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東京におけるイノベーション促進を強調する一大イベント
2024年4月27日、「SusHi Tech Tokyo 2024」が開催された。5月26日までの約1か月間に及ぶ、東京都などによる大規模イベントだ。
2023年には「City-Tech.Tokyo」として実施された。サステナブルな都市をハイテクノロジーで実現する(Sustainable High City Tech Tokyo)というコンセプトを縮め、「SusHi(=寿司) Tech Tokyo」と日本になじみのあるようなイベント名となっている。
SusHi Tech Tokyo 2024を構成するプログラムは大きく3つ。4月から実施していた「Showcase Program」では、ドローンによる配送体験や実際に搭乗して操縦できるロボット展示など、他のプログラムに先駆けて一般向けに公開した。
5月15日から実施しているのが、国内外のスタートアップエコシステム関係者が集う「Global Startup Program」、約50の都市のリーダーが課題解決に向けた取り組みや今後の展望について議論する「City Leaders Program」だ。
今回は、15日と16日の2日間にわたって開催されるGlobal Startup Programの初日の様子をお届けする。
小池都知事のオープニングトークを皮切りに開幕したGlobal Startup Program
世界は今、気候変動や災害、格差や貧困などの深刻さを増す危機に直面しています。
そして、世界中の国々が、これを克服し、持続可能な社会を実現しようと努力を重ねています。
危機を前にして立ちすくむのではなく、叡智を結集して立ち向かう。この大いなるチャレンジに、東京は先頭に立って取り組み、世界に貢献していきたい。イノベーションがもたらす最先端の技術を実装することにより、私たちは必ずや“サステナビリティ”という目的地への切符を手に入れることができるでしょう。 (小池氏)
約15分にわたったGlobal Startup Programのオープニングトークの中で、東京都知事の小池 百合子氏はこう意気込んだ。(スピーチは英語で実施された)
写真:SusHi Tech Tokyo 2024提供
東京都はGlobal Startup Programの開催にあわせ、国内外のスタートアップやその支援者の交流拠点として「Tokyo Innovation Base(TIB)」をグランドオープン。プレオープンからの約半年で100を超えるイベントの実施やSusHi Tech Tokyoの開催など、東京都におけるスタートアップ支援の活発さを強調した。
国際色豊かな展示ブース
場内はかなり広く、入場してすぐにセッションステージやスタートアップのブースが見える。
入り口近くの様子。活況ぶりがうかがえる
今回のGlobal Startup Programでは、「Infrastructure・Environment・Living・Culture・Impact」をテーマに、国内外430社以上のスタートアップのほか、計48の国や地域、都市が出展した。出展企業の6割が海外企業だという。
参加者も日本国外から多数参加していた。日本におけるグローバルなスタートアップイベントが増えているとはいえ、ここまで多くの人々が入り乱れる様子を見る機会は多くない。5つの国や地域がパビリオンを設置するなど、国別・テーマ別の展示で参加者の関心を掻き立てる設計だ。
スイスのスタートアップが集まるSwisstechパビリオン
昨年2月に東京都が開催した大型イベント「City-Tech.Tokyo」と比べ、大企業による出展も増えた。前回11社であった大企業の出展は今回は26社に増えている。
三井不動産は出資先スタートアップの取り組みや連携について発信した
「サステナブル」をキーワードに多様なスタートアップが集結
多くのスタートアップが展示しているGlobal Startup Program。歩けば各国のスタートアップに出会える。
N&E INNOVATIONSは、日常的に発生する食品廃棄を、マスクや消毒剤などの製品にアップサイクルしている。シンガポールを拠点に事業展開するスタートアップだ。
同社が手掛ける消毒剤ブランドのC2+(画像:C2+公式HPより)
同社が開発したのは、食品廃棄を利用した「VIKANG99」と名付けられた化合物。このVIKANG99を、消毒剤や抗菌コーティングに活用している。手指消毒剤で24時間、消毒スプレーでは7日間の抗菌効果があるという。
創業はコロナ禍の2020年。マスクの生産から事業開始した。消毒剤ではシンガポールの事業会社とのコラボ商品も販売するなど、事業を伸ばしているようだ。
目を引くスタートアップのブースがあった。太陽光で動く「ソーラースクーター」が展示されている。2020年に北京で設立されたSolar Power Glory Technologyのブースだ。
前面に埋め込まれたソーラーパネルで発電する
壁面充電なしで長距離走行を可能にするとのこと。スクーターのほかにもソーラーパネルを搭載したゴルフカートを販売しており、日本を含め10か国程度で提供しているという。
日本以外のスタートアップでは。韓国やシンガポールなどのアジア圏の企業が多かった印象だ。イスラエルスタートアップのパビリオンには日本の参加者も多く訪れていた。
日本のスタートアップも存在感を放っていた。VFRが開発した、ドローンの操縦訓練に利用できるシミュレーターには多くの人が話を聞きに来ていた。同社はPC事業を手掛けるVAIOの子会社として2020年に設立された。
VFRの展示
ドローン操縦のライセンス取得を目的とした、ドローンスクールなどでの導入を増やしていく考えだ。
スタートアップキャリアへの関心の高まりを感じるStudent Pavillion
スタートアップの展示のほか、スタートアップエコシステム内の有識者によるセッションも会場内の全4ステージで随時開催された。
海外の起業家や有識者を招いたセッションも多数(写真:SusHi Tech Tokyo 2024提供)
学生の参加者も多い印象を受けた。学生向けの参加チケットが割安ということもあるが、スタートアップに関心のある若者が増えていることは間違いないだろう。
学生が主体的に運営する「Student Pavillion」も設置された。学生を中心とした若者向けの展示やセッションが実施されていた。メインのステージではないながらも、筆者が参加した15日の昼には、立ち見が続出するほど盛況なセッションも見受けられた。
起業家3名をパネリストに、学生向けにスタートアップでのキャリアについて議論されていた
DeNA南場氏など注目セッション多数の2日目
開場時間から多数の人が集まっていたGlobal Startup Program。大盛況のまま初日を終えた。
2日目も変わらず多くのスタートアップが展示予定だ。有識者によるセッションも登壇者やテーマを変えて同様に実施される。
中でも筆者が注目するのが、「世界トップレベルのスタートアップ・エコシステム形成に向けた官民の取組」だ。
DeNA創業者で日本経済団体連合会の副会長として名高い南場 智子氏と、経済産業副大臣の岩田氏が登壇し、日本で世界レベルのエコシステムを形成するための方策について議論する。
世界中から多様なプレイヤーが集まり、交流し、未来に向けた展望と課題を共有し、夢を実現する実践につなげていく。SusHi Tech Tokyo は、まさに未来を切り開くための場となりたいと思います。 (小池氏)
オープニングで触れられたこの言葉の通り、イノベーションの発信地としての東京を世界に示せるか。まずはGlobal Startup Program2日目の様子に注目したい。