Logomixが総額28億円を調達──独自ゲノムエンジニアリング基盤で米国事業拡大へ

Logomixが総額28億円を調達──独自ゲノムエンジニアリング基盤で米国事業拡大へ

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細胞エンジニアリング分野のスタートアップ、Logomixは2025年7月、総額28億円の資金調達を完了したと発表した。今回の調達資金は、同社の細胞機能工学技術を活用した多業種向けバイオ製品の商業化や、特に米国市場における細胞治療・再生医療事業の拡大に充てる方針である。

Logomixは2019年に設立された。人工的に細胞や微生物のゲノム(全遺伝情報)を設計・再構築できる独自技術「Geno-Writing™」を開発しており、従来のゲノム編集よりも大規模かつ柔軟な改変を可能にする。この技術基盤により、新規治療用細胞や工業利用可能な微生物の創製、さらにはバイオ燃料や高機能素材の開発支援など、幅広いバイオエコノミー分野にサービスを展開している。

今回の調達ラウンドにはAngel Bridge、JAFCO、東大IPC、米国Sand Hill Angelsといった既存投資家に加え、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、デライト・ベンチャーズ、みらい創造インベストメンツ、農林中金キャピタル、三菱UFJキャピタル、三井住友銀行、りそな銀行、あおぞら企業投資などが参画した。個人投資家やNEDO、JSTの公的助成金も含まれており、多様な資金源によるファイナンス体制が特徴的だ。

Logomixの事業の中心となるのは、ゲノム全体の「設計・組立・改変」を一貫して行う大規模ゲノム構築基盤「Geno-Writing™」である。従来のゲノム編集技術(例:CRISPR)は特定遺伝子の修飾にとどまっていたが、Geno-Writing™は全ゲノム規模での再設計や人工配列の合成が可能となっている。この技術によって、CO₂を原料とした新規アミノ酸生産微生物の創出や、幹細胞の機能拡張を通じた治療応用などが実現されている。実際に、バイオものづくりや医療分野での応用事例が増加している。

代表者は共同代表制をとっており、創業者の一人である相澤康則氏(東京科学大学生命理工学院准教授)と、石倉大樹氏が務める。石倉氏は大学発創薬ベンチャーの立ち上げや医療機器事業の開発、ベンチャーキャピタルでの経験を有し、2019年から現職に就いている。研究主導型の相澤氏と、事業開発に強みを持つ石倉氏が協力する体制となっている。

バイオものづくり分野は、持続可能な社会の実現に向けた脱炭素技術や高機能素材・創薬の基盤技術として、米国や欧州、中国を中心に市場拡大が進んでいる。ゲノム編集や構築技術の普及が進み、実用化フェーズに移る企業も増加傾向にある。一方で日本では、スタートアップの数自体は増えているものの、製造コストや産業クラスター形成、グローバル市場進出など、事業化段階での課題が指摘されている。また、製造コストや開発スピード、社会実装に向けたネットワーク形成が国内バイオスタートアップの主な経営課題として挙げられている。

競合としては、国内ではSynplogenやバイオパレット、bitBiomeが独自のゲノム編集・細胞工学技術で開発・量産体制を進めている。海外では米Ginkgo BioworksやTwist Bioscienceなどが、同様の領域で事業を展開している。国内では関西圏を中心とした「バイオコミュニティ」の形成や、公的バイオファウンドリ事業がイノベーションの追い風となっている。

今回の資金調達に伴い、Logomixは米国事業の体制強化を進める。TechBio分野のSomite Therapeuticsとの提携や、MITのRon Weiss研究室との共同研究を開始し、機械学習とゲノム工学を組み合わせた新規細胞治療の開発に着手している。また、米Parker Institute for Cancer Immunotherapy元最高医学責任者のRamy Ibrahim氏、ElevateBio共同創業者で元研究開発社長のMitchell Finer氏がアドバイザーに就任し、臨床応用から量産体制までの事業推進体制を強化している。

加えて、同社のGeno-Writing™プラットフォームは、標準的な基盤技術として外部パートナー企業へのライセンス供与も進めている。2023年以降は欧米のバイオテック企業との提携や技術供与によって、海外市場での展開を加速している。国内では2023年に味の素とCO₂資源循環型微生物生産の共同開発に取り組むなど、多様な産業連携も進んでいる。

バイオエコノミー分野において技術の社会実装や国際展開の重要性が高まる中、Logomixは大規模ゲノム構築技術とプラットフォーム戦略を軸とした事業拡大を進めている。米国や欧州のパートナー企業との連携を強化し、細胞治療分野の研究開発や量産体制の構築にも注力している。バイオものづくり基盤の標準化が加速する中、同社の動向が業界内で注視されている。

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