ヘアカラー専門店「fufu」を展開するFast Beauty、総額約17億円を調達

ヘアカラー専門店「fufu」を展開するFast Beauty、総額約17億円を調達

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ヘアカラー専門店「fufu」と会員制EC「fufu+」を展開する株式会社Fast Beautyが、シリーズBラウンドにおいて総額約17億円の資金調達を実施した。エクイティとデットを組み合わせたハイブリッド調達により、国内外での店舗拡大とDX基盤の強化を推進する。

エクイティでは事業連携を見据え、NVenture CapitalやAGキャピタル、ロート製薬などが引受先となっている。加えて、シリーズAのリード投資家であるDBJキャピタルとの連携や、Funds Venture Debt Fundを運営するFunds Startupsからのサポート等により、デットファイナンスを実行した。

同社は2014年の創業以来、カットやパーマを提供しない「ヘアカラー専門店」という業態で、全国140店舗以上を展開。顧客データを活用したOMO(Online Merges with Offline)戦略により、リピート率の高いサービスを実現している。今回の調達資金は、国内での新規出店や、アジア圏での海外展開、さらには自社開発の予約管理システムやEC事業の強化に充てられる予定だ。

代表取締役CEOの高橋賢氏と取締役CFOの岡本和幸氏に、事業の特徴や今後の展望について聞いた。

「プロのヘアカラーを、もっと手軽に」Fast Beautyが解決する課題

──御社の事業概要とサービスの特徴について教えてください。

高橋氏: Fast Beautyは2014年に創業した会社で、ヘアカラー専門店「fufu」を展開しています。短時間でお手頃な価格で利用することができる、カラーだけに特化した店舗です。

普通の美容室でカラーをすると、お金も時間もかかってしまいますよね。綺麗に染まるけれど、数時間かかって1万円以上することもあります。一方、自宅で染めると安く済むものの、髪がダメージを受けたり、手間がかかったりします。私たちはその中間を狙っているんです。

メインのお客様は40代、50代の女性です。髪が伸びてきて白髪が目立ったり、根元の髪の毛との色の違いが見えてしまったりして「もう染めたいな」と思っても来店をためらってしまう状況を解消し、定期的なメンテナンスとして月1回程度のペースで気軽に通える環境を提供したいと考えています。

私たちが掲げているサービスコンセプトは「きれいな髪で、毎日をにこやかに」。そのために「プロのヘアカラーを、もっと手軽に」提供しようとしています。

プロの美容師が染めるのはもちろん、材料も可能な限り質の高いものを使っています。ヘアカラー専門店の中には、材料費を削ってクオリティを犠牲にするケースもあり得ますが、私たちはクオリティを捨てずに手軽さを実現することにこだわっているんです。

さらに、予約のしやすさや、通いやすさも重要です。定期的に通い続けることで「きれいな髪で毎日をにこやかに」過ごせるよう、お客様が来店を忘れてしまわないようなサポートや、離脱しかけたときの働きかけもしています。お客様にとってより手軽になるよう、細部まで突き詰めているんです。

fufu店舗写真
fufuは商業施設内や駅の近くなどに店舗展開しており、予約なして来店することも可能

自社システム「cip」が支えるOMO戦略

──顧客体験向上の取り組みについて教えてください。

高橋氏: 顧客体験向上の中核は、自社開発の予約管理システム「cip(Customer Information Platform)」です。CRM、予約管理、KPI管理などを統合したプラットフォームで、「働く美容師の成果」と「お客様の体験」がつながり、より良い循環が自然と生まれる仕組みになっています。

ずっと通っている美容室だと、担当スタイリストがお客様のことをよく理解してくれているでしょう。髪や頭皮の特徴やその人ごとの好みなどの情報を、長年の経験と関係性の中で把握している。それと同じことを、データとして持っているということです。

そのデータを活用し、EC上ではお客様に適した商品が提案されますし、店舗でもそれを前提にしたカウンセリングができる仕組みになっているんです。

岡本氏:しかも私たちが蓄積しているデータは、お客様ご自身が答えたものに加えて、美容師であるfufuのスタッフとの会話を通じた「診断」データです。そこで得られたパーソナルなデータを、さらにお客様ごとのより良いfufu体験にできるよう活用したいと考えているのです。創業以来、1号店の時からデータを取得し続け、出店戦略などにも活用してきましたが、ここからさらに、店舗とオンラインをつなげる動きにも活用していきたいと考えています。

現在では、すでにそれらを会員制ECサイト「fufu+」での体験向上に活かそうとしています。蓄積したデータに基づいてアルゴリズムを組み、お客様にフィットする商品やおすすめ記事を提案する仕組みです。それによって、新たな商品やサービスとの出会いを作り出しています。オンラインとオフラインを融合させたOMOモデルの深化により、体験価値を向上させようとしているんです。

