法律業務に革新をもたらすリーガルテック
リーガルテック(LegalTech)とは、法律(Legal)と技術(Technology)を組み合わせた言葉で、法律サービスや法務業務にテクノロジーを活用する分野を指す。AI、機械学習、ビッグデータ分析などの最新技術を用いて、法律関連の業務の効率化や質の向上、コスト削減にもつながる。
日本のリーガルテック市場は、法的規制の中でも着実に成長している。スタートアップや企業法務部門を中心に、電子署名、契約書作成・管理、紛争解決などのツールが普及しつつある。今後の法改正や社会変化に伴い、リーガルテックの適用範囲はさらに拡大すると見込まれている。
矢野経済研究所※によると、リーガルテックの一つである電子契約サービスの2021年市場規模は、前年比38.6%増の約140億円であり、2025年には395億円に拡大すると予測されている。
スタートアップ5選
株式会社リセ
契約書レビューサービス「LeCHECK(リチェック)」を提供する。LeCHECKは、企業間の契約書の内容から、AIが自動的に抜け漏れや不利な条件などの指摘、代替案を提示して見落としリスクを軽減するレビュー支援サービスだ。過去の締結済み契約書や関連資料をクラウドにアップロードすることで紛失リスクを軽減。国際取引特有のリスクの洗い出しや、抜け漏れのチェックにも対応する英文契約書レビュー支援機能も提供している。
2024年1月には、Angel Bridge、大和企業投資、グローバル・ブレイン、弁護士ドットコム、BRICKS FUND TOKYO by Mitsubishi Estate、京都キャピタルパートナーズ、金融機関他を引受先とした、第三者割当増資と金融機関からの融資による総額18億円の資金調達を実施した。
GVA TECH株式会社
「GVA manage」や「GVA assist」を開発・提供する。GVA manageは、契約書の作成・レビューや法律相談などの法務案件を一元管理するクラウドサービス。法務案件を依頼する事業部担当は専用のアカウントは不要で普段利用しているメールやチャットを利用できる。法務データの整備が自動で行われるため、作業時間を大幅に削減することが可能。GVA assistは、リスクチェックを行うAI契約書レビュー支援クラウド。取引に応じたカスタマイズもできる。他にも、生成AIが自動で契約書の項目を整理し管理台帳を自動で作成する「GVA 契約書管理」やWebサイト上から登記事項証明書や登記情報PDFファイルの交付請求ができるサービス「GVA 登記簿取得」なども提供している。
2024年9月には、ティーケーピーを引受先とした資金調達を実施した。また、生成AI契約書管理システム「GVA 契約書管理」が契約書関連付け機能に対応したことを発表した。
Tokkyo.Ai株式会社
知財AI(人工知能)ツール「プライベート特許検索」の開発・運営を行う。プライベート特許検索は、特許データベースを活用して企業内でDX特許検索システムを提供し、発明者に関連する国内外の特許情報を分析・活用することで、特許の取得や管理を効率化する。
2024年8月には、「プライベート特許検索」が、AIを活用して文章ベースで特許を検索し、関連文献を自動でリスト化する機能を追加して、研究者向けAI特許検索機能をアップデートしたことを発表した。
株式会社ユアサポ
オンラインでの紛争解決サービスを開発・提供する。日常的な二者間の法律トラブルに対して、法務省認証のADR機関として和解交渉支援を行っている。また、リーガルテックなど規制分野での新規事業立ち上げ支援も提供している。
2022年3月には、XTech Ventures、ANOBAKA、クオンタムリープベンチャーズを引受先とした第三者割当増資による総額8000万円の資金調達を実施した。
ローイット株式会社
企業HP:https://lawit.jp/
リーガルテック関連事業を展開する。同社の提供する「マルット」は、建設業許可や宅建業免許、建築士事務所登録といった許認可情報をクラウドで一元管理できるサービスだ。行政書士のサポートも受けられ、更新手続きの忘れや条件不足による事業停止リスクを防ぐことができる。他にも、創業・起業支援やマーケティングや企画、運営などを行うWEBソリューションの提供も行っている。
法務領域の効率化 今後も続くか
リーガルテックは、法律業務の効率化やコスト削減に寄与し、今後さらに幅広い分野での導入が期待されている。特に電子契約サービスなどの技術進展は、企業の法務部門やスタートアップの業務に大きな影響を与えている。法改正や技術革新が進む中、リーガルテック市場の成長は今後も続くと予想される。
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※矢野経済研究所 「電子契約サービス市場に関する調査を実施(2022年)」