株式会社Synspective

2024年のスタートアップによる資金調達総額は8097億円(※プレスリリース情報に基づく速報値)で前年比15.5%増となった。対前年で落ち込んだ2023年から回復し、2022年比でも増加するなど、堅調な一年だったといえる。
(株)ケップルは、スタートアップの動向を把握するうえで、資金調達と同様に重要な指標として「従業員数」に注目。2023年12月~2024年12月の国内スタートアップの従業員数を集計し、スタートアップ動向レポート「従業員数から読み解く国内スタートアップの現在地2024」としてまとめた。今回は、レポートの中から宇宙セクターの従業員数推移や市場動向に関する解説を紹介する。
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民間化が進む宇宙産業とスタートアップの事業多様化
宇宙産業は国家主導から民間主導へと変化している。近年市場を牽引しているのは、スタートアップだ。宇宙輸送技術の発展に伴い、人工衛星打ち上げに関する技術進歩や低コスト化が進む。人工衛星を活用したシステム構築も参入障壁が下がり、衛星通信サービスの分野でも多くのスタートアップが登場している。
2016年の宇宙二法(宇宙活動法と衛星リモセン法)成立を契機に、人工衛星やロケットを開発するスタートアップの設立が増加した。また、2020年前後からは衛星データや宇宙空間の利用法の開発など、ロケット・衛星打ち上げから派生した事業に取り組む企業が多く誕生している。
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注:上場したスタートアップや閉鎖企業などを含む
評価額100億円以上の企業には株式会社アクセルスペース、株式会社Synspectiveなどがある。特に小型SAR衛星を開発する株式会社Synspectiveは宇宙セクターの中で従業員数が最多。量産施設の本格稼働に向けた準備やグローバル展開などを強化することを発表しており、2024年12月には東京証券取引所グロース市場へ上場した。
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注:2024年1月時点=100として指数化(セクター全企業の従業員数が対象)
民間ロケットからラストマイル配送まで──グローバルでは宇宙産業領域が多様化
世界の宇宙産業の市場規模は、2023年に約6300億ドルと推定されている。CAGR9%で成長、2035年までに約1.8兆ドルに達するとの予想だ※1。宇宙関連企業数は、1位のアメリカが約5600社と世界全体の企業数の約半分を占める。「SpaceX」は、非上場ながら世界の宇宙開発をリードするユニコーン企業だ。2020年に民間企業初となる有人宇宙船の打ち上げに成功し、世界中の商用衛星やアメリカの軍事衛星の打ち上げの大半を担う。ほかにも、アメリカ発スタートアップとして、通信会社や政府ミッション向けの小型通信衛星を開発する「Astranis Space Technologies」などの企業が存在する。同社は、次世代ブロードバンド衛星『Omega』の開発へ向け、2024年7月にシリーズDラウンドで2億ドルを調達した。ほかにも、各国で特徴的なスタートアップが成長を遂げている。インドでは、「Skyroot Aerospace」が2022年にインド初の民間開発ロケット『Vikram-S』の打ち上げに成功。イタリアでは、「D-Orbit」が、事業者が希望する軌道に衛星を投入する衛星軌道投入機『ION』を開発し、衛星のラストマイル配送を支援している。
政府支援と制度整備による国内成長環境の形成
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※プレスリリース情報に基づく
国内の宇宙産業の市場規模は約4兆円と推計され、政府は2030年代に約8兆円へと倍増させることを目指している。政府は2024年より、宇宙事業を行う民間企業や大学の研究開発に対して10年間で1兆円規模の支援を行う宇宙戦略基金を設立した。宇宙産業の競争力強化に乗り出す方針だ※2。スタートアップ数は欧米より少ないものの、有望なスタートアップも登場。宇宙ごみの増加が課題となる中、その解決に取り組む企業も登場している。2024年には、スペースデブリ(宇宙ごみ)除去サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングスが上場した。2012年に開始したJAXAの研究開発プログラム「J-SPARC」も、宇宙スタートアップを盛り上げている。この共創プログラムは、スタートアップから大企業まで多様な民間企業との連携を通じて宇宙ビジネスの創出を支援する取り組み。JAXAの技術や知見を活用しながら、輸送や成層圏利用、衣食住など新たな領域の事業化を目指している。本プログラムはスタートアップの成長を技術・資金の両面から後押ししており、実際に資金調達につながる例もある。こうした官民一体の支援体制とスタートアップの技術革新により、今後も日本の宇宙産業市場は持続的な成長が期待される分野として注目を集めそうだ。
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本セクターの、2024年従業員数ランキング(2023年12月から2024年12月までの期間を集計)と主要なカテゴリーに属する国内外のスタートアップの動向、掲載企業の一覧は KEPPLE DB でご覧いただけます。
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※1 McKinsey & Company Space: The $1.8 trillion opportunity for global economic growth
※2 経済産業省: 国内外の宇宙産業の動向を踏まえた 経済産業省の取組と今後について
Writer

高 実那美
株式会社ケップル / Data Analysis Group / Database Division / アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。
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