日本の研究開発を底上げ、リソースシェアリングで切り開く新時代

日本の研究開発を底上げ、リソースシェアリングで切り開く新時代

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KEPPLE編集部


2022年11月、政府により策定された「スタートアップ育成5か年計画」では、研究開発領域における人材育成や環境整備の重要性について謳われている。革新的な技術により新たな産業を生み出すことが期待される一方、研究開発は事業化までのリードタイムの長さや費用の面から、結果を出すことの難しさも指摘されている。

そのような課題を払拭すべく、研究開発のためのリソースシェアリング事業を運営する東北大学発ベンチャーが、株式会社Co-LABO MAKERだ。このたび、シリーズAラウンドにて、第三者割当増資による1.9億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、アズワン、ディープコア、QBキャピタル、Kips、ガバナンス・パートナーズ、他一部既存投資家である。

今回の資金調達により、提携ラボ獲得による対応地域・キャパシティの拡大、および顧客獲得のための体制強化を図り、アズワン社との協業によるサービス開発、ディープテックスタートアップ振興のためのPoC支援機能強化を進める。

研究開発の未来を切り拓くプラットフォーム

同社が運営する「Co-LABO MAKER」は、研究したい研究者と研究リソースを持つラボ(研究所)をマッチングし、機動的な研究開発を支援する研究開発リソースシェアリングプラットフォームだ。

Co-LABO MAKERを通して、大学の研究室等は、保有している設備や人材・技術をリソースとして提供し、資金獲得・連携先獲得・研究成果獲得の機会を得ることができる。利用者である企業等は、自社に設備や技術がなくても外部のリソースを活用することで、短期間かつ低予算で速く研究開発を進めることが可能となる。また、設備・技術の探索だけでなく、契約条件を含めた調整を同社が担うことで、研究開発関連の受発注の手間を大幅に削減できる。


現在、全国300件以上のラボを中心に、5000件以上の研究リソースの登録があり、大手メーカーから一般企業、学校、団体など、400件以上のマッチングを実現している。

今回の資金調達に際して、代表取締役 古谷 優貴氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

現場での経験から生まれた課題解決アイデア

―― これまで、日本における研究開発分野にはどのような課題がありましたか?

古谷氏:まず大学においては、影響力のある論文をどれだけ発表できたかが評価のポイントになりますが、日本では他の先進国が論文発表数を伸ばしている一方で、その数が減少傾向にあります。その背景には、政府による国公立大の運営交付金削減と自治の要求で、大学側の経営が難しくなっていることや、研究者が一般企業で活躍するための道筋が限られていることなどが挙げられ、大学における研究開発には人材や資金の面でいろいろと課題が見受けられます。

企業においても、研究所の設立や維持には多額の資金が必要であり、研究に対する成果がすぐに得られない場合、縮小や閉鎖されることも少なくありません。また、新しいアイデアや提案を通すまでの意思決定に時間がかかり、海外企業に比べても柔軟性やスピード感が不足しているという傾向があります。その結果、競争力を維持するのが難しい構図が生まれているのも、課題の一つだと思います。

―― Co-LABO MAKERをはじめようと思われたきっかけは?

私自身、東北大学工学研究科を卒業後、 昭和電工(現:レゾナック)でパワー半導体(SiC)の研究開発・事業立ち上げに携わっていました。研究を続けていく中で、現場での課題に気付き、それを解決できればいいなという思いがありました。同時に、研究以外の分野にも少しチャレンジしてみようと考え、アイデアの投稿やビジネスコンテストにも参加するようになりました。

その中の一つに、実際にプロダクトを作成して検証するという企画があり、研究開発のシェアリングビジネスについてヒアリングをしたり、LPを作って公開したところ、非常に大きな反響がありました。LPを出して二ヶ月で月刊事業構想に取り上げていただいたり、実際に新規事業として立ち上げないかとお声がけをいただいたこともあり、自分がやるべきだと実感しました。

もしこのアイデアを実現できるなら、世の中が変わると確信し、挑戦してみようと決意したことがきっかけです。

代表取締役 古谷 優貴氏

開発スピード向上と事業化の成功へ

―― 御社のサービスを事業化できたポイントについて教えてください。

私自身が研究者として、大学の研究室から、大手企業やベンチャーの研究部門まで、幅広い組織で経験を積んできたことが強みだと考えています。資金豊富な環境もあれば、資金不足の現場も見てきました。これまでの経験から、最初からある程度現場のニーズを汲み取ったうえで、事業をスタートできたのは大きかったと思います。

