EdTech市場拡大の波に乗る──Hanjiがシードで3億円調達、AIチューター「Knock」を強化

EdTech市場拡大の波に乗る──Hanjiがシードで3億円調達、AIチューター「Knock」を強化

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生成AIを活用した中高生向けAIチューター「Knock」を開発・提供するHanji株式会社が、Angel BridgeおよびCoreline Venturesを引受先とする第三者割当増資によって、シードラウンドで約3億円の資金調達を実施した。

Hanjiは2023年12月に設立されたEdTechスタートアップである。主力サービスである「Knock」は2024年10月に正式にリリースされた。Knockは、生成AIを活用し、生徒がスマートフォンやタブレットで問題を撮影すると、AIがヒントや解説、重要ポイントを提示する仕組みを備える。独自開発の教育特化型AIを用いることで、単なる正答の提示にとどまらず、生徒の思考プロセスや段階的な理解を支援する出力が特徴となっている。また、学習ログ管理を行う「Studygram」などの機能も搭載し、生徒の学習継続や進捗の可視化にも対応している。リリースから半年で10万ダウンロードを記録し、4000件以上のレビューで平均4.8点台の評価を得ている。現在はアプリストアでの一般提供に加えて、学校や学習塾など教育機関との連携によるBtoB展開も進行中である。

代表取締役CEOの村田洋佑氏は、神奈川県出身。マッキンゼーで戦略コンサルティングに従事した後、EdTechスタートアップで事業責任者を務めた経験を持つ。2023年に共同創業者である辻本直人氏(取締役CPO、EdTechスタートアップ出身)とともにHanjiを立ち上げた。

EdTech業界では近年、生成AIの導入が加速している。個別最適化学習や教員の業務効率化、学習インフラの構築といった領域で企業間の競争が活発化している。野村総合研究所によると、EdTech市場は2023年には約3000億円に到達すると予測され、今後も成長が見込まれている。一方で、中高生世代における学力格差や教員不足、ICT活用の現場浸透率の低さ、複数サービスが存在し比較検討負荷が指摘される。

AIチューターやAIドリル領域では、スタディサプリ(リクルート)、Qubena(COMPASS)、atama+(atama plus)などが競合している。atama+やQubenaはAIによる学習データ解析や復習スケジュールの自動生成を、スタディサプリやすららネットワークは幅広いコンテンツと大規模な導入実績を強みとしている。Hanjiによると、Knockは写真による問題抽出、教育特化AIによるヒント生成、思考力を引き出す設計、直感的なUI/UX設計を特徴としており、生徒の能動的な学習体験と生産性向上の両立を重視しているという。学校や塾でのトライアル導入も進めており、教員の負担軽減や学習データの利活用も視野に入れている。

今回の資金調達では、Angel BridgeおよびCoreline Venturesが引受先となり、シード段階としては比較的大きい約3億円を調達した。Hanjiによれば、資金はKnockのAIチューター機能の強化(AIスキャン精度やUXの向上、進路支援や個別学習プラン作成などの新機能開発)、教育機関向けの事業推進体制の構築、エンジニアやセールスを中心とした人材採用に充てられる計画である。

Knockはリリース半年で10万ダウンロードを達成しており、市場から一定の反応を得ている。今後は技術開発と教育現場との連携を軸に、個別最適型学習インフラとしての定着やBtoB展開の拡大が課題となる。EdTech業界全体では、AI活用に対する社会的な信頼性向上やデータセキュリティ、学習成果の継続的な検証が求められている状況だ。

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