教育現場のキャッシュレスを推進、目指すは子どもを取り巻くお金の問題解決

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KEPPLE編集部

保育・教育業界の集金業務をDXする株式会社エンペイがシリーズBラウンドにて、第三者割当増資と銀行融資による総額8.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、MIXI、DNX Ventures、Spiral Capital、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、博報堂DYベンチャーズ、GMOペイメントゲートウェイ、旺文社ベンチャーズ。融資における借入先は、商工組合中央金庫。

今回の資金調達により、プロダクトのさらなる提供拡大に加え、MIXIとの資本業務提携による新規事業の創出に取り組む。

教育施設の集金業務をキャッシュレス化

同社が提供する「enpay」は、保育園や幼稚園などでの煩雑な集金業務をキャッシュレス化するサービスだ。保護者はLINEで請求通知が届き、PayPayやLINEPay、クレジットカードなどの支払い手段を自由に選択することができる。

集金の流れ
教育機関における集金業務は、現金の管理や請求書の作成・配布、未払い者への催促など、非常に複雑で時間を大量に要する。enpayの導入により、請求の送付から支払状況の管理、督促、会計データの作成までプラットフォーム上で完結する。集金に関する毎月の作業時間は、従来の98%削減できるという。

画面イメージ
保育所や幼稚園の利用が半数以上を占め、学童施設や塾など、保育・教育市場の事業者を対象にプロダクトを提供する。2020年11月にリリースして以降、すでに導入施設数は1800施設を超えた。

また、口座振替業務支援サービス「koufuri+」を提供する。口座振替登録から請求の通知、集計までを支援し、残高不足時には自動でコンビニ支払いに切り替えてユーザーへ案内する。

2023年10月には、決済サービスの「enpayウォレット」を提供開始した。enpayの支払いにenpayウォレットを利用すると、施設が負担する決済手数料が他の支払手数料と比較して0.5%軽減される仕組みが特徴だ。

enpayウォレット
今回の資金調達に際して、取締役CTO 田野 晴彦氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

保護者の立場で感じた課題からサービスを着想

―― 保育・教育施設での集金に関する課題について教えてください。

田野氏:保育園や幼稚園などの施設では、延長保育料や教材費、給食費などのさまざまな費用の集金が発生します。スタッフには、集金に限らずその前後にも多くの業務が生じます。集金する金額の周知やお金の集計、領収書の発行や未払いの人への催促などです。多岐にわたる事務作業が発生し、相当な時間と労力がかかります。

集金は現金で行うことが一般的ですが、施設内での保管はセキュリティ上の懸念が生じます。そのためスタッフは、何度も銀行と施設を往復しなければいけません。

また保護者も、忙しい中で小銭などを用意し、金額を整えて持参する手間が発生します。結果的に支払いが滞ることもあり、施設と保護者の双方にとってデメリットが生じています。

―― 教育業界にキャッシュレスが普及してこなかったのはなぜでしょうか?

独自の商慣習や先生方がパソコンに触れる機会も少ないことなども影響し、保育・教育業界ではデジタル化が遅れています。飲食店などの業態と異なり、キャッシュレス決済に対応することが売上に与える影響も少ないことから、導入が進みませんでした。

さらに、施設での集金時には、誰が支払ったかを正確に管理しなければいけません。全員が支払い済みかどうかも確認して、必要に応じて催促するなど、キャッシュレスを導入するにしても業務が複雑になってしまう事情があります。

―― enpayの提供価値や導入メリットについて教えてください。

施設職員は本来、子どもに向き合う時間を増やすことが一番大切です。enpayの導入で雑務による業務負担を削減し、本来の業務に集中することができます。

また、先生たちの保護者に対する催促も精神的な負担になっています。こうしたストレスも軽減されることに加えて、保護者も現金を用意する手間がかかりません。

toBとtoCの循環
enpayの導入が拡大することで、保護者の利用も増加します。自治体職員の子どもが通う施設で既にenpayが導入されていることがきっかけで、自分たちの自治体でも導入検討するなど、口コミを通じて利用が拡大しています。保護者からの支持も得られており、満足度は常に95%以上をキープしています。

スタートアップスカウト

―― どのようなきっかけからエンペイを創業したのでしょうか?

数年前からDX化の流れを受けて国からの補助金も増えたことで、教育業界ではITツールの導入が進みました。一方で、金銭のやり取りなどの面ではDXが進んでおらず、変わらず現金でのやりとりが続いていました。

CEOの森脇とは、リクルートで共に教育関連の事業に携わった経緯があり、彼は当社の共同創業者でもあります。ちょうど二人とも子どもが生まれたタイミングが近く、実際に現金で保育料などを支払う経験を通じて、改めて負担を実感したんです。この明らかな課題を何とかしたいと思い、エンペイを立ち上げました。

テクノロジーで新たなお金の流れを生む

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

2年前のシリーズAラウンド以降、新たに2つのプロダクトを提供し、組織も50人規模に拡大することができました。2024年度には、保育所等におけるキャッシュレス決済導入に関する費用も補助金対象となる見通しがあります。このタイミングで販促活動や人材採用をさらに強化し、成長スピードを高める目的で今回の資金調達を実施しました。

また、併せてMIXIとの資本業務提携も発表しています。MIXIが提供する「家族アルバム みてね」を含む多様なサービス群とエンペイの持つアセットを掛け合わせ、相互に価値提供することを目指しています。創業当時からの思いもあり、今後はBtoCのサービスにも注力していく予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

当社サービスによって現金のやり取りは減ってきていますが、完全になくなったわけではありません。教育業界におけるお金の流れには、思っている以上に課題が多いんです。今後はキャッシュレスを軸に、あらゆる課題解決に向けた取り組みを実施します。

そのためにもまずは、今後2年で黒字化に向けた土台を作り、より多くの施設へのenpay導入を目指します。当社アセットを活かした連携も積極的に進める予定です。当社事業に関心のある教育業界の企業には、ぜひお声がけいただけると嬉しいです。

株式会社エンペイ

株式会社エンペイは、オンライン集金サービス『エンペイ』を運営する企業。 『エンペイ』は、保育園や学童施設などを主な顧客としており、同サービスを利用する職員は、請求用のリンクをLINEで保護者に送る事ができる、クレジットカードやLINE Payなどで支払ってもらうことができる。職員は未払いなどをPCで確認できる。

代表者名森脇潤一
設立日2018年11月1日
住所東京都港区港南2丁目15番1号品川インターシティA棟22階SPROUND
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