クエストリーが2.6億円を調達──ブロックチェーン活用でエンタメ金融に挑む

クエストリーが2.6億円を調達──ブロックチェーン活用でエンタメ金融に挑む

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エンターテインメント分野に特化した資金調達支援を手がける株式会社クエストリーは、プレシリーズA前半ラウンドで2.6億万円の資金調達を実施したと発表した。今回のラウンドにはBrand New Retail Initiative Fund、Blizzard the Avalanche Fund、TISが参加している。

クエストリーは2022年9月に設立。アニメ・ゲーム・映画など日本発のエンタメコンテンツに関する企画・運営と、それらの制作を支援するコンテンツファイナンス事業に注力している。特徴的なのは、ブロックチェーン技術を用いた直接金融モデルを採用している点である。これにより、クリエイターや制作スタジオへ透明性の高い資金供給を実現し、国内外の投資家からの資本流入を目指している。また、デジタル証券基盤やファンドの組成にも対応し、金融テクノロジーとクリエイティブ産業を横断する事業モデルを展開している。

同社のコンテンツファイナンス事業は、従来の製作委員会方式やテレビ局主導の出資に依存しない新たな資金調達手段を提供するものだ。日本のエンタメ業界では、多くの中小プロダクションや独立系クリエイターが資金調達の困難に直面している。また、大型ヒット作品が生まれても、その収益が制作現場に十分に分配されない課題も指摘されてきた。直接金融を基盤とする同社の仕組みは、こうした構造的な課題への対応策として注目されている。

代表取締役の伊部智信氏は、大学卒業後、2011年にゴールドマン・サックスに入社。外国為替営業部で4年、債券営業部で7年の計11年間勤務し、その間にニューヨーク本社でも2年間勤務。2022年に株式会社クエストリーを設立。伊部氏は、金融とエンタメ両領域での知見を活かし、資金調達の選択肢拡大や国内外投資家層の開拓、また金融商品取引業をはじめとする法規制対応に取り組んできた。加えて、先進的なブロックチェーン技術の社会実装や、グローバルな投資環境の整備にも注力している。

日本のコンテンツ産業の2022年度の市場規模は、13.1兆円に達した。(経済産業省)一方、海外展開や新規資本流入の面では、欧米大手企業と比較して遅れが指摘されてきた。伝統的な資金調達方法である製作委員会方式や大手メディアによる出資は、中小規模のプロダクションや新興クリエイターには参入障壁が高い。また、収益分配の透明性や公平性にも課題が残る。加えて、グローバルなデジタル化の進展とともに、NFT(非代替性トークン)やデジタル証券といった新たな金融プロダクトへの期待が高まっており、エンタメと金融、テクノロジーの融合を目指す動向が強まっている。

今回の調達資金は、コンテンツ事業の強化(原作許諾取得やコンテンツビジネスの企画・管理、海外展開への投資)、デジタル金融基盤の拡充(金融商品取引業取得、ファンド組成、デジタル証券の活用など)に充当される予定だ。TISの提供するセキュリティトークンプラットフォーム「STLINK」との連携も検討しているという。

ブロックチェーン基盤の活用により、これまで参入が難しかった海外投資家層の参加障壁が下がり、国境を越えた資金流通の効率化が期待されている。一方で、日本国内の金融規制や為替・景気動向、またエンタメ業界内の既存プレイヤーとの調整など、今後も解決すべき課題は多い。

今後はブロックチェーン技術の活用によるクロスボーダー投資の仕組みも視野に入れ、海外からの資金流入を促進し、日本発コンテンツの国際競争力強化を図っていく。

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