難治性疾患に挑む新たな治療法
再生医療の市場規模は、新たな治療法や技術の進展に伴い世界的に急成長をしている。
再生医療とは、損傷した組織や臓器を修復、再生、または置き換えることを目的とする医療技術のこと。特に治癒が難しい病気やけがに対して新たな治療法を提供する分野であり、細胞や組織を利用して体の自然な修復機能を活性化することが基本となっている。幹細胞治療や遺伝子治療が主要なアプローチで、臓器移植の代替手段として期待されている。
再生医療は、臓器や組織の不足を解消し、移植を待つ必要がなくなる。また、患者自身の細胞を利用するため、免疫拒絶反応のリスクが低減されるといったメリットがある。
国内の再生医療の市場規模は、2030年には1兆円、2050年には2.5兆円と予測される。また、世界市場についても2050年には約38兆円まで成長すると予測されており、臓器移植に依存しない治療や患者一人ひとりに基づいた個別化医療の拡大が期待されている。※
スタートアップ5選
ひろさきLI株式会社
企業HP:https://hirosaki-li.co.jp/
コラーゲン加工技術をもとに自家細胞培養による再生医療品を製造・販売する。ヒト羊膜基質使用ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート「サクラシー®」を開発。サクラシー®は、患者自身の口腔粘膜より採取した上皮細胞を、加工したヒト羊膜の上でシート状に培養した再生医療等製品。既存の治療法では限界があった眼表面の癒着を修復するための新たな治療選択肢となる。
2024年7月には、サイバニクス・エクセレンス・ジャパン、アクシル・ライフサイエンス&ヘルスケアファンド、日本ベンチャーキャピタル、QBキャピタルなどを引受先とした第三者割当増資による総額23.8億円の資金調達を実施した。
由風BIOメディカル株式会社
企業HP:https://yukaze-biomedical.co.jp/
ナノ粒子の表面を制御するナノバイオロジー領域の独自技術を活用した迅速かつ低コストな高感度体外検査薬の研究開発を行っている。特定細胞加工物製造許可を取得し、RIKEN-NKT(NKT細胞標的治療)用αガラクトシルセラミドパルス樹状細胞や次世代PRP用細胞加工物など、さまざまな症例に適用する細胞薬を提供している。
セレイドセラピューティクス株式会社
ヒト造血幹細胞の増幅技術を用いた再生医療製品を開発する東京大学発のベンチャー企業。同社の造血幹細胞増幅技術は、体外での安定した細胞増幅が可能であり、低コストの人工化合物を使用することで高い増幅率と容易な品質管理ができる。産業利用にも適している。ヒトへの臨床応用に向けて開発を進めている。
2024年5月には、シリーズAにて東京大学エッジキャピタルパートナーズ、大阪大学ベンチャーキャピタル、テクノサイエンス、常陽キャピタルパートナーズ、筑波SBI地域活性化ファンドを引受先とした第三者割当増資による約4.6億円の追加資金調達を実施した。
株式会社オーガンテック
企業HP:https://www.organ-tech.jp/
再生医療向けの医薬品や材料の製造・販売、治療用細胞・組織・器官の受託製造・販売を行っている。また、幹細胞を使った毛髪や歯科の再生医療の開発にも取り組んでいる。毛髪再生医療では、男性型脱毛症を対象に臨床研究を進めており、後頭部から毛包を採取して、上皮性幹細胞と毛乳頭細胞を増やし、それらを使って再生毛包をつくっている。
2023年2月には、社名をオーガンテクノロジーズからオーガンテックに変更し、新たな経営体制をスタートさせた。同時に小林製薬を引受先とした資金調達を実施した。
株式会社シルクルネッサンス
カイコを用いたバイオ関連事業を展開している。細胞抽出液にエネルギー源など必要な成分を加え、試験管内でmRNAを使って目的のタンパク質を作る技術である無細胞タンパク質合成系を開発。これら技術を活用した創薬支援事業や再生医療支援事業の展開を進めている。
2023年1月には、総合試薬メーカーのキシダ化学とタンパク質合成受託サービスに関する業務提携を締結した。2023年12月には、カイコ無細胞タンパク質合成技術を活用したタンパク質受託合成サービスの提供を開始した。
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※経済産業省 「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた 基盤技術開発事業」