PLAINER株式会社

PLAINER株式会社は、シリーズAラウンドで第三者割当増資による約4億円の資金調達を実施した。Angel Bridgeをリード投資家とし、エル・ティー・エス、ALL STAR SAAS FUND、サイバーエージェント・キャピタル、みずほキャピタル、MIRAISEなど複数の新規・既存投資家が参加した。この調達により累計調達額は約5.7億円となった。
2019年設立のPLAINERは、ソフトウェアの価値や機能を体験型コンテンツとして伝えるノーコードデモプラットフォーム「PLAINER」を展開している。同サービスは、SaaSプロダクトの特長や使用感をオンラインデモやインタラクティブな動画コンテンツとして、専門的な開発スキルを持たない担当者でも簡単に作成できる点が特徴である。従来、SaaSやITプロダクトの提案活動では、テキストや静的な資料のみで製品の差別化要素や利用シーンを伝えることに限界があった。これにより、見込み顧客の意思決定を後押しする難しさや、導入後の活用促進に課題が残っていた。
このような背景から、SaaS企業の多くでコンバージョン率(CVR)の頭打ち、社内外への新機能伝達の非効率、個別提案作成の工数増加が課題となっていた。PLAINERが提供する体験型デモは、こうした課題の解消手段として導入が進んでいる。実際にPLAINERを導入した企業では、CVRやリード獲得数の向上、商談化率や受注リードタイムの短縮といったKPIの改善が観測されている。サービス開始からfreeeなどの上場企業を含め、業種を問わずPLAINERの活用が広がり、デモを閲覧したエンドユーザーは累計で150万人を突破している。利用目的は見込み顧客への価値訴求にとどまらず、既存顧客へのアップセル、パートナー営業支援、サポート業務の効率化など多岐にわたる。
代表取締役の小林大氏は、freeeでモバイル事業責任者を務めた経験を持つ。2019年にPLAINERを創業し、体験型のプロダクトコミュニケーションが契約率向上に寄与するという前職での分析結果をきっかけに、誰でも容易にデモ環境を提供できるプラットフォームの立ち上げに至った。現在はfreeeやSansanの出身者を中心としたメンバーが開発・事業推進に参画し、組織基盤を強化している。
SaaS市場では、製品の多機能化や新規サービスの増加によって、導入検討プロセスの複雑化が進んでいる。矢野経済研究所の調査によれば、2024年のクラウド基盤サービス市場規模は前年比118.1%の2兆2800億円、2028年には4兆4900億円に達すると予測されている。
こうした市場成長に伴い、サービス提供各社は「導入検討プロセスの効率化」や「顧客の自己解決促進」を競争力の源泉と位置付けている。しかし、実際には新機能の価値や操作方法の伝達、導入企業内での合意形成など、情報伝達にまつわる課題が依然として存在する。
米国では「Sales Enablement/Demo Platform」と呼ばれるSaaSカテゴリが、すでに複数社によって展開されている。一方、日本国内ではPLAINERが同分野で先行しており、2024年時点で競合は限られている(マツリカ社調査による)。
今回の資金調達は、AIを活用したデモ制作の自動化をはじめ、提供中のソフトウェアデモプラットフォーム「PLAINER」の機能拡充に充てる。また、ソフトウェアの購買・活用体験そのものを変革するべく、売り手と買い手をシームレスにつなぐ新たな製品・サービスの開発にも取り組む。あわせて、サービス拡大に向けて、営業・マーケティング・カスタマーサクセスといったビジネス組織の体制強化も進めていく方針だ。