株式会社NewLocal

まちづくり事業を手がける株式会社NEWLOCALが、シリーズAラウンドで第三者割当増資による総額4億円の資金調達を実施した。今回の調達ではサムライインキュベートがリードし、JR西日本イノベーションズ、JR東日本スタートアップ、KDDI、アグリビジネス投資育成などが新たに出資した。累計の調達額は融資を含め10億円に達しており、新規案件の展開や人材採用を本格化させる。
NEWLOCALは2022年に設立されたスタートアップで、不動産開発を基軸に、地域のキーパーソンと合弁会社(ジョイントベンチャー)を設立しながら、遊休施設の利活用や雇用創出、外部人材の流入促進といった多面的なまちづくりを進めている。現在は長野県野沢温泉村・御代田町、秋田県男鹿市、京都府丹後、石川県小松市の5地域で、宿泊施設や飲食店など合計12施設の運営・開発を手がけている。創業から3年足らずで50人以上の雇用を生み出しており、そのうち約半数が地域外からの移住者である。
代表取締役CEOは石田遼氏が務める。卒業後はマッキンゼー・アンド・カンパニーにて、国内外の企業や政府に対する戦略策定・実行支援に従事し、主に都市開発や公共政策分野を担当した。2017年にMYCITYを設立し、都市・不動産向けのIoTプラットフォームを提供。2019年にはpoint0の取締役として、企業共創型のコワーキング施設の企画・運営に携わる。2021年からはAPイニシアティブのプログラムフェローとして全国のスマートシティのリサーチに従事し、2022年にNEWLOCALを創業。
日本の地域社会では、2050年までに日本の総人口は約17%減少し、地域によっては人口が半減する可能性があるとされている。都市部への若年層人口の集中や高齢化の進行により、空き家や雇用機会の減少、地域経済の縮小といった課題が顕在化している。こうした状況を背景に、地方創生分野のスタートアップも増加傾向にある。しかし、国土交通省の地域経済循環分析によれば、首都圏外の地域経済自立度は依然として低い水準にとどまり、まちづくり事業への資金供給や人材確保、域内外協働の枠組み形成といった点で課題が残る。従来型の都市開発や自治体主導のまちづくりは、資金と人材を同時に投入する必要があり、再現性やスケールアップが難しいと指摘されてきた。競合としては、地域商社や複数地域型の不動産開発企業、地域プロデュース系スタートアップが存在するが、現地協働型ジョイントベンチャーによるモデル確立を掲げる事例はまだ少数にとどまる。
今回の資金調達を受け、NEWLOCALは人材採用の強化、新たな拠点開発、既存地域での事業深耕を一層加速させる方針だ。2027年までに事業展開地域を10カ所まで拡大し、それぞれの地域で独立した経済圏の構築を目指す。
また、交通・通信・食・農業といった分野で全国的にインフラを展開する新規株主らと連携し、プロジェクトや人材の協働を通じて、多地域居住時代に適した生活サービスの開発や、大企業の地域内での新たな価値創出にも取り組む。
今後、NEWLOCALが現地主導の経済循環モデルをどこまで再現可能な形で複数地域に展開できるかが問われる。また、業種横断型の人材採用やプロジェクト設計手法が、他地域のプロジェクトにも波及するかが注目される。都市部と地方、内外人材の流動性といった課題のなかで、同様の取り組みを行う他の企業との違いがどのように現れてくるかも今後の焦点となる。
NEWLOCALは今回の資金調達により、事業拡大と並行して採用活動を進め、まちづくりノウハウの蓄積やネットワーク構築、資金循環モデルの設計など事業基盤の強化を図る構えだ。