株式会社LOOV

インタラクティブ動画を活用し、営業や採用などにおけるプレゼンテーションや説明業務の自動化を行うSaaSを提供する株式会社LOOVは、プレシリーズAラウンドにて第三者割当増資による資金調達実施を発表した。2024年12月にはシードラウンドでの1.2億円の資金調達を発表しており、今回で累計の調達額は3.5億円に達した。
今回のラウンドには、Global Brain、One Capital、HAKOBUNE、IHVCの4社が参加。
同社が提供する「LOOV」は、対話型パーソナライズ動画ソリューション。顧客のニーズに合わせてプレゼンの内容を自動で最適化し、営業活動のDXを支援する。CRMとの連携も可能だ。

サービス開始から2年で導入は150社を超えた。これまでセールス・マーケティング領域を中心にサポートしていた同サービスだが、直近ではカスタマーサクセスやHR領域にも活用の幅を広げている。
今回の資金調達と合わせ、LOOVはAIを活用した新機能を複数リリース。プレゼンの流れを自動生成する機能や、視聴者の反応データを活用したユーザー誘導などの機能を追加した。導入は月額9万円から。
今回の資金調達に際し、代表取締役CEOの内田 雅人氏に事業や今後の展望について詳しく伺った。
顧客ごとにパーソナライズ化したプレゼンを自動で
ーーLOOVについて教えてください。
内田氏:一言で言えば、営業の現場で“人の代わりに話してくれる”動画ツールです。顧客の業種や担当者の職種に合わせ、その人にとって最適なプレゼンを提供します。これまで営業担当それぞれが顧客ニーズに合わせて行っていた説明を、動画を用いて自動化する点が特徴です。
例えば、動画の再生中には事前に設定した質問を投げかけ、その回答結果によって次に再生するコンテンツを変化させることが可能です。ヒアリングの結果によっては日程調整ツールなど外部ツールとの連携も行い、スムーズな商談フローを実現できます。

営業担当者が事前に録画した実写の動画だけではなく、生成AIを活用したデジタルヒューマン(仮想人物)による動画も作成できるようになっています。
ーーセールス領域での利用が特に進んでいる印象です。
大きく二つの用途に分かれます。一つ目が、初回商談前に動画を顧客に送っていただく、というものです。多くの場合、初回商談の半分以上が会社紹介やサービス説明に費やされています。その説明を事前に動画で済ませておくことで、初回の商談ではヒアリングやクロージングから話を進めることができるんです。結果として、案件化率向上にもつながります。
二つ目が、商談後のクロージングの場面。現場の担当者が前向きでも、上司への説明がうまくいかず、失注してしまうことがよくあるんです。そういった場合に、上司の役職や部門に合わせた動画を用意して渡すことで、より説得力のある提案を後押しできます。
ーー導入企業の主な業界は。
無形商材を扱う企業が顧客の9割を占めています。SaaSベンダーやBPO(業務委託)系の企業が多いですね。特にBPOは、テキストだけではサービスの差別化が難しい業界です。そのため、人の言葉で補足できる動画との相性がいいんです。競合との違いが資料だけではわかりにくかったり、人の温かみを感じづらいサービスほど、LOOVとの親和性が高いと感じています。
動画活用が拡がる背景にある“意識と技術”の変化
ーー動画で製品を説明することで、顧客の理解度も変わりそうです。
やはり、文字よりも動画のほうが便利だと感じる層が増えてきたのだと思います。インターネットが使いやすくなったことや、デジタルネイティブのZ世代が社会人になったことで動画の需要が確実に増えています。
だからこそ、「資料請求をしてPDFを見る」といった従来の流れに加え、「動画でプレゼンを見る」という選択肢を設けることが、企業にとって今後重要になると思っています。資料のみではアプローチしきれなかった層に対して、動画が新たな接点となり得る。その可能性が、動画の活用を後押ししています。
非効率を脱せよ──営業時代の原体験からプロダクトを着想
ーー創業経緯について教えてください。
学生時代から、起業したいという思いはぼんやりと持っていました。祖父や父が経営者であったことも影響しているのだと思います。スタートアップとして尖った事業をやりたいというよりも、自分で何か事業を起こしたい、という気持ちが強かったですね。
とはいえ、一度社会に出ないとわからないことも多いだろうという思いもあり、当時ベンチャー企業であったイノベーションに新卒で入社しました。上場のタイミングでロードショー(機関投資家に対して行う説明会)に携わり、事業開発やサービスのグロースを経験した後、独立してLOOVを設立しました。
ーー事業アイデアはどのように着想したのでしょうか。
創業時からプロダクトのアイデアはありました。ですが、その時点ではアイデアしかもっていなかったので、1年かけてPoC(概念実証)やマーケティング体制を整え、事業を本格的にスタートさせました。
事業については欧米を参考にした部分もありつつ、アイデアとしては原体験から来ているところが大きいです。私が営業職に就いていた時に感じていたのは、「新規営業は一日に何度も同じ説明を繰り返さなければいけない」ということ。もっと無駄を省いてクリエイティブな業務に時間を割くべきだなと思って。営業を魅力ある仕事だと思っていたからこそ、強い課題意識を抱いたんです。そのような無駄をなくしたいと思い、LOOVの開発に着手しました。
ーー今回調達した資金の使途は。
主にプロダクトの多角化と機能の拡充に充当します。CSやHR領域への展開を強化すると同時に、人材採用も強化します。現在はフルコミットのメンバーが10名、業務委託を含めると35名程度の会社なのですが、年内にはフルコミットメンバーを20名くらいにまで増やしていきます。
また、資金調達のプレスリリースと合わせてAIを活用した機能もリリースしました。これにより、最適なプレゼンシナリオやプレゼンそのものを自動で生成できるようになりますし、これまで以上に手軽に利用できる「Video Agent」として、動画の利活用を推進していきたいと思います。

まず目指すはAIによる「リアルタイムプレゼン」
ーー今後の展望は。
まず実現したいのは、「デジタルヒューマンによるリアルタイムのプレゼン」です。今は質問の回答ごとにプレゼンのシナリオを用意する必要がありますが、これをAIで自動化したい。これまでに蓄積した、設問ごとの回答率といった各種データを活用すれば実現できるはずです。
この1年でAIが急速に発展したことにより、3年後や5年後に見据えていた展開を前倒しできています。まずはリアルタイムプレゼンを年内にリリースできるよう開発を進め、2026年3月末までに累計300社の導入を達成することが目標です。
我々は「顧客ごとにプレゼンを自動化する」という今までにない概念に焦点を当て、リーディングカンパニーとしての地位を形成したいと考えています。この領域はAIとの親和性が高く、今後も領域が拡大していくはずです。ぜひご注目いただければ幸いです。
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