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新素材で感染症対策、FiberCrazeが織りなす繊維産業の新時代

ファッション産業は、世界の温室効果ガス排出量の約10%を占め、工業用廃水の20%を排出するなど、環境負荷の非常に大きい産業とされている。※大量生産・大量消費の構造は、気候変動や資源枯渇に加え、社会的・労働的な課題とも深く結びついている。
一方で、サステナビリティを軸に産業構造そのものを再設計しようとするスタートアップの動きが加速している。リサイクル素材や植物由来の新素材開発、オンデマンド生産による在庫最適化、サプライチェーンの可視化、AIによるトレンド予測と需要予測、さらには循環型プラットフォームの構築まで、多様なアプローチが登場している。
近年では、グローバルファッションブランドもスタートアップとの協業を通じて、製造工程や販売モデルの見直しに着手し始めており、テックによる“脱ファストファッション”の潮流が産業全体に広がりつつある。欧州を中心とする規制強化(例:製品環境フットプリント、グリーンウォッシュ規制)もこうした動きに拍車をかけている。
本記事では、環境負荷を抑えつつ、ファッションの魅力と多様性を保ち続けるためにテクノロジーと仕組みを駆使する、サステナブルファッション関連スタートアップの最前線を紹介する。
企業HP:https://www.fibercraze.com/
繊維やフィルム素材に微細な多孔構造を付与する独自技術を核に、高機能性素材の開発を行う岐阜大学発のスタートアップ企業。同社の技術では、既存素材に数十ナノメートルの穴を後加工で形成し、その中にさまざまな成分を閉じ込めることで、成分の保持や粒子透過の制御、水・油の分離といった多機能性を実現している。
この技術により、防虫や保湿成分を含んだ高機能繊維や、液体吸着剤、分離膜などを製品化。感染症対策素材としての用途に加え、医療・バイオ・産業分野などへの応用が広がっている。
従来、繊維への機能付与にはマイクロカプセル加工が多く用いられていたが、その際のコーティングに使用されるポリマー(高分子材料)は、使用後に河川や海へ流出し、環境汚染の一因となることが懸念されていた。世界的にも規制の動きが強まるなか、FiberCrazeの技術はポリマーを用いずに機能性を実現できる「環境負荷の少ない新しい選択肢」として高く評価されている。
2024年4月には、マレーシアの最先端技術が集結するマラヤ大学に属する感染症研究センター、Tropical Infectious Diseases Research & Education Centre(TIDREC)との間で、感染症対策技術に関する共同研究の実施を目的としたMemorandum of Agreement(MoA)契約の締結を行った。
サステナブルな未来を提案するライフスタイルブランド「CASA FLINE」を展開。オーガニックコットンやリサイクル素材、再生可能資源、天然染料などを積極的に採用し、製造過程における環境負荷の低減に取り組む。さらに、ローカルメイドやクラフトマンシップを重視し、地域と共生するものづくりを推進。独自の10のエシカルポリシーに基づいた商品を、表参道の旗艦店とオンラインで販売している。
企業HP:https://www.cfcl.jp/
3Dコンピューター・ニッティング技術を中核に据え、裁断不要で廃棄物がほぼ出ない製法を用い、再生素材・認証素材を積極的に採用。時代に左右されない洗練されたデザイン(ソフィスティケーション)、快適な着心地と家庭洗濯可能な機能性(コンフォート&イージーケア)、環境負荷の低減と透明性の高いサプライチェーン(コンシャスネス)を三本柱に、現代生活のための衣服を追求している。
2025年7月には、同社が独自に策定・運用してきた評価ツール「SDGs Performance Guideline」をCFCL公式ウェブサイトにて公開した。
微生物発酵技術によって人工合成した構造タンパク質素材「Brewed Protein™」を開発・製造し、環境負荷の低い次世代バイオ素材としてファッションやモビリティなどへの応用を進める。耐久性と柔軟性を兼ね備えたこの素材は、「MOON PARKA」やPANGAIA、The North Face、Sacai、Woolrichなど多数ブランドと協業し、商業製品化・量産体制を構築。環境負荷の低減、循環型社会の実現、そして素材産業の構造転換に挑む。
2025年7月には、イタリアの繊維業界を代表する2社、高級糸メーカーのManifattura Sesia S.r.l.とテキスタイルメーカーのAchille Pinto S.p.A.と、新たなパートナーシップを締結した。
企業HP:http://www.komon-koubou.com/
国産テキスタイルブランド「小紋工房®」を展開する大阪発の繊維メーカー。全製品を国内工場で一貫生産し、少量多品種・小ロット対応によって廃棄ロスを抑えるなど、サステナブルな生産体制を構築する。北陸・京都・西脇など地域に根ざした地場産業と連携し、地産地消型のものづくりを推進する。約35,000点を超える国産生地を在庫し、迅速出荷による過剰在庫回避にも取り組む。伝統技術と現代的な感性を融合させ、環境と共存する持続可能な繊維産業を目指している。
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