宅建法改正でDX加速ーー不動産スタートアップの最新動向

宅建法改正でDX加速ーー不動産スタートアップの最新動向

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2024年のスタートアップによる資金調達総額は8097億円(※プレスリリース情報に基づく速報値)で前年比15.5%増となった。対前年で落ち込んだ2023年から回復し、2022年比でも増加するなど、堅調な一年だったといえる。

(株)ケップルは、スタートアップの動向を把握するうえで、資金調達と同様に重要な指標として「従業員数」に注目。2023年12月~2024年12月の国内スタートアップの従業員数を集計し、スタートアップ動向レポート「従業員数から読み解く国内スタートアップの現在地2024」としてまとめた。今回は、レポートの中から不動産セクターの従業員数推移や市場動向に関する解説を紹介する。

本記事で触れるセクター別レポートの全文は、ケップルが提供するスタートアップデータベース「KEPPLE DB」のスタータープラン(初期費用・月額無料)に登録することで閲覧できる。

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急増する不動産テック、AI・衛星データ活用も

2010年代後半から、不動産分野ではスタートアップの設立が加速し、特に2018年から2019年には、マクロ環境の追い風もあり、多くの企業が市場に参入した。オンライン手続きや電子契約の解禁をはじめとするDXの進展が、新規参入を後押しする要因となっている。さらに、AIやデータ分析を活用した賃料査定や物件管理の自動化、衛星データを活用した物件探索など革新的なサービスが登場。近年では、空き家の活用や地域再生、不動産管理の効率化といった社会課題に取り組むスタートアップも増えている。

グラフ:マクロ環境の追い風で2018年、2019年には最多の49社が設立
マクロ環境の追い風で2018年、2019年には最多の49社が設立

注:上場したスタートアップや閉鎖企業などを含む

トグルホールディングス株式会社株式会社カナリー株式会社すむたすは独自の技術で不動産業界のDXを推進し、評価額100億円を超える企業へと成長している。

グラフ:2024年を通じて安定的に雇用拡大が進行
2024年を通じて安定的に雇用拡大が進行

注:2024年1月時点=100として指数化(セクター全企業の従業員数が対象)

“不動産版GAFA”が牽引、グローバル市場に新潮流

世界の不動産市場は、2024年には約4.3兆ドルに達し、インフラ投資や都市化の進展、人口増加により、2028年までCAGR7.1%で成長が見込まれている1。従来、不動産市場は、煩雑な手続きやアナログな管理により非効率な面が多く、透明性の欠如が市場の流動性を阻害していた。しかし近年、不動産業界では物件査定や投資分析、リース契約、資産管理のDXが急速に進んでいる。AIの導入により、不動産価格の査定精度が向上し、市場動向のデータ分析が高度化したことで、迅速な投資判断が可能になった。また、ブロックチェーン技術は契約や登記手続きの透明性を高め、取引の安全性と業務プロセス全体の効率性を大幅に向上させている。

不動産業界のDXが進む中で、アメリカは発祥地として高いプレゼンスを示している。同国でも従来は、あらゆる領域で仲介会社が存在しており、内見、申し込み、交渉、契約はエージェントを介する必要があった。2000年代にアメリカで不動産ポータルサイトが始まり、不動産テック発展の基盤となった。特に「GAFAの不動産版」とも称される大手不動産テック企業4社、ZORC(Zillow、Opendoor、Redfin、Compass)が、テクノロジーを駆使して市場を先導してきた。最大手のZillowはオンラインで物件情報を提供する不動産ポータルサイトとしてスタートし、過去の取引情報、治安や学区といった周辺環境をビッグデータで分析し物件の推定価格を提示するツール「Zestimate」によりプレゼンスを高め、不動産DXを牽引。また、Opendoorは、アルゴリズムや市場データを用いて不動産の即時買取(iBuyer)などでマーケットの流動性を高めてきた。こうした先進国における不動産テックの革新的な動きは新興国にも波及している。代表的な成功事例であるブラジルのLoftは不動産売買のプロセスをオンラインで一元管理し、アルゴリズムを活用した査定や即時売却モデルを展開。これにより、取引の透明性が向上し、プロセス全体が効率化され、市場の流動性も飛躍的に高まっている。

宅建法改正で進むオンライン契約と業務効率化

2024年の主な資金調達一覧

※プレスリリース情報に基づく

 日本の不動産業界は、物件情報の登録が義務化されていないことから市場全体の透明性が低く、「KKDH(勘・経験・度胸・ハッタリ)」に依存する属人的な営業手法が長く主流となってきた。さらに、重要事項説明を口頭や書面で行うことを義務付ける宅地建物取引業法の第35条も、契約手続きの煩雑さを助長し、国内の他の産業と比べてDX化が遅れていた。

しかし、2022年の同法の改正によりオンラインでの説明や電子契約が認められ、不動産業界でもスタートアップが次々と誕生するなど、業界のDXは徐々に進展している。また、2024年からは相続による不動産登記が義務化されるため、登記手続きの電子化やオンライン申請などの整備も急務となっている。

日本の2022年度の不動産テック市場は9402億円まで拡大しており、2030年度には約2.4兆円にまで拡大するとの見通しがある2。AIによる物件査定やリース契約の自動化が進むほか、ブロックチェーン技術が取引の透明性向上と迅速な意思決定を支え、不動産業務全体の効率化と利便性向上が期待されている。今後はさらなるスタートアップの参入により、不動産業界のDXが一層進むことが予想される。

各セクターの詳細レポートが見られるのは「KEPPLE DB」だけ

本セクターの、2024年従業員数ランキング(2023年12月から2024年12月までの期間を集計)と主要なカテゴリーに属する国内外のスタートアップの動向、掲載企業の一覧は KEPPLE DB でご覧いただけます。

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※1 Research and Markets Real Estate Global Market Report 2024
※2 矢野経済研究所 不動産テック市場に関する調査を実施(2024年)


Writer

高 実那美

高 実那美

株式会社ケップル / Data Analysis Group / Database Division / アナリスト

新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。

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