株式会社Nature Innovation Group

傘のシェアリングサービス「アイカサ」を運営する株式会社Nature Innovation Group(以下、アイカサ)は、シリーズBラウンドで日本テレビホールディングスを引受先とする3.5億円の資金調達(ファーストクローズ)を実施した。
アイカサは、駅や街中に傘スポットを設置し、利用者がアプリを通じて傘を借り、雨が止んだら自由なスポットで返却できるという仕組みのシェアリングサービスだ。 2018年12月にサービス開始。現在ではアプリ登録者数は80万人を超え、全国12都道府県で2000か所以上のスポットを展開しているという。今回の資金調達により、関東・関西を中心に3年でスポット数を3倍以上に拡大する計画だ。
代表取締役である丸川照司氏は、シンガポールなど東南アジアで育ち、中国語と英語を話すトリリンガル。18歳でソーシャルビジネスに関心を持ち、社会起業家を志す。マレーシア留学中に中国のシェア経済に魅了され大学を中退し、2018年に傘のシェアリングサービス「アイカサ」を立ち上げた。
丸川氏は、「私たちは今後も、環境と経済の両⽴を証明する存在として、循環型経済のうねりを社会全体で⼤きくしていくことを⽬指します。使い捨て傘ゼロの実現と、環境インフラとしてのアイカサの確⽴に向けて、パートナー、投資家、⾃治体、そして利⽤者の皆さまとともに挑戦を続けます。」とコメントしている。
同社は今回、日本テレビを出資者として迎えた理由として、日本テレビが掲げる「2030年使い捨て傘ゼロプロジェクト」との親和性を挙げている。日本テレビは、インパクト投資の一環で、環境テーマを重視する「SOCIAL IMPACT Lab」を通じて、経済性と社会性を両立する事業への支援を図っており、傘シェアリングを通じた行動変容とCO2削減を見据えた事業モデルを評価したという。今後は両社で広告付き傘の連動キャンペーン等に取り組むことで「使い捨て傘ゼロ」の実現を⽬指す計画だ。
⽇本では世界ワースト1位となる約8000万本のビニール傘などの使い捨て傘が消費され、資源の無駄遣いや余計なCO2排出が社会課題となっている。
アイカサは、新たに「CO2削減量」「使い捨て傘に関する違和感の醸成」「新規資源利用の削減量」といった指標を設定。傘の寿命延長、修理可能な傘使用、晴雨兼用傘(「アイカサmini」)の導入、スポット拡大やコラボ傘の展開などを通じて、これら指標をモニタリングしながら、サービス拡大とインパクト創出を両立させていく構えだ。
傘シェアリング事業をめぐる外部環境も追い風となっている。気候変動に伴う異常気象や集中豪雨の増加、都市部での利便性志向の高まりが、こうした「出先で傘を借りる・返す」モデルへの需要を後押しし得る。加えて、公共交通事業者や自治体との連携拡大の動きも目立つ。例えば、東京メトロは2025年6月より、アイカサを銀座線渋谷駅で導入し、将来的には同社が管理する全170駅以上へのサービス拡大を発表している。また、アイカサは晴雨兼用の折りたたみ傘「アイカサmini」を都内主要駅にて導入する計画も打ち出しており、気候変動適応型都市づくりとの親和性を強めつつある。傘の設置場所や管理、利用率の確保、メンテナンスコストや傘盗難リスクなどをどう抑えるかが、サービス拡大の鍵となる。
今後は、経済性と社会的インパクトの両立を図りながら、「使い捨て傘ゼロ」と雨の日も晴れの日も快適に過ごせる社会の実現を目指す方針だ。