株式会社OPERe

病院向けデジタルコミュニケーションシステムを開発・提供する株式会社OPEReが、2025年6月にジャフコ グループ、DNX Ventures、Vertex Ventures Japanを引受先とした第三者割当増資によって、プレシリーズAラウンドで総額4億円の資金調達を実施した。調達資金は、病院内コミュニケーション支援の新機能開発や開発体制の強化に充てられる予定だ。
OPEReは2020年6月に創業。主力サービス「ポケさぽ」は、患者と医療従事者間の情報伝達や問診業務の効率化を目的としたクラウド型コミュニケーションプラットフォームを提供している。患者はスマートフォンやタブレットを利用して説明資料や動画を受け取ることができ、病院ごとの業務フローに合わせて動画や資料、リマインドメッセージなどを自動配信できる点が特徴となっている。サービスは急性期病院や産婦人科を中心に導入が進んでおり、2024年11月時点で70施設で利用されている。
「アナムネ・問診」機能では、患者が自宅から問診に回答できるほか、未回答時には自動でリマインドを送信する設計が採用されている。患者が入力した情報や医療機関が取得した画像データは、QRコードやPDFで電子カルテに転記できる仕組みも備わっている。また、動画やメッセージによる説明機能は多言語対応も進めており、説明の確実性や業務効率の向上を目指した運用が行われている。さらに、製薬会社や医療機器メーカー向けに、説明資材のデジタル化支援サービスへの展開も始まっている。
代表取締役CEOの澤田優香氏は、臨床現場で看護師として勤務した後、医療機関向けの業務分析やITシステム導入支援を行うコンサルティング会社で経験を積み、2020年にOPEReの創業メンバーとして立ち上げに参画した。現場で感じたコミュニケーションの非効率性や課題意識を背景に、経営と事業開発の中心的な役割を担ってきた。
日本の医療現場では、医師や看護師の長時間労働や慢性的な人手不足が課題となっている。2024年4月の医師の働き方改革関連法施行により、業務の分担やデジタル化(病院DX)の推進が喫緊の課題となった。診療報酬改定や少子高齢化の進行も重なり、医療機関では非対面・省力化に資するシステム投資が加速している。経済産業省の調査によれば2023年度の医療情報システム市場規模は、前年度比3.2%増の2974億円と推計され、2026年度には3027億円に成長すると予測されている。
この分野では、電子カルテベンダーが提供する院内コミュニケーションサービスや、スタートアップによる診療支援・情報共有プラットフォームなどが競合している。説明動画や自動リマインドなどの機能は全国的に普及しつつあるが、多言語対応や問診データのカルテ連携といったカスタマイズ性、運用サポート体制が導入の際の重要な要素となっている。
OPEReの「ポケさぽ」は、説明業務や問診業務の効率化に加え、医療従事者・患者双方にとっての情報の正確性や使いやすさを重視している。同社によれば、今回の資金調達によって開発体制の強化やカスタマーサクセス人員の拡充、プロダクトの動線設計や生成AI活用による改善にも取り組む方針だ。
今後は、病院と製薬会社・医療機器メーカーをつなぐプラットフォームとして、業界横断的なコミュニケーション最適化も視野に入れるという。