家賃を「日数分だけ」に変革──Unitoが描く新しい暮らしの最適化

家賃を「日数分だけ」に変革──Unitoが描く新しい暮らしの最適化

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住んだ日数分だけ家賃を払う「リレント」というビジネスモデルで暮らしのあり方を変革する、Unito株式会社。同社は今回、シリーズDラウンドで総額10億円(エクイティ約8億円、デット約2億円)の資金調達を実施した。

入居者がアプリで「使わない日」を申請することで家賃を減額し、その期間中は自動的に民泊として運用するサービスを提供。「暮らしの最適化の追求」をミッションに掲げ、創業から約5年で会員数7.7万人、物件数880件まで成長した。

2024年11月には監査役会を設立するなど、上場も見据えた体制強化を図る。また、最短即日入居可能なプラットフォーム事業も展開し、サービス展開の多角化を目指している。

今回の調達により、大東建託やHISといった大手企業との協業を加速予定だ。

創業者兼代表取締役の近藤佑太朗氏に、事業の特徴や今後の展望について詳しく話を伺った。

住むと泊まるをつなぐ「リレント」で三方よしを実現

──事業概要を教えてください。

近藤氏: 私たちは「リレント」というビジネスモデル特許を取得して、この仕組みを軸に事業を展開しています。リレントは、毎月定額で家賃を払うのではなく、実際に住んだ日数に応じて家賃が発生する、いわば従量課金型の賃貸スタイルです。

入居者の方には、まずアプリを使って「この日は家にいません」と申請してもらいます。するとその瞬間に、部屋がAirbnbやBooking.comといった宿泊予約サイトに自動で掲載されて、宿泊希望の方が予約できるようになります。住む日は賃貸として、留守の日はホテルとして稼働するので、空間を無駄なく活用できるのが特徴です。

リレント利用賃料シミュレーション
3日前までにアプリで申請することでリレントが可能に(画像は公式HPより)

部屋には家具や家電が最初から備え付けられているので、入居者はすぐに生活を始められます。入居者不在の期間は、その部屋に他の宿泊者が滞在しますが、入居者の私物は鍵付きの収納スペースに入れてもらうことで、プライバシーもしっかり守られます。

宿泊者の滞在が終わった後は、私たちが清掃を行いますので、入居者はいつでも清潔な部屋に帰宅できるんです。ホテルに住んでいるような感覚で、快適に暮らしていただけると思います。

オーナーの方にも大きなメリットがあります。というのも、家賃収入に加えて、宿泊料金がそのまま上乗せされる仕組みです。つまり、通常の賃料に加えてホテル稼働による収益も得られるので、より高い収益を期待できます。入居者・宿泊者・オーナーの三者それぞれに価値を提供できる、いわば“三方よし”のモデルです。

宿泊稼働率は94%と非常に高く、宿泊業界全体の平均である83%と比べても、かなり優秀な数字が出ています。その理由のひとつは、一定数の長期滞在のお客様がいらっしゃることですね。また、入居者の方が外出している「リレント期間」は、平均すると月に10日から11日程度です。もちろん、月に30日ずっと住んでいる方もいれば、セカンドハウスのように月に10日程度しか使わない方もいて、使い方は人それぞれです。

プロパティマネジメントシステム画面
サイトコントローラーと連携して、在庫の管理やメッセージ対応、清掃管理を一貫して行う プロパティマネジメントシステムも実装(画像はHPより)

──特にスケーラブルに成果が出ているモデルは。

主力のモデルはコロナ前後で変化しました。

サービスを立ち上げた当初は、まさにコロナ禍の真っ只中でした。ちょうど「ホテル暮らし」や「多拠点・二拠点居住」といった新しいライフスタイルが注目されていた時期で、Unitoもその潮流の中で、ホテルを掲載するプラットフォーマー型モデルを主軸にしていました。当時は、多くの方に「こんな暮らし方があるんだ」と驚きを持って受け入れていただき、Unitoがこのライフスタイルを牽引していたと言っても過言ではないと思います。

ただ、2023年ごろから社会環境やユーザーニーズに明確な変化が出てきました。たとえば、ビジネスパーソンが都心にセカンドハウスを持つような感覚で利用したり、法人が出張先で社員が中長期滞在するための住まいとして導入したりと、より実用的で安定したニーズが増えてきたんです。「普段はシンガポールに住んでいるけれど、年に数ヶ月は日本で暮らしたい」といったグローバルなライフスタイルの方や、「地方在住だけれど、仕事のために定期的に東京で暮らす必要がある」というような方々が、Unitoを利用するケースが増えてきました。

こうしたニーズの変化に応じて、現在もっともスケーラブルに成長しているのが、自社ブランドで運営している物件です。Unito自身は物件を保有しないノーアセットの立場で、東急さんや三井不動産さんといった大手デベロッパーが持つ物件の運営を担っています。物件はパートナー企業が提供し、私たちは運営・集客・収益化を担う。こうしたモデルが今の成長を支えている柱になっています。

高い資本効率と独自モデルで築く、不動産×宿泊の新しい価値

──不動産業界は変化の激しい市場です。

2~3年で様々な変化が生じることも少なくありません。今はインバウンド需要の高まりで「泊まる場所が足りない」という状況ですが、その流れを受けて物件の新規開発が進みすぎれば、いずれ供給過多になるリスクも出てきます。

こうした不安定な環境の中で持続的に成長するには、ホテルとしてもレジデンスとしても活用できる柔軟なアセットが重要です。Unitoのビジネスモデルは、まさにそのような、使い方に幅があるサステナブルな運用モデルとして、業界の課題に応える有効な選択肢になっています。

