関連記事
勘に頼る営業からの脱却、不動産ビッグデータを活用して顧客開拓を支援

不動産ビッグデータの収集・提供サービスを展開するTRUSTART株式会社は、シリーズCラウンドで総額13億円の資金調達を実施した。今回の調達により、累計調達額は約21億円となる。
調達は、第三者割当増資による10億円と、りそな銀行からの追加融資および三井住友銀行からの新規融資を含む3億円のデットファイナンスで構成される。エクイティではHIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)と三菱UFJキャピタルがリード投資家を務め、大和企業投資、岩手銀行、アジア航測、SMBCベンチャーキャピタル、佐賀銀行、テラスカイ、mint、日本ベンチャーキャピタル、GMO VenturePartnersが参加した。
代表取締役の大江洋治郎氏は、今回の調達について「生成AI時代に必要な独自データ基盤と、バリューチェーンを伸ばすビジネスモデルを評価いただいた」と説明。既存投資家の多くが追加出資し、新規投資家には事業連携を見据えたCVCも加わっている。特に地方銀行やアジア航測、クラウドサービスに強みを持つテラスカイなど、データ連携やソリューション拡大を後押しできるパートナーが参画し、将来的な事業領域拡大が期待される。
同氏は「当社はこれまで不動産業界を中心に事業を展開してきたが、今後は金融、IT、エネルギーなど周辺業界にもデータを提供し、業界横断的なプラットフォームへと進化したい」と語る。今後の資本政策では、不動産大手や金融機関、セールステック企業などとの事業連携を見据えたラウンド形成も視野に入れており、すでに一部の大手不動産会社とは業界全体のデータ活用に向けた協議も進んでいる。
TRUSTARTは2020年に設立され、6億件を超える不動産データを活用したビッグデータ提供サービス「R.E.DATA Plus」や不動産調査のアウトソーシングサービス「R.E.SEARCH」を提供してきた。これにより、顧客は従来アナログで行っていた不動産情報収集や調査業務を効率化でき、マーケティングや営業活動に注力できる。現在、累計取引社数は約650社に達し、シリーズBの資金調達を実施した2023年の年間売上に対し、2025年には4倍以上の売上が見込まれている。
市場規模の拡大も追い風となっている。矢野経済研究所の調査によると、日本の不動産テック市場は2022年度に9402億円、2030年度には約2.4兆円に拡大する見通しで、特にBtoB領域のサービスは2.3倍の成長が期待される。こうした市場拡大の一方で、紙やPDFベースの情報管理が主流でデータ分断が生産性向上の障壁となっており、TRUSTARTが目指す「全業界のデータハブ」構想の必要性が高まっている。
競合としては、国内では不動産情報検索サービスや登記情報提供を行う複数の企業が存在するが、TRUSTARTは役所や現地にしかないアナログデータを独自に収集し、オーナー情報まで網羅できる点が差別化要因となっている。大江氏は「データの量と質を強化し、AI活用による営業支援ソリューションを充実させることで競合との差別化を図る」と述べた。
同氏は三菱UFJ信託銀行出身で、リテール・法人営業や新規事業開発部署での経験を経て、メガバンク初の出向起業としてTRUSTARTを創業。これまでの資金調達では、営業体制を強化してきた。
今回の資金は、不動産データの種類拡張やシステム開発、人材採用、マーケティング活動に投入される予定だ。将来的には、不動産情報を取り扱う全業界のデータハブとして、コンサルティングや不動産鑑定サービスの提供、さらにはM&Aによる事業領域拡大も検討している。海外展開についても、データベースを多言語対応させることで海外からの投資ニーズを取り込み、アジア市場での事業展開を視野に入れる。
大江氏は「不動産業界は60兆円規模の市場で、金融や関連分野も含めるとさらに巨大だが、アナログ業務が多く潜在能力を活かしきれていない。私たちがインフラとなりデータをシームレスに提供できれば、生産性は倍増できる」とし、「今回の調達で得た投資家との連携を通じて、業界全体のデジタル化と新たなエコシステムの構築を進めていく」と意気込みを語った。
掲載企業
Startup Spotlight
Supported by
「スタートアップスカウト」は、ストックオプション付与を想定したハイクラス人材特化の転職支援サービスです。スタートアップ業界に精通した当社エージェントのほか、ストックオプションに詳しい公認会計士やアナリストが伴走します。
スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします。
※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします
※配信はいつでも停止できます