エスマット、シリーズCで累計36億円調達──AIとIoTによる在庫管理の自動化を推進

エスマット、シリーズCで累計36億円調達──AIとIoTによる在庫管理の自動化を推進

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株式会社エスマットが、シリーズCラウンドで第三者割当増資による資金調達を実施し、累計調達額が36億円に到達した。今回のサードクローズでは、NTTグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるNTTファイナンスが引受先となった。

エスマットは2014年創業のスタートアップで、IoT技術を活用したリアルタイム在庫管理システムの開発・提供に取り組む。主力製品である「SmartMat Cloud」は、自社開発のIoT重量計「スマートマット」を用いて、在庫品の重さから消費量を自動計測し、クラウド上で在庫の監視や自動発注を実現する。液体や粉体、個数管理が難しい部品にも対応可能で、製造業、サービス業、医療分野などで導入が進んでいる。2025年6月時点で1200社がサービスを利用している。

同社の事業成長の背景には、製造や流通の現場で深刻化する人手不足、棚卸業務の負担、在庫過多や欠品などサプライチェーン管理上の課題がある。従来、紙台帳や目視による管理が一般的だった在庫業務に対し、「SmartMat Cloud」は24時間365日、現場の在庫推移を自動で把握できる点が特徴だ。これにより、属人的なオペレーションやヒューマンエラーの低減、業務効率化につながっている。

2025年6月からは「在庫最適化AIエージェント(β版)」の提供を開始した。これはAIが在庫消費の傾向やパターンを学習し、欠品リスクや過剰在庫を事前に検知して現場へ通知する仕組みである。これまで経験や勘に頼っていた在庫判断を、データとAIを活用した意思決定へ移行することが狙いとされる。正式版のリリースは2025年秋を予定している。

エスマットの代表取締役は林英俊氏と志賀隆之氏で、両名とも創業者である。林氏は外資系戦略コンサルファームやアマゾンジャパンで事業経験を積み、2014年に志賀氏とともにエスマットを創業した。林氏はアマゾン在籍時に定期購入サービスの運営を担当し、「ほしいときに必要な量だけモノが届く仕組み」の課題を現場で体験したことが起業のきっかけとなった。その後、IoT重量計を活用した買い物自動化サービスからスタートし、事業の軸足を法人向け在庫管理サービスへと移してきた。志賀氏も創業時から経営に携わっている。

エスマットはIoTハードウェアとクラウドソフトウェアを自社開発し、連携させる設計思想を持つ。重量計測という物理現象をデジタルデータ化することで、RFIDなど他のデータ収集技術と比較して、コスト効率や導入のしやすさを訴求している。

日本の製造業をはじめとする現場では、高齢化や人手不足、生産コストの上昇、原材料価格の変動などを背景に、運用効率化やリスク管理が喫緊の課題となっている。現場の資材が欠品すれば生産停止につながるため、在庫管理の高度化が求められている。矢野経済研究所の調査によると、2023年度の国内IoT市場規模は約2660億円であり、特に製造業向けIoT導入が拡大している。市場にはRFIDや画像認識、他のIoTプラットフォームなど多様な競合が存在するが、エスマットは重量マットによる物理計測を強みに、差別化を図っている。

今回調達した資金は、主にプロダクト開発の加速に充当する。在庫最適化AIエージェント機能の正式版リリースに向けた開発や精度向上、UX改善を推進。AI×IoTによる機能拡張を進め、現場業務全体の最適化を目指す。製造業の人手不足や属人化といった課題への対応も視野に入れ、プロダクトの継続的な進化に資金を投じる方針だ。

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