株式会社coco

株式会社cocoが、店舗向けAI接客プラットフォーム「coco」の事業拡大を目的として、シリーズAラウンドで第三者割当増資による約3億円の資金調達を実施した。今回のラウンドには、ファーストライト・キャピタル、サイボウズ、フリークアウト・ホールディングス、みんなのマーケット、佐銀キャピタル&コンサルティング、しぎんキャピタルパートナーズ、複数の個人投資家が参加した。今回の調達により、全国規模での営業体制・カスタマーサクセスの強化、AI機能の拡充などを進める。累計調達額は6億円を超えた。
2013年1月に設立された同社は、店舗型サービス業向けにAI搭載の接客・営業支援プラットフォーム「coco」を提供している。主な機能は、LINEやSMS、Eメールといった複数チャネルでの顧客コミュニケーションの一元管理、AIによるメッセージ自動生成、顧客情報の蓄積・活用など。これにより、問い合わせ対応の抜け漏れやスタッフごとの対応品質のばらつきといった課題に対応する。プロンプト設計不要のAI文章生成やGoogle口コミ依頼、カスタマイズ可能なレポーティング、外部CRM連携も備えている。現場のITリテラシーや業務負荷に配慮した設計が特徴とされており、中小企業から大手チェーンまで、カーディーラー、リフォーム、不動産、美容、冠婚葬祭、医療機関など高単価商材を扱う店舗型ビジネスで累計3000店舗以上に導入されている。
代表取締役の髙橋俊介氏は、大学在学中にNPO法人で人材紹介営業を経験。その後、IT企業でのインターンを経て、2013年1月に在学中にcocoを創業し、代表取締役に就任した。
小売、サービス、医療分野などの店舗型ビジネスでは、少子高齢化による人手不足や消費者の非対面志向、コミュニケーションチャネルの多様化を背景にデジタル化・DX推進の必要性が高まっている。しかし、2023年の中小規模店舗におけるDXへの取り組み率は約40%にとどまり、特に接客業務のデジタル化は遅れている。チャットボットやCRM(顧客管理)、MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入は大手企業に偏りがちで、現場の運用に即した使いやすさやコストパフォーマンスの面で、中小・地域事業者のニーズには十分応えられていなかった。こうした状況の中、現場の業務に寄り添うAI接客基盤への期待が高まっており、cocoもその一つと位置づけられる。
cocoは今回の資金調達により、全国規模での営業およびカスタマーサクセス体制の強化、生成AIを活用した機能開発やAIエージェント実装の推進、UI/UXの改善および外部システム連携の拡充、販売代理店チャネルの拡大およびパートナー施策の強化に取り組む計画である。
同社によると、cocoはシンプルなUI設計に加え、導入時や運用面での店舗訪問やオンラインサポートなど、定着支援に力を入れているという。導入企業での解約率は1%未満とされ、現場に根付いた業務効率化の成果が報告されている。たとえば、自動車販売業においてはメッセージ返信漏れの解消による業務効率向上などの事例がある。
cocoは全国3000店舗超への導入実績を持ち、現場伴走型のサポート体制や生成AIを活用した即応型コミュニケーションプラットフォームとしての立ち位置を築いている。今後は、さらなる業種・地域への展開や機能拡張、現場でのAI活用の高度化、地域密着型ネットワークの構築が課題となる。市場全体としても中小・地方事業者のデジタルトランスフォーメーション需要が拡大し、AI搭載の顧客接点ツールやCRMを巡る競争が活発化する見通しである。サービスの差別化や現場での定着支援、費用対効果の明確化が今後の事業成長を左右すると考えられる。