スマートフォン画面イメージ
fufu+上では、ヘアケアやおすすめ商品についての記事・動画も閲覧することができる

──ここまで店舗数を増やせた要因は何でしょうか。

高橋氏: 急激に増やしたというよりも、一つひとつ着実に増やしてきました。毎回チャレンジングに改善を積み重ねてきた結果ですね。

岡本氏: お客様のニーズに応え続けている結果だと思います。私たちは比較的低価格なビジネスではありますが、競合と比較してクオリティが非常に高いのが特徴です。サービスクオリティも技術レベルも高く、原材料や開発しているPB(プライベートブランド)商品も含めてこだわっています。

それに加えて、ECで体験価値を高める取り組みもしていますね。お客様のニーズに応え続けているので、リピート率が高い。出店をしてもお客様が来続けてくださる環境を作ることができました。

もちろんボトルネックとして人材と資金の課題はありますが、着々と資金調達を進めつつ、長く楽しく働ける環境を作ることで採用競争力を維持し、これだけの出店を実現できています。

キャッシュフロー創出力を強みにしたハイブリッド調達

──今回の資金調達の背景と目的について教えてください。

高橋氏: 基本的には出店ですね。ただ出店するだけでなく、お客様にとってちゃんと便利で手軽な状態を実現していきたいと思っています。

「プロのヘアカラー」と言っている以上、クオリティも高めながら、お客様にとって使いやすい状態を実現しつつ、システムもうまく進化させていきます。

──今回、エクイティとデットのハイブリッド調達をされましたが、その戦略的理由は。

岡本氏:今回の調達では、エクイティよりもデットのポーションの方が格段に多くなっています。

主力の店舗ビジネス「fufu」は、リピート客が中心であり、再現性高く出店して拡張していけるビジネスモデルです。そのためキャッシュフローの予見可能性が非常に高く、デットとの親和性が高い。「fufu」はお客様が来続けてくださる基盤を持っています。その基盤を活用しながら「fufu+」を伸ばしていく事業をしています。

成長のカーブを立てていく部分に関してはエクイティとの親和性が高いですね。全体のポートフォリオを考えながら、ハイブリッドで調達した形です。

──今後どのように株主と連携されていきたいですか。

岡本氏: お客様とのタッチポイントを持っていることを強みに、事業会社との連携を進めていく予定です。

例えばメーカーとは、商品を共同開発し、お客様に使っていただいて体験していただき、そのフィードバックをデータとして蓄積することができます。

それに加えて、現在は全国約150店舗で約750人の美容師が働いているので、その美容師のフィードバックもデータとして蓄積することができる。よりお客様が求めるもの、マーケットが求めるものを開発する近道だと考えています。

私たちはメーカーが持っていないデータを提供できますし、逆に私たちには研究開発のラボがない。お互いに持っていないものを補いながら、メーカーの研究開発力を活用して商品やサービスを共同開発することが可能です。中長期的な目線で考えて、一緒に成長できるパートナーとしての連携を進めていこうと考えています。

3年で100店舗出店、アジア展開も加速

──今後の成長戦略や展望について教えてください。

岡本氏: 定量的には、3年間で100店舗の出店を目指します。国内はもちろんですが、タイでは現在2店舗がオープンし、3店舗目の出店準備を進めているところです。これから海外展開も加速していきたいと考えており、具体的には東アジアの黒髪の文化圏で経済の成熟度が一定程度高いところをターゲットに据えています。

そのほかは基本的にOMO事業として、オフラインでお客様とタッチポイントを持ちつつ、オンラインでもサービスや商品を提供し続けることで成長を目指しています。

基本的に私たちはお客様のニーズのある商品に関してはどんどんPB化を進めていて、現状でシャンプー、トリートメント、オイルなどをすでに開発し、店舗でも使っていますし、お客様にも提供中です。それに加えて、お客様のニーズが確認できて、私たちが作る意味があるものに関しては積極的にPB化を行います。

プライベートブランド「fufu care」のシャンプー・トリートメント写真
プライベートブランド「fufu care」のシャンプー・トリートメント

ある意味、DtoC事業のような要素もあると思っていて。リアルな店舗を通したお客様との接点を持っていることでお客様のニーズを捉え続けることができ、fufuにお客様が来店し続けて下さるのでダイレクトに販売する事もできる。商品開発力もさまざまなパートナーと一緒に強化することができる。そういったところを広げていこうと考えています。

高橋氏: 私たちがやっているのは、より多くのお客様に可能な限り良いサービスを、プロが日本全国で提供するということです。「青山のトップサロンで、数万円という価格で、1日数人に限定して施術する」というのとは真逆のことをやりたい。

今回調達させていただいた資金を活用し、店舗数を拡大しながら、よりお客様にとって手軽なサービスになるように、働くスタッフにとって長く楽しく働ける職場であるように、改善を積み重ねていきます。

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