関連記事
2023年のピッチイベントで優勝したスタートアップ10選

膝下末梢動脈疾患(Below-the-Knee Peripheral Arterial Disease: BTK PAD)領域に特化した医療機器の開発を行うGlobal Vascular株式会社が、シリーズBラウンドで10億円の資金調達を実施した。これにより、創業以来の累計調達額は27.7億円に達した。
今回の資金調達ラウンドには、Diamond Medino Capital、三菱UFJキャピタル、三井住友信託銀行、メディキットなど複数の事業会社やベンチャーキャピタルが参加した。
Global Vascularは2022年12月設立のスタートアップであり、膝下血管領域の治療機器開発に注力している。主力製品は、「フッ素添加ダイヤモンドライクカーボン(F-DLC)」コーティングを施したニッケルチタン製の薬剤溶出性ステントデリバリーシステムである。このコーティングは生体適合性が高く、ステントの長期血管開存性向上や安全性確保に寄与するものとされている。
実際の業務は、研究開発、非臨床試験、治験関連文書作成、規制当局(PMDAなど)との協議、薬事申請、保険収載準備、製造プロセスの設計・改善、品質保証など多岐にわたる。特に薬機法やQMS、GLP、GCPなど医療機器特有の規制対応が重要な役割を占めている。
代表取締役CEOの尾藤健太氏は、Hasebe Research Groupでポリマー研究を主導し、長年生体材料の研究開発に携わってきた。CTOの前川駿人氏は、ダイヤモンドナノコーティング分野における専門家である。両名はアカデミア発の医工連携経験を土台に共同創業し、技術の社会実装に取り組んでいる。設立時より、医療機器の製造・設計、治験運営、人材コンサルティングなど多様な領域の専門性を備えた少数精鋭の組織体制を構築してきた。Global Vascularは大学・研究機関発ベンチャーにも位置付けられる。
末梢動脈疾患は世界で2億人以上が罹患していると推定されており、高齢化や生活習慣病の増加に伴い患者数は増加傾向にある。特に膝下血管は細く、血流も遅いため再閉塞のリスクが高く、有効な治療デバイスの供給が課題とされてきた。この分野では米国や欧州の大手医療機器メーカーが主要な競合となっているが、日本発のスタートアップが研究開発から治験、承認取得、量産化まで一貫して推進する事例は少ない。
Global Vascularは2024年時点で米国GLP基準の非臨床試験を完了しており、今後は2027年にかけて、日本国内での治験と薬事承認を目指す計画である。今回の調達資金により、国内における探索的治験・検証的治験の実施、製造プロセスの最適化および量産体制の確立、米国を中心とした海外市場での規制対応および申請準備を進める計画だ。
これまでに、経済産業省「J-Startup」やForbes JAPAN「HEALTHCARE CREATION AWARD」Global賞、米国医学アカデミーの「Healthy Longevity Global Competition」Catalyst Phaseなど、国内外の複数プログラムに採択・受賞されている。AMED「橋渡し研究プログラム」の採択実績もあり、創業間もないながら業界内外で一定の評価を得てきた。
医療機器業界では、高度管理医療機器やバイオデバイスの市場がグローバルに成長を続けており、規制対応力や臨床エビデンスの構築力が競争の鍵となる。末梢動脈疾患分野においても、再閉塞リスクの低減や長期開存性といった技術課題に対する新規ソリューションが求められている。Global Vascularの動向は、今後の治験進捗や薬事承認、海外展開の推移が注目されるポイントだ。
スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします。
※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします
※配信はいつでも停止できます
投資活動のあらゆる情報を一元的に管理できる案件管理機能を中心に、社内外への報告資料の自動作成機能やダッシュボード機能をご提供。
スタートアップ企業の事業概要、時価総額、株主情報、役員情報など、幅広いデータをご提供。
ファンドの経理や決算、分配計算や監査法人対応、親会社へのレポーティングまで、幅広くご提供。
独自のデータベースと知見を活かして、スタートアップに特化した株価算定・投資検討デューデリジェンスをご提供。
事業方針の変更で売却ニーズを抱える事業会社、満期が近づくファンド等が保有するスタートアップの株式をダイレクトに買取。