クラフトバンク、シリーズBで38億円調達──建設業DXを全国・AI時代へ

クラフトバンク、シリーズBで38億円調達──建設業DXを全国・AI時代へ

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クラフトバンク株式会社が、建設業向けデジタル化支援事業の拡大を目的に、シリーズBラウンドで総額38億円の資金調達を実施した。今回の調達は、22億円の第三者割当増資と16億円の既存株主による株式譲渡で構成されている。新規株主としてJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、JPインベストメント、第一生命が参加し、既存株主のAngel Bridgeなども追加出資した。調達した資金は、全国規模での支援体制の強化およびAI技術の開発に活用される計画だ。

クラフトバンクは2021年4月に設立された。もともとは内装工事会社の一部門として始まり、現場の職人を重視する姿勢を持っていたが、建設業界特有のアナログな商習慣やデジタル化の遅れに着目し、独立した経緯がある。主な事業は、建設企業向けのカスタマイズ型経営管理SaaS「クラフトバンクオフィス」の開発・提供と、工事受発注のBtoBマッチングプラットフォームの運営である。加えて、職人と工事会社が交流できるイベント「職人酒場」や、業界調査・情報発信を行う「クラフトバンク総研」といった事業も展開している。

「クラフトバンクオフィス」は、現場ごとに異なる業務内容に対応可能なSaaSとして設計されており、全国47都道府県、全29工種で導入実績がある。利用する職人は14,000人を超え、見積書累計4000億円以上、月間10万件を超える日報などの業務データが日々蓄積されている。これらのデータは、現場管理や経営改善に活用されているとされる。また、BtoBマッチング事業では、オンラインとオフライン(職人酒場)の両方を活用し、3万社以上の工事会社と元請企業・専門工事会社間の受発注効率化を支援している。

代表取締役は韓英志氏。2005年に東京大学大学院(建築学)修了後、リクルートに入社。住宅事業(現SUUMO)や新規事業開発、グローバル戦略を担当し、QuandooのM&Aに伴いベルリンでPMIと16カ国展開を統括。2018年にユニオンテックへ参画し、2021年4月に同社IT部門をMBOしてクラフトバンクを創業した。

建設業界は、国内GDPの約5.3%を占め、就労人口はおよそ480万人とされる(総務省、2023年)。一方で、アナログな業務管理や紙ベースの書類運用、属人的な現場運営が根強く残る。さらに、2024年問題と呼ばれる時間外労働規制の強化や、技能労働者の高齢化、人手不足、資材高騰といった構造的な課題が中小企業を中心に影響を及ぼしている。

今回の資金調達により、クラフトバンクは全国規模でのカスタマーサクセスやセールス体制を拡充し、地銀や信用金庫、自治体と連携した地域密着型の支援ネットワークを広げる方針である。また、AI戦略室を新設し、現場や経営データの利活用による業務効率化や、データに基づいた経営支援のためのAIプロダクト開発にも取り組むとされる。さらに、「職人酒場」や「クラフトバンク総研」などの既存事業を活かし、政策連携や事業承継・M&A領域への研究・開発も進める計画だ。

建設現場では依然としてアナログ管理が主流であり、業界のデジタル化には現場に根ざしたサービスの普及や、地域への地道なアプローチが求められている。クラフトバンクは、今回の資金調達を通じて全国47都道府県への展開を進めるとともに、データとAIを活用した事業モデルの変革、建設業界における新たなサービス創出などを視野に入れている。

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