【DAY2】3D Architechが世界657社の頂点に――SusHi Tech Challenge 2025 レポート

2025年5月8日〜10日、東京都主催の国際イノベーションイベント「SusHi Tech Tokyo 2025」が東京ビッグサイト東4〜6ホールで開催された。スタートアップ、投資家、大企業、自治体、市民など、都市の未来を形づくるあらゆるプレイヤーが集い、「Sustainableな都市をHigh Technologyで実現する」というビジョンのもと、初日から多彩なセッションと展示が繰り広げられた。
来場者数の正式発表はまだないが、前年に続き5万人規模の動員が見込まれ、都市型SX(Society Transformation)イベントとしての存在感を一層高めている。今年は46カ国・地域から657社がピッチコンテストに応募し、出展企業は613社(うち海外企業は393社)にのぼった。
今回は、初日(5月8日)の様子をレポートする。
初日のオープニングセッションでは、東京都知事・小池百合子氏が登壇。AIの急速な進化とその社会的影響に言及し、「今夏には東京都として初の『AI戦略』を策定する」と発表した。議論の成果を反映した“日本型AI活用モデル”の構築を目指すという。
また、AIによる電力負荷の課題に関連し、量子コンピューティングの活用可能性にも触れ、「技術革新と持続可能性の両立が不可欠」と語った。
さらに、若者の活動機会の拡大にも言及。都が支援する学生チーム「ITAMAE」には、300名以上の学生が参加。本イベントの受付や場内誘導のほか、海外スタートアップのブースで通訳補助を行うなど、イベント運営の現場を担った。学生企画によるセッションやピッチイベントも実施され、次世代の担い手としての存在感を示した。
加えて、小池氏はスタートアップ支援の柱として進める「10×10×10イノベーションビジョン」を紹介。スタートアップ、ユニコーン企業、官民連携プロジェクトの数を5年でそれぞれ10倍に引き上げる目標のもと、これまでに9億ドル(約1350億円)以上を投じてきたと説明。「東京から世界へ挑むスタートアップを後押しし、次世代の産業を育てていきたい」と語り、イベントの幕開けを高らかに宣言した。(スピーチは英語で実施された)
場内に入ると、セッションステージや多様な国・地域の展示ブースが来場者を出迎える。今年は国内外613社以上のスタートアップに加え、25の国・地域・都市が出展。出展企業の約6割を海外企業が占め、まさに“グローバル・スタートアップ・ショーケース”と呼ぶにふさわしい空間が広がった。
前回29社だったコーポレートパートナー(大企業)は、今回は47社に増加。展示フロアには多様なプレイヤーが交錯し、業種や言語、文化を超えた活発な対話が繰り広げられた。
展示ブースを歩けば、最先端技術を携えたスタートアップとの出会いが待っている。
イスラエル発のCoffeesaiは、細胞培養技術で“サステナブル・コーヒー”を生産する企業。コーヒーの細胞をバイオリアクターで培養し、焙煎・抽出までを人工環境で完結させることで、従来の農法に比べ水使用量を98%削減。気候の影響を受けず、安定生産が可能という特性から、環境負荷軽減とフードセキュリティの両面で注目を集めている。
また、スウェーデンのImvi Labsは、視覚トレーニングによって読書速度や集中力を向上させるアプリを開発。YouTube動画を使って眼球制御を促す独自技術を活用し、ディスレクシアやADHDの支援にも展開。スウェーデンの小学校では学年単位で導入されており、教育分野での活用が進んでいる。
来場者が五感でテクノロジーに触れられる「Future Experience Pavilion」では、AI画像生成体験や大型ロボット「機動警察パトレイバー」の搭乗ショーなどが人気を博した。
中でも目を引いたのが、日本のファッションブランド「アンリアレイジ」による光る衣装の展示だ。LEDと無線同期デバイスを組み込んだ衣装は、動きや音に反応して光を変化させ、「身体表現の拡張」という新たなファッション体験を提供。近未来の衣服の可能性を感じさせる一幕となった。
会期中には、主催者・パートナーによる合計135セッションが実施され、登壇者は335名(うち海外約5割、女性45%)と多様性のある構成。 初日に特に注目されたのが、「東京・日本のスタートアップビジョンの到達点と未来への課題」(5/8 Impact Stage)だ。
本セッションでは、日本経済団体連合会副会長の南場智子氏(ディー・エヌ・エー 代表取締役会長)、東京都知事の小池百合子氏、そしてファシリテーターとして東京都スタートアップフェローの藤本あゆみ氏が登壇。産官の代表として、5年計画で進められている「10×10×10イノベーションビジョン」の現状と今後について議論が交わされた。
南場氏は、スタートアップ支援の加速に向けて日本が今まさに「チャンスの局面」にあると強調。シリコンバレーからの最新動向を紹介しつつ、日本が持つ予測可能性や安定性を武器に、グローバルの中での相対的地位を高めるべきと語った。また、ディープテック分野のスタートアップ創出における課題として、シードからシリーズA以降の資金ギャップ、商業化までの伴走支援の必要性を挙げ、今後の政策支援の焦点になるとの見方を示した。
小池氏は、東京都として進める官民連携や海外スタートアップ誘致の取り組みを紹介しつつ、「予算も拡大し、都として本気でエコシステム整備に取り組んでいる」と強調。「グローバルで挑戦できるスタートアップが当たり前に生まれる東京をつくる」とのメッセージを投げかけた。
終盤では両者が「東京発のスタートアップ成功事例を増やし、世界を魅了する祭りのようなムーブメントを起こしたい」と口をそろえ、オーディエンスにも「世界を見据えた挑戦を」と呼びかけて締めくくられた。
開場時間から多数の人が集まっていた「SusHi Tech Tokyo 2025」。大盛況のまま初日を終えた。
2日目も変わらず多くのスタートアップが展示予定だ。有識者によるセッションも登壇者やテーマを変えて同様に実施される。
中でも筆者が注目するのが、国内外のスタートアップがテクノロジーやアイデアを披露するグローバル・ピッチコンテスト「SusHi Tech Challenge 2025 ファイナルステージ」だ。本日開催されたセミファイナルには20社が出場し、その中からファイナル進出企業7社が選出された。
明日のファイナルステージでは、優勝企業に1000万円の賞金が贈られる。
果たしてどの企業が栄冠を手にするのか──ファイナルステージの結果は、KEPPLEが速報でお届けする。
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