾向にある。一方で、スマート農業と呼ばれるデジタル技術やIoTの導入が拡大しつつあり、データを活用した経営最適化への期待が高まっている。しかし、現状ではデータが生産現場や流通間で十分に連携されておらず、サイロ化が課題となっている。

また、米など主要農産物の流通では価格変動や需給ギャップが慢性的な課題だ。収穫量の予測や需要情報の共有、販路調整などが求められている。2024年度のスマート農業の国内市場規模は、前年度比109.9%の331億5400万円と見込まれている。2030年度には、788億4300万円まで拡大すると予測され、生産者以外へのスマート農業技術の普及拡大、地域の雇用創出および新たなビジネスモデルの創出が期待されている。

今回の資金調達でテラスマイルが注力するのは、営農データを流通領域と接続する「ジャスタウェイ」プロジェクトの推進である。公式発表によると、ジャスタウェイは収穫量予測、品質管理、栽培データの共有、農家と需要者のマッチングといった機能を備える。まずは米を中心に実証を進め、今後は野菜など他品目への拡大も計画されている。農家側は生産計画時点で単価や販路・数量を設計でき、需要家側も商品・数量・価格をリクエストすることが可能となるため、取引情報の非対称性の解消や安定的な供給を目指す。

農業データの現場活用から流通領域への連携に取り組む事業者として、テラスマイルは農業×IT市場で存在感を高めている。一方、競合他社も分野別に特化したクラウドサービスを展開しており、今後は現場密着型の支援体制と流通までを包括するプラットフォームの差別化が焦点となる。

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業