また、私たちの事業は、非常に高い資本効率が特徴です。収益源の「宿泊」と「賃貸」のうち、賃貸側は、少人数でも1人あたりの売上が大きく、効率よく収益を上げられる構造になっています。たとえば、1人のユーザーが年間で150万円を利用してくれれば、100人で流通総額は1.5億円、1000人で15億円に達します。つまり、少人数でも十分にスケールが見込めるモデルです。

一方宿泊に関しても、マーケティングコストが最小限で済んでいます。宿泊市場の大半がすでにAirbnbやBooking.com、Expediaといった強力なプラットフォームに集約されているため、独自に宿泊者を集める必要がありません。

需要の波に左右されない柔軟性と無駄のない収益構造が、Unitoの競争力の源泉です。

──貴社のユニークさについても教えてください。

そもそも、「リレント」というビジネスモデル自体が当社独自のものなので、それ自体が差別化になっていると感じています。

加えて、当社は予約・契約の管理を自社で完結できるプラットフォームを持っていて、集客から運営までをワンストップで提供できる体制を整えています。たとえばAirbnbやBooking.comなどの外部サイトも併用していますが、それらに依存しているわけではありません。2025年6月時点で7.7万人の会員を有する自社基盤を活かして、高い収益性と柔軟なオペレーションの両立を実現しています。

マーケティング図
自社媒体プラットフォームと強固な会員基盤による高い自社集客力(画像は公式HPより)

この強みを支えているのが、「不動産」と「宿泊」という、全く別の2つの業界に属する分野をまたいだ知見と構想力です。それぞれ高度な専門性が求められる世界で、物件の運営、開発(いわゆるデベロッパー)、投資(ファンド)など、通常はプレイヤーが役割ごとに分かれています。

たとえば、不動産賃貸の場合、基本的なビジネスモデルは「物件を貸して、毎月決まった家賃収入を得る」というものです。この安定的な賃料収入を前提に、物件の投資価値が評価されるのが一般的です。一方で、ホテルなどの宿泊業はまったく異なる構造を持っています。売上から清掃費・人件費・備品代といった運営コストを差し引いた営業利益、いわゆるGOP(Gross Operating Profit)によって収益性が判断される、といった形です。

このように、利益構造も評価指標もまったく異なる2つの領域を、私たちはしっかり理解したうえで、一つのモデルに統合しているんです。そこにこそ、Unitoのユニークな立ち位置があると考えていますし、他社には簡単に真似できないアプローチだと自負しています。

戦略的資金調達と業界横断の協業で描く成長曲線

──今回シリーズDで10億円を調達された背景について教えてください。

今回の資金調達には、短期的な資金需要に応える以上の意味があります。中長期の成長を見据えた、戦略的な資金活用を意識しており、大きく4つの柱で考えています。

まず一つ目は自己資本比率の改善です。今後、金融機関からの借入やリースなどを通じてレバレッジをかけていくことを見据えたとき、バランスシートの健全性は非常に重要だと考えています。

次に二つ目が、戦略投資のための原資。これはM&Aのような新しい動きに備えるためのもので、今回の調達のうち2億円をこの目的に充てています。

三つ目は、営業体制とプロダクトの強化です。こちらも2億円ほどを計画しています。より多くの物件オーナーさま、企業さまにUnitoの価値を届けていくための営業基盤づくり、またプロダクト面でも体験の質を高めるための開発投資を行っていきます。

そして四つ目は、戦略的パートナーとの連携強化です。今回の資金調達では、HISさんや大東建託さんといった業界のリーディングカンパニーから、協業を前提とした出資を受けています。これは単なる出資ではなく、Unitoの事業を共に作り上げていくパートナーとしての位置づけです。

Unitoは、「住む」と「泊まる」の概念を融合している企業です。だからこそ、「泊まる」の領域で日本を代表する旅行会社であるHISさんと、「住む」の領域で最大手の住宅サプライヤーである大東建託さんをパートナーに選びました。HISさんとはすでに、非旅行分野における新しい商品開発を進めており、大東建託さんとは住宅供給側との協業を予定しています。

────シリーズCまでと比べて今回の調達への受け止め方は。

率直に言うと、それほど大きな変化は感じていません。私たちはアーリーステージの頃からリード投資家を置かず、主に事業会社を中心に資金調達を行ってきました。今回もその方針に変わりはなく、リードVCが入ることで意思決定がその意向に左右されることを避ける狙いです。その結果、バリュエーションが急激に跳ね上がるようなことはありませんが、その分、自社として納得感のある判断ができているという実感があります。

また、資金調達は毎年ある程度のペースで計画的に進めており、その都度フェアバリューでの実行を目指してきました。この継続的なアプローチによって、投資家にとって魅力的な機会を提供し続けることができていると考えています。さらに、企業の成長段階に応じた柔軟な資本政策の設計にもつながっていると感じています。

単に資金を確保するのではなく、事業戦略と資本戦略を一体で捉える。この姿勢こそが、Unitoの持続的な成長を支える基盤になっています。

──今後の展望について教えてください。

私たちは今後、「住む」と「泊まる」のあいだに広がるフレキシブルリビングマーケットを、日本国内でより広く普及させていくことを目指しています。そして10年以内には、運用総額で1兆円規模の事業基盤を築くことが目標です。

その実現に向けて、プロダクトの進化にも力を入れていきます。現在一般的に使われているPMS(予約・顧客管理システム)は、主にホテル向けに設計されたものが多いのが実情です。今後は、賃貸や民泊といった用途にも対応できる、より柔軟なPMSの開発・導入を進めていきます。

私たちが見据えているのは、人口減少という不可避な未来に対して、日本の不動産価値をどう再定義し、活性化していくかというテーマです。働き方も暮らし方も多様化する時代において、不動産に柔軟性という選択肢を与えることが、新しい暮らし方や街づくりにつながると信じています。

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