日本発スタートアップの“離陸”を支える──「Takeoff Tokyo 2025」現地レポート

日本発スタートアップの“離陸”を支える──「Takeoff Tokyo 2025」現地レポート

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KEPPLE編集部
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2025年3月25日から26日にかけて、東京ビッグサイト東6ホールにてスタートアップカンファレンス「Takeoff Tokyo 2025」が開催された。

2024年は国内外から約2500人が来場し、200社超のスタートアップと80社以上のベンチャーキャピタルが参加。今年は昨年以上の参加者が見込まれている。会場には、起業家や投資家、事業会社の担当者、支援機関の関係者、さらには海外からのスタートアップ支援者まで、多様なプレイヤーが集結。AI、クリーンテック、ヘルステックなど幅広い分野で挑戦を続ける起業家が一堂に会し、国境を超えたネットワークが生まれる2日間となった。

本レポートでは、全体のプログラムの中から特に注目を集めたパネルセッションやピッチコンテスト、展示エリアの様子をピックアップして紹介する。

世界に挑む覚悟はあるか──日本発スタートアップの飛躍に向けて

イベント2日目に実施された注目のパネルディスカッションでは、主催者であるAntti Sonninen氏に加え、ラクスル創業者の松本恭攝氏、Coral Capital代表のJames Riney氏が登壇。

「Building the Next Toyota & Sony」というテーマのもと、それぞれが自らの経験を交えながら持論を展開した。「世界的なスタートアップを創ることは容易ではないが、別に日本が不利な立場にあるわけではない。」とJames Riney氏が語り、東京からグローバルなエコシステムへの接続の重要性や臆することなく挑戦していくことの必要性を強調した。

「Takeoff Tokyo」は、Sonninen氏が2015年に「Slush Tokyo」のCEOを務めた経験をもとに立ち上げた新たなスタートアップイベントだ。

今年のイベント開催に先立ち、Sonninen氏は自身のX(旧Twitter)でこう語っている。

「10年近く日本に住んでいて、日本が大好きです。でも、夢のある若者がいない場所に未来はない。そんな若者を増やすために、2023年春にTakeoff Tokyoを始めました。日本発・若者主導・世界一流のスタートアップカンファレンスにしたいと思っています」

イベント名に込められたその強い意志こそが、会場に集った起業家たちの背中を押していた。

左から主催者のAntti Sonninen氏、Coral Capital代表 James Riney氏、ラクスル創業者 松本恭攝氏

多国籍スタートアップが火花を散らす──英語ピッチバトルの熱狂

毎年恒例の「ピッチコンテスト」では、国内外から選抜されたアーリーフェーズ(2020年以降に創業)のスタートアップ49社による英語プレゼンが繰り広げられた。

数分間という限られた時間の中で代表自らプロダクトの魅力と市場の可能性を訴求する緊張感のなか、会場は終始熱気に包まれていた。審査員席には国内外の著名VCやアクセラレーターが並び、核心を突く質問や、的確なフィードバックが相次いだ。

Takeoff Tokyo2025 ピッチコンテスト優勝者 ModAsteraの Joshua Owoyemi氏(画像はTakeoff Tokyo事務局より)

なかでも筆者の目を引いたのが、株式会社ニューラルポートの代表取締役・島藤安奈氏によるピッチだ。関西出身の島藤氏は、冗談や関西弁を交えながらも、社会課題への強い想いと事業への情熱を真っ直ぐに伝えた。

同社が手がけるのは、AI×視線計測×VRという独自技術を用いた「メンタル可視化ソリューション」。中核となる「ZEN EYE PRO」は、VR映像視聴中の視線の動きから、ストレスや集中度といった“目に見えない心の状態”を定量的に計測する。視線データは「Neural AI」によってリアルタイム解析され、個人の内面的な状態を“数値化”することで、メンタルマネジメントの新たな指標を提供する。

その応用範囲は広く、スポーツ分野だけでなく、教育、宇宙開発、航空、さらには企業研修や経営者支援にまで及ぶ可能性がある。現に、「ZEN EYE PRO」は国内外のスポーツチームや医療機関などで導入が進んでおり、実証結果をもとにさらなる開発が進められている。

「日本のものづくりで、女性初のユニコーン上場を目指します」と意気込む島藤氏は、2024年10月発売の『Forbes JAPAN』11月号「Women In Tech 30」にも選出されており、グローバルでの飛躍が期待される起業家のひとりだ。

島藤安奈氏とVRを活用したストレス可視化システム「ZEN EYE PRO」

会場全体が“起業のショーケース”に──展示エリアも活況

展示ブースでは、日本を含む各国のスタートアップや企業が集い、自社の技術やサービスを直接紹介。デモンストレーションを通じたプロダクト体験が来場者との活発な対話を生み出していた。

展示ブースにて活発なやり取りが行われていた(写真:Takeoff Tokyo事務局提供)

国内スタートアップのiPresence株式会社は、テレプレゼンスアバターロボット「temi」6台を提供。受付案内から遠隔参加まで、イベントの運営をテクノロジーで支えた。

iPresenceのテレプレゼンスアバターロボット「temi」(写真:Takeoff Tokyo事務局提供)

また、社内AIアプリ構築のためのサービス「Morph」を開発する株式会社Queueは、ベイシステック合同会社と共同でブースを出展。「海外からも引き合いが多い」と話す担当者は、「この場での出会いやフィードバックが次の改善につながる」と語っていた。

Queueとベイシステックの共同ブース

“次のユニコーン”はここから生まれる──エコシステムの未来を見据えて

「Takeoff Tokyo」は、単なる展示会やネットワーキングの場ではない。起業家たちが事業のヒントを得て、投資家とつながり、グローバルに挑戦するきっかけを掴む「離陸の滑走路」のような存在だ。

日本発スタートアップの国際展開において、起業家・投資家・支援機関の接続点となるこのイベントは、今後ますますその重要性を増していくだろう。

来年以降、どんな未来のユニコーンがここから羽ばたいていくのか。世界に挑むスタートアップの“Takeoff”を、今後も追いかけていきたい。

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