クオトミー、資金調達で「OpeOne手術台帳」を軸に外科系医師のチーム医療DXを推進

クオトミー、資金調達で「OpeOne手術台帳」を軸に外科系医師のチーム医療DXを推進

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外科系チーム医療のDXを推進する株式会社クオトミーは、シード・エクステンションラウンドで、地域と人と未来、京都キャピタルパートナーズ、NOBUNAGAキャピタルビレッジ、Bio Engineering Capital、複数の個人投資家を引受先とし、1.5億円の資金調達を実施した。外科手術の周辺業務等をDXするクラウド型ツール「OpeOne(オペワン)シリーズ」の開発体制強化および事業展開の加速を目指す。

クオトミーは「医療者のポテンシャルを最大化し、健やかな医療をつくる」をミッションに掲げる。同社は医療従事者向けのプロダクト開発を行い、特に外科系医療現場の治療以外のノンコア業務効率化に注力している。現在の主力プロダクトは、外科系診療科の医師がいつでもどこでも症例情報を確認できる「OpeOne手術台帳」である。

代表取締役の大谷隼一氏は医師でもあり、整形外科医として約15年の臨床経験を持つ。2015年から2016年にかけてカリフォルニア大学サンフランシスコ校に留学。「サンフランシスコでAirbnbやUberといったプロダクトが生活をより豊かにしてくれることを実感した」と同氏は当時を振り返る。留学時の体験が、プロダクトにより日本の外科系医療の現場を変革するという着想につながり、帰国後の2017年にクオトミーを創業。5年間ほどは二足の草鞋を履き、都内の急性期病院で手術を執刀するなど臨床医として活動する傍ら、医療現場が抱える課題への高い解像度を活かしプロダクト開発を推進。2023年3月にメスを置き、「OpeOne」事業に専念することを決意した。

外科系医療はチーム医療であり、手術には医師、看護師、放射線技師など多職種の医療者間の連携が不可欠だ。そのため、手術準備の過程で非常に多くの調整や伝達事項が必要となる。しかし現場では、そういった調整に紙媒体やホワイトボードが多用されており、治療以外のノンコア業務に多くの工数がかかっている。また、早朝など勤務時間外に手術情報を医療者同士で共有する「カンファレンス」という会議が一般的に行われており、外科系医療者の時間外労働を助長しているという問題もある。さらに、外科系医師は手術台帳と呼ばれるノート等で手術のスケジュール等を管理しており、手術台帳を見ないと手術の予定やメンバーが確認できないという。

このような現状を、外科系医療者がより治療に専念できるように改革しようとしているのが、「OpeOne手術台帳」というクラウド型の「スマート手術台帳」だ。

「OpeOne手術台帳」は、外科系医療者が症例情報や手術のスケジュール、チームの稼働状況などをモバイル端末等で共有・確認することができるクラウド型システムである。従来はノートやExcel、ホワイトボードで分散して管理していた手術に関する情報を、チームのメンバーがいつでもどこでも一カ所で閲覧することができる。

外科系チーム医療DXのクラウド型ツール「OpeOne」のUI
OpeOne手術台帳では、さまざまな媒体に分散していた手術に関する情報を、ワンストップで共有することができる。

AI-OCR技術を活用し、電子カルテ上の手術の申し込み情報や紙伝票をカメラで読み取ると、患者名や術式などのテキストが自動的に入力され、関連する準備業務の伝達や管理が効率化される。忙しい現場で、医療者が情報を手入力をしなくても良いための工夫である。さらに、電子カルテのシステムと接続して医療情報を取得するわけではないため、マルウェア感染等による電子カルテサーバーへの情報セキュリティリスクが発生しないという。

※AIを活用したOCR(光学文字認識)技術のこと。紙書類や画像、PDFなどに含まれる文字を、デジタルテキストに変換する。AIを利用しているため、従来は難しかった手書き文字の認識性が比較的高い。

今回の資金調達により、クオトミーは「OpeOne」を単一プロダクトから、外科系チーム医療全体を支える「OpeOneシリーズ」へと発展させる。具体的には、外科系診療科にとどまらず、手術室や血管造影室、病院間連携、さらには中規模・地方病院の外勤医師との遠隔チーム医療に関連する機能の拡充を進める構えだ。

AI-OCR技術を活用したDXツール「OpeOne」の仕組み
OpeOneシリーズでは、手術準備に必要なチーム医療業務が、非同期的にクラウド管理できる。この特徴は、外勤(所属しているのとは別の病院で非常勤として働くこと)における外科系医師のノンコア業務課題の解決にもつながるという。

「地方病院に行くと、『大谷さん、DXよりもうちは専門的な外科系医師人材が必要なんだ』と言われることが多い」と大谷氏は語る。「まずは外勤という雇用形態から外科系医師の力を借りてはどうかと。自分も整形外科医として外勤先で手術をした経験があるが、手術症例の方針検討や手術準備に課題があった。OpeOneの進化で、遠隔での外科系チーム医療を可能とし、この課題を解消していきたい」地域の医療課題にも対応するため、地域拠点での採用も積極的に行う方針である。

大谷氏は今回の資金調達について、「弊社を力強く支えてくださる既存株主の皆さまに加え、OpeOne事業の推進に強い期待を寄せる新規投資家の皆さまにもご参画いただきました」とコメント。「クラウド化やモバイル化の波に乗り切れなかった多くの病院において、いまテクノロジーの進歩を背景に本格的な変革期が到来していると感じています。まずは最もインパクトの大きい外科系チーム医療から、病院の生産性向上に寄与する価値を提供してまいります」と述べ、OpeOneシリーズのさらなる展開を加速する意向を示した。

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