rayout、シリーズAで1.45億円を調達──クリエイティブPMOで業界の課題に挑む

rayout、シリーズAで1.45億円を調達──クリエイティブPMOで業界の課題に挑む

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クリエイティブ領域に特化したPMOサービスを提供するrayout株式会社は、2025年10月、シリーズAラウンドで総額1.45億円の資金調達を実施した。

引受先には、QXLV(クオンタムリープベンチャーズ)、SMBCベンチャーキャピタル、朝日メディアラボベンチャーズが参加した。2019年の創業以来、累計調達額は約1.84億円に達する。

今回の調達では、資金面に加えて事業連携面でのシナジーも重視されている。特に朝日メディアラボベンチャーズとは、メディア業界のネットワークを活かした顧客紹介や案件連携がすでに進行しており、代表取締役の吉田壮汰氏は「クレデンシャルの構築など、朝日さんとは非常に親和性が高い」と評価する。また、SMBCベンチャーキャピタルやQXLVとは、今後の組織成長やファイナンス支援面での補完的関係構築が期待されている。

調達資金の主な用途は、rayoutが定義する「クリエイティブPMO」人材の採用と育成、クラウドツール「CheckBack」の認知拡大である。吉田氏は「人材こそが最大の資産。中途人材だけでなく、新卒第1期生の採用も予定しており、社内育成モデルを確立していく」と語った。

rayoutの主力事業は、クリエイティブ領域におけるプロジェクト遂行支援を担う「クリエイティブPMO」だ。従来の広告代理店や制作会社、コンサルティング会社が担ってきた役割を横断する形で、企業の内部課題を深く理解した上で設計から実装、運用までを一貫して支援している。人事・採用・経営企画・マーケティングといった部門が抱える課題に対し、ビジネスとクリエイティブの両視点からソリューションを提示することが特徴である。

商流 比較図

また、PMO事業では、継続的な関与に基づくコンサルティングフィーと、そこから派生する制作物やPR業務に対する受託報酬が主な収益源となっている。PMはクライアントの定例会議に参加し、顧客と並走するスタイルでプロジェクト全体を設計・実行する。「アカウントを握り、最も近い立場で提案できる存在」として、社内外の意思決定や情報連携に深く入り込むモデルを確立している。

さらに、社内で開発・運用されているクラウドツール「CheckBack」は、制作進行における確認・修正作業を効率化するSaaSとして、制作会社・広告代理店・事業会社のインハウス制作チームなどに導入が進んでいる。導入実績は5000チームを超え、生成AIと連携した「進行AI」として、プロジェクト独自ルールの学習や過去のフィードバック再活用などの機能拡張も進行中である。

CheckBack イメージ

吉田氏は、rayout創業の背景について「広告業界の構造が現代に合っていないという違和感」から出発したと説明。2019年の創業当初は、ブランドとファンをつなぐマーケティングプラットフォームを企画し、同時にクリエイティブ制作事業も手がけていた。

しかしコロナ禍で業務が激減し、顧客に“なんでもやる”姿勢で食らいつく中で、プロジェクトマネジメントや実行支援に対するニーズを見出した。「議事録を取るところからスタートし、徐々に提案・制作へと関わる範囲が広がっていった」と当時を振り返る。

2022年には、社内ツールとして開発されていた「CheckBack」を中心に、クリエイティブPMO事業とSaaS事業の二軸体制を確立。現在では、非IT領域のPMOという市場の開拓に注力しており、2029年3月期でのIPOを視野に、営業利益重視の堅実な成長を目指している。

吉田氏は「仕事の中に人ならではの創造性を取り戻し、AI時代でも“人だからできる仕事”を社会に増やしたい」と語っており、その姿勢は今後の事業展開にも一貫して反映されていく見込みだ。

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