メンタルヘルスアプリを開発する株式会社AwarefyがプレシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による約2.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ANRI、epiST Ventures、オールアバウト、デジタルヘルスファンド大阪、博報堂DYベンチャーズ、モバイル・インターネットキャピタルの6社。
今回の資金調達により、生成AIを活用した機能の拡充や、専門家や医療機関との連携を強化する医療機器アプリの開発を目指す。
認知行動療法に基づくメンタルヘルスケアアプリ
同社が提供する「Awarefy」は、「ストレスに負けないスキルが身につく」をコンセプトとしたスマホアプリだ。生活の中で起きている困りごとに対して、主に考えや行動に働きかけることで問題解決を目指す、認知行動療法をベースとした実践型プログラムやツールをアプリ内で提供している。
認知行動療法は練習を繰り返すことで、思考パターンや行動パターンを変える精神療法で、さまざまな分野で実績があり、学術的・医学的にも注目されている。
毎日の感情やできごとなどをアプリ上で登録することで、自分の感情の状態を客観的に可視化する。状態に合わせて、専門家が作成したワーク形式のプログラムが提供されており、1日15分程度のワークで心をケアするスキルを身につけることが可能だ。
また、AI技術をベースとしたチャットボット機能を搭載している。「誰かに話を聞いてほしい」と感じるユーザーの体験を高めている。過去に精神疾患を経験した人が再発防止を目指す「三次予防」を主な目的に、30代から40代の女性が多く利用する。
2023年7月末時点で、ダウンロード数は35万を超える。基本機能を無料で使えるプランに加え、認知行動療法プログラムを利用可能な有料プランや充実したAI機能を利用できるなど、複数の料金プランを提供。
今後は、幅広い層に向けてアプリの提供を進め、2024年中に100万ダウンロードの達成を目標とする。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 小川 晋一朗氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
心を健康に保つセルフケアの重要性
―― メンタルヘルスに関する現状や課題について教えてください。
小川氏:精神疾患を抱える患者は年々増加しており、2017年では約419万人とされています。デジタル化社会の進展で他人との比較が容易になったことや、新型コロナウイルスの流行が、精神疾患の患者が増加した要因として挙げられています。
さらに、うつ病の可能性がある患者の約75%は、病院での治療を受けていないとも言われています。心が疲れていてもどのタイミングで受診すべきかわからないことや、実際にうつ病だと診断されること、薬に対する恐怖心などにより、中々積極的な医療機関の受診がされていません。
セルフケアの意識も徐々に高まってきていますが、まだまだ一般的なレベルになっているとは言い難い状況です。
―― Awarefy開発のきっかけを教えてください。
日々生きていると、誰もがプレッシャーの中でも楽しく取り組める時もあれば、些細なことでも辛さを感じることがあると思います。以前から、どのような行動や考え方をすれば乗り越えられるかということに関心があり、ストレスでつらくなってしまう人とそうでない人の差は何かと模索していました。
元々はリクルートやビズリーチでデータサイエンティストとして従事し、ビズリーチでは新規事業立ち上げにも携わりました。以前から事業づくりをしたいという思いがあり、実際の事業立ち上げの経験から、さらに自分の世界観や考えを反映させた事業を作りたいという思いを持ち、起業に至りました。
そんな中で、現在共同研究している熊野宏昭先生との出会いをきっかけに、学術的な領域で考え方や行動の仕方を変える方法として認知行動療法というものがあると知り、自分がこれまで探していたものはこれだと感じました。
これまでの自身の事業づくりやデータ分析の知見を活かし、認知行動療法をデジタルに落とし込んだサービスを作ることにチャレンジしたいと思ったことが、Awartefyの開発のきっかけです。
心のセルフケアを当たり前に
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
これまで、精神疾患の再発防止を目的として使ってくださるユーザーが多かったですが、さらに幅広い層に価値を届けていきます。これから病気になる可能性のある人や、既に疾患を抱えている人に価値を届けるために法人向けサービスや、専門家や医療機関との連携を強化する医療機器アプリの開発に取り組みます。
また、AIを活用した機能も開発を進めており、想像以上にポジティブな反応をいただいています。ユーザーの要望に合わせて、AIを多く利用することができる「AI+プラン」を8月にリリースしました。AIと組み合わせることで、データを基にした最適なケアを提供できるよう機能を拡充していきます。
今後の事業をしっかりと作っていくためのキーマンを中心とした採用も予定しており、これらを達成していくための資金として調達を行いました。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
心の健康の課題に悩む方々が、何をすべきか迷ったり、医療機関やカウンセリングに行くことに抵抗を感じる際に、手軽にセルフケアできるデジタルメンタルケアプラットフォームを目指しています。2024年中には、累計100万ダウンロードの達成が目標です。
また、不眠症向け治療用アプリの臨床研究も進めていきます。認知行動療法は多くの疾患に対して効果的であることもわかっているので、不眠症を足掛かりに、精神疾患の各領域においてデジタルな治療を提供していけるよう取り組みます。
メンタルヘルス分野への関心は高まっている一方、優秀なビジネスモデルはまだ確立されていないと考えています。参入している企業も多いですが、まずはさまざまな事業者や投資家と議論しながら、業界全体を盛り上げることに貢献していきたいと思います。
株式会社Awarefy
株式会社Awarefyは、メンタルケア支援アプリ『Awarefy』を運営する企業。 『Awarefy』では、利用者が入力した感情や体調の変化がレポートとして可視化されることで、利用者は自身の精神状態を知ることができる。また同アプリ内で、公認心理師が監修した音声ガイドを視聴できる。
代表者名 | 小川晋一郎 |
設立日 | 2018年3月2日 |
住所 | 東京都新宿区新宿2丁目5番12号 |