医療機関向けのクラウドサービスを提供する株式会社レイヤードが、第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、メディカル・データ・ビジョン、メディパルホールディングス、FFGベンチャービジネスパートナーズの3社。
今回の資金調達により、クリニックへのプロダクト導入を加速し、同社が持つ医療データの活用によるビジネス化を目指す。
医療機関と生活者をつなぐマルチプロダクトを提供
同社が提供するのは、「かかりつけ医」機能を持つクリニック向けの医療DX支援サービスだ。WEB問診の「Symview(シムビュー)」や、電話自動応答システムの「Iver(アイバー)」のほか、PRM※ツール(医療版CRM)の「Kakarite(カカリテ)」など、複数のプロダクトを企画・開発している。
※ Patient Relationship Management:患者関係性管理
同社が目指すのは、医療機関の業務効率化と患者の利便性向上、患者とのコミュニケーション支援、専門医や病院、在宅との医療連携。医療者と生活者の共通領域における複数のプロダクトを提供し、医療DXを支援することで、コロナ禍を経てより重要性を増した「かかりつけ医」機能の強化を推進する。
同社のプロダクトを導入している医療機関の数は現在約3,300ほど。今後は10万か所にのぼる全国の医療機関において、取りこぼしのない医療DX支援を目指す。
今回の資金調達に際して、代表取締役 毛塚 牧人氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
これからの医療は治療から予防中心の考え方へ
―― これまで、医療業界にはどのような課題がありましたか?
毛塚氏:日本の医療が抱える最大の課題は、年間で約45兆円といわれる膨大な医療費です。そんな中、医療業界にはパラダイムシフトが起きており、これまでの治療中心の考え方から、いかに入院手術をさせないかという予防・ケア重視へと変化しています。
そこで最も大きな役割を果たすのが、かかりつけ医です。かかりつけ医が、生活者である患者を常日頃からサポートして慢性疾患を含めた重症化予防ができれば、医療費の抑制につながります。当社は医療DXを通じて、かかりつけ医の推進を図ります。
―― 創業時の事業から方針を転換されたそうですが、その背景を教えてください。
私は前職から数えると、医療業界に18年携わっています。今から15年前、私が当社の代表を引き継いだタイミングで、創業の医療機関向けデジタルサイネージ事業から、現在のサービスビジネスへの転換を図りました。
かつては、医療といえば病院が王様で、開業医はあまり注目されていませんでした。医療は保険診療と保険点数がすべてなので、患者サービスには一切お金が回ってこない業界ですが、この先もずっとそうではないはずです。私には、お金になりにくい領域へ携わり続けることに、自分なりのこだわりがありました。患者が満足し納得しない限りは、医療を通じて患者が幸せになることはないと昔から思っています。そこで、現在の事業方針に舵を切りました。
医療DXで日本にかかりつけ医の定着を
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
コロナ禍以降、WEB問診の「Symview」を筆頭に、当社のプロダクトへのニーズが増えてきました。当社のこだわりは、プロダクトを継続的にリリースし、新しいジャンルを作ることです。医療業界が変化するスピードに合わせて、当社も新しいことに挑むべく今回の資金調達に至りました。
Symviewには、Web問診による月間100万件弱の医療データが登録されています。今回のメディカル・データ・ビジョンとの提携は、他の新プロダクトからも集まったさまざまな医療データを利活用し、ビジネス化を目指すものです。またメディパルホールディングスと提携することで全国のクリニックのDX化支援の体制を整え、FFGベンチャービジネスパートナーズとは、将来的な医療データとフィンテック領域の融合や、互いの地元である福岡を盛り上げたいという観点で提携しました。
主な使途は、当社ビジネスにとって重要なカスタマーサクセス向上のための投資です。特に、エンジニアやサポート部門の採用を強化したいと考えており、この先2年でエンジニアは現在の2倍に、組織全体では現在の1.5倍ほどに拡大をしたいと考えています。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
コロナ禍以前から予想されていましたが、今後、日本の医療を取り巻く環境は大きく変わります。超高齢化社会、生産人口の減少、デジタルシフトという3つの大きな変化は、医療機関の経営あるいは収益にインパクトを与えます。この変化に対して医療機関を支援するのが医療DXです。
政府は強力に医療DXを推進しています。厚生労働省は、データヘルス集中改革プランとして、患者自身が医療データを持ち歩ける世界で、データの利活用ができるようにすることを打ち出しています。加えて、首相を本部長とした医療DX推進本部も設置されました。
これまで医療の大きなセグメンテーションといえば薬と医療機器でしたが、これからはそこに3本目の柱としてテクノロジーが加わります。医療DX領域だけではなく、治療アプリなどのヘルステック業界でも市場が膨らんでいくはずです。
今までデジタル化を見逃されてきた医療業界ですが、この変化についていかなければ淘汰されてしまう医療機関も出てくるでしょう。当社は少人数体制のクリニックや病院をさまざまなプロダクトで支援し、日本におけるかかりつけ医の定着を最大のミッションと考えています。制度も絡むので時間はかかりますが、生活者が納得して医療を受けられ、かつ持続可能な医療提供体制づくりに貢献できるようサービス開発に取り組んでいきたいです。
株式会社レイヤード
株式会社レイヤードは、かかりつけ医の医療DXを支援するプロダクトを企画・開発する企業。 同社は、医療版CRMとなるPRM(慢性疾患患者管理)『Kakarite』を開発・運営する。 『Kakarite』は、かかりつけ医がもつ医療データの一元管理や、患者とのコミュニケーションを促進するツール。 そのほか同社では、来院前のWeb問診ツール『Symview』や、電話自動応答システム『Iver』などを開発・運営する。
代表者名 | 毛塚牧人 |
設立日 | 1998年7月15日 |
住所 | 福岡県福岡市博多区博多駅中央街8番27号 |