リーガルアクセスが4000万円を調達、一般民事に特化したAIプロダクトで法的アクセスの格差に挑む

リーガルアクセスが4000万円を調達、一般民事に特化したAIプロダクトで法的アクセスの格差に挑む

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法律業務のDXを推進するリーガルアクセス株式会社が、Garnet Capitalを引受先とした優先株式の発行により4000万円の資金調達を実施した。調達した資金は、AI技術を活用したプロダクト開発と事業体制の強化に充てられる予定である。

リーガルアクセスは2025年1月設立の新興リーガルテック企業で、主に一般民事分野における弁護士業務の効率化を支援するサービス開発に注力している。

同社が取り組むのは、いわゆる「2割司法問題」への対応である。日本では年間1500万人が法的トラブルに直面しているとされるが、弁護士に実際にアクセスできているのは全体のおよそ2割、約300万人にとどまる。弁護士数の不足や、伝統的な業界慣行、さらには「一見さんお断り」といった文化的要因が、法的サービスへのアクセスを制限している。弁護士報酬市場はおよそ1.1兆円規模とされるが、供給側の制約から多くのニーズが満たされていない現状がある。

リーガルアクセスは、こうした課題に対して生成AIや自然言語処理といった先端技術を活用し、弁護士の業務効率を高めることを目指す。具体的なサービスとして、AIによる法務文書の自動作成や契約書レビュー、案件管理の自動化などを提供している。これらのプロダクトは、日々現場の弁護士からのフィードバックを受けて改良が進められている。特に一般民事案件、すなわち離婚、相続、債務整理といった案件はマーケットの大半を占める一方で、デジタル化が遅れてきた分野である。リーガルアクセスはこの領域での業務フローの効率化を推進している。

代表取締役の福島駿太氏は、約10年の弁護士経験を有している。2014年に弁護士登録後、複数の国内大手法律事務所で実務経験を積み、海外での法務研修も経験した。2025年1月にリーガルアクセスを創業し、弁護士として多くの人が法的サービスにアクセスできない現実を社会課題と捉えたことが起業のきっかけとなった。

国内リーガルテック市場全体を見ると、近年拡大傾向が続いている。現在の市場規模は約518億円と推計されており、AI技術の導入やリモート業務の普及を背景に2029年に684億円に達する見込みだ。競合には企業法務向けサービスを展開するLegalForceや、弁護士検索の弁護士ドットコムなどが存在するが、一般民事分野に特化したリーガルテック企業は依然として少数派である。業界全体ではAIによる契約書レビュー、自動文書作成、オンライン法律相談、法務業務のアウトソーシングなどプロダクト開発が進む一方、弁護士数の不足や伝統的な業務慣行、電子契約の法的適用範囲が限定的であることなど、複数の課題も残されている。

今回の資金調達により、AI技術を活用したプロダクトの精度向上とサービス領域の拡充を進めるとしている。AIによる自動化と効率化が進むことで、弁護士の業務負担軽減や案件対応力の向上が期待されるが、同時に業界全体としては倫理基準の策定や情報セキュリティ、法規制との整合性など新たな課題も生じている。今後、同社の動向が一般民事分野のデジタル化や弁護士アクセスのあり方にどのような影響を及ぼすのか注目される。

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