とはいえ、壁にぶつかることも多々ありましたが、研究開発的アプローチを用いて、駄目だった場合は理由と条件を分析し、新たな仮説を立てて何度も思考錯誤を重ねました。その結果、あらゆる課題を突破して成功への道を見つけ出すことができたという点も、事業化につながったと考えています。

―― 御社のサービスが普及した先の社会や消費者のメリットについて教えてください。

まずは、圧倒的に研究開発のスピードが上がることが大きなメリットです。本当に実施すべき研究開発を、必要性に基づいて迅速に進めることができるようになります。

そして、素早く研究開発が進むことで研究者だけではなく、企業側にとっても事業化が成功しやすくなるということも見込まれます。研究開発による良質なプロダクトが生まれやすい環境を作れるようになるので、社会全体の課題解決が進むことにもつながります。

さらに、リソースを提供するラボ側にとっては、資金の獲得だけでなく、事業連携先や人材の育成にもつながっていると喜ばれていますので、業界全体の底上げにも貢献できると考えています。

ディープテック支援など新たな領域への展開を目指す

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

以前は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、移動が制限されていたため、運営に課題がありました。しかし、コロナ禍が収束に向かい、大学との連携を強化できる状況になり、登録ラボの数も右肩上がりで増加しています。このため、よりアクセルを踏んで、さらなる事業拡大を目指すために資金調達を実施しました。

主には、ビジネスの中核を担うマネージャーと登録ラボ数をさらに増やすための人材の採用を強化します。新規のラボ獲得のため、大学や研究所との対話を適切に進め、継続的なパートナーシップを築くことのできる能力を持つ人材を求め、10名程度の増員を計画しています。

―― アズワン社との協業にはどのような背景や狙いがあるのでしょうか?

アズワン社には、サービス開始当初からお声がけいただき、サポートしていただいています。同社は、研究開発製品の販売だけでなく、研究者を支援する事業にも取り組みはじめられており、私たちと目指す方向が同じだということもあって、よくコミュニケーションを取らせていただいていました。

私たちは、ラボのシェアリングにおけるノウハウは持っていますが、人的リソースや知名度、ブランディングにはまだ課題があります。一方で、アズワン社は大規模なネットワークを持ち、強力なブランド力を有していますが、シェアリングビジネスは手がけていません。お互いの強みを最大限に活用し共有することで、さらなる事業拡大を目指すために、このたびの協業に至りました。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

まずは、迅速により多くの登録ラボの獲得を目指し、企業との連携を通じて、シェアリングプラットフォーム事業を拡大していきます。

さらに、ラボと企業の研究開発データを収集し、それらを活かして新たなビジネス領域を開拓することも目指しています。また、ディープテックスタートアップの支援事業も検討中です。スタートアップへの直接的な支援だけではなく、ディープテック分野のVCやアクセラレータなど、支援者に対してもサポートを後押しするような取り組みを行っていきたいと考えています。

私たちは、これからの研究開発領域の当たり前を作っていける、社会的かつ経済的な価値を高められるような事業を行っています。何かに挑戦し、成し遂げたいという思いがある方にとっては大きな可能性を感じていただけるビジネスだと思いますので、ぜひお声がけいただければ嬉しいです。

株式会社Co-LABO MAKER

株式会社Co-LABO MAKERは、実験機器シェアリングプラットフォーム「Co-LABO MAKER」を提供している企業。 「Co-LABO MAKER」は、時間や日単位で、利用できる研究機器や技術を提供してくれる組織を日本中からマッチングするシェアリングプラットフォーム。1機器1時間から利用可能で、損害賠償責任を補償する保険サービスも行っている。 当サービスは、「第2回MVPアワード」優秀賞や「BRAVEアクセラレーションプログラム」TECH LAB PAAK賞などの受賞歴を持つ。 研究開発の民主化による、誰もがやりたい実験を行える社会の実現を目指している。

代表者名古谷優貴
設立日2017年4月7日
住所宮城県仙台市青葉区国分町1丁目4-9enspace
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