遺伝子・細胞治療製剤のサイト-ファクト、シリーズBで12億円調──製造体制とアジア展開を強化

遺伝子・細胞治療製剤のサイト-ファクト、シリーズBで12億円調──製造体制とアジア展開を強化

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遺伝子・細胞治療の研究・開発をする株式会社サイト-ファクトが、シリーズBラウンドで総額12億円の資金調達を実施した。

今回の第三者割当増資では、既存株主のMPower Partners GP, Limitedに加え、新たに富士フイルムが参画し、住友商事、旭化成と合わせて4社が引受先となった。これにより、設立以来の累計調達額は27億円となった。

サイト-ファクトは、2022年10月に設立されたバイオテック企業で、遺伝子・細胞治療製剤の研究、開発、製造および販売を手掛けている。同社は、CMO・CDMO事業、品質試験の受託、製造コンサルティングを提供し、再生医療や遺伝子治療分野における製造支援を行っている。また、クラウド型統合遺伝子細胞製造管理システム「CytoFactory 4.0」を開発し、製造プロセスの電子化・データ化を推進している。

代表取締役の川真田伸氏は、京都大学で博士(医学)を取得後、米国ノバルティス研究所、和歌山赤十字病院、京都大学病院、スタンフォード大学での研究員を経て、2002年より公益財団法人先端医療振興財団(現:神戸医療産業都市推進機構)にて主任研究員を務めた。2016年から同機構の細胞療法研究開発センター長を歴任し、2023年4月にサイト-ファクト代表取締役に就任。白血病治療、幹細胞研究、細胞製造プロセス研究を専門としている。

遺伝子・細胞治療は次世代の医療として国内外で急速に注目を集めているが、その製造・供給体制には依然として多くの課題が残されている。特に国内やアジアの患者に提供される製剤が欧米で製造されるケースでは、原材料や最終製品の長距離輸送に多大なコストと時間がかかるうえ、品質管理や安定供給の観点でもリスクが伴う。また、製造工程の多くが手作業で行われており、自動化・標準化が進んでいないことから、人件費や品質保証にかかるコストが最終的な医療費の高騰に直結している。

さらに、患者由来の組織や血液が欧米の製造拠点に送られ、加工された製品が再び日本やアジアへ輸送される際、輸送コストが膨大となり、サプライチェーン全体の効率性にも課題が生じている。一般的な医薬品とは異なり、遺伝子・細胞製剤ではこうした製造・物流の非効率性が価格に大きく影響し、結果として患者の経済的負担が増している。

今回の資金調達により、商用製造の需要拡大に対応するため、製造体制の拡充とアジア展開の加速を図る。既存施設の増強および新規施設の立ち上げを推進し、薬機法に基づく製造管理体制の強化、人材育成、品質保証体制の高度化を進める。また、CytoFactory 4.0の開発を加速し、2026年内には社外顧客への導入を開始する予定である。国内外に販路を有するパートナー企業との代理店契約を通じ、グローバル市場への展開も視野に入れている。

同社は、これまでにキムリア点滴静注®の商用製造や、自家滑膜間葉系幹細胞を用いた再生医療等製品の治験製品製造などの実績を持つ。今後は、国内外の製薬企業との協業を通じて、遺伝子・細胞治療製剤の製造・供給拠点としてのポジション確立を目指す。

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