VRスタートアップMyDearest、約3.3億円調達ーー朝日新聞社との提携でIP開発・XR事業を拡大

VRスタートアップMyDearest、約3.3億円調達ーー朝日新聞社との提携でIP開発・XR事業を拡大

xfacebooklinkedInnoteline

オリジナルIPによるVRゲーム開発を手がけるMyDearest株式会社が、シリーズC追加ラウンドにおいて約3.3億円の資金調達を実施した。これによりシリーズC全体での累計調達額は約15億円となった。また、朝日新聞社との資本業務提携の締結も発表された。

MyDearestは2016年4月に設立されたスタートアップで、VR(仮想現実)領域におけるオリジナルIPの企画・開発やパブリッシングを主軸とする。「東京クロノス」「ALTDEUS: Beyond Chronos」「8番出口VR」「Brazen Blaze」などのタイトルを展開し、これらの作品はMeta Quest Storeで高いユーザー評価を得ている。国内外のゲームアワード受賞歴もあり、モバイルやPC、Meta Questを含む複数プラットフォームでの展開を進めている。さらに、MR(複合現実)コンテンツやVRChatワールドの制作など、企業向け(BtoB)領域にも事業を拡大している。

代表取締役CEOの岸上健人氏は、通信大手での法人営業経験を経て、アニメやライトノベルといったサブカルチャーへの関心とVR技術への興味から起業に至った。岸上氏は設立時から同社の事業戦略の中心を担っており、現在も代表を務めている。

世界的にVRおよびMR(複合現実)市場は拡大傾向にある。近年は「メタバース」や生成AIの普及を背景に、グローバルでの投資や事業拡大が活発化している。市場調査会社IDCによると、2022年のVRヘッドセット世界年間出荷台数は約880万台に達した。一方で、安価かつ高性能なデバイスの普及や、多様なIPによるユーザー層拡大、コンテンツの質と量の両面での開発力の強化が課題として指摘されてきた。

MyDearestはこれまで、国内外のユーザーから一定の評価を獲得している。日本発のVRコンテンツ企業として、グローバル市場でのIP開発・展開実績を有している点が特徴である。同分野では、Thirdverseやカヤックアキバスタジオなどが競合に挙げられる。

今回の資金調達ラウンドには、FFGベンチャービジネスパートナーズ、アイザック、阿波銀キャピタル、朝日新聞社などが参加した。企業によると、調達資金は主に二つの事業領域に充てる予定だ。

一つ目は、Meta Questを中心とした北米市場、とりわけ10代前半から中盤の「α世代」ユーザー向けIPパイプラインの強化である。直近でリリースした「Crowbar Climber」「Chained Escape」「Devil's Roulette」などの世界累計プレイヤー数は50万人を超え、その約7割が米国ユーザーだという。今後は2025年内に10本以上の新タイトルリリース体制の構築を目指す。

二つ目は、企業や自治体向けのVR/MRソリューションおよびVRコンテンツの事業拡大である。VRChatワールドの構築をワンストップで手がける「VRあそび事業部」の事業拡大を図るため、エンジニア・アートディレクターを中心とした人材採用を強化し、開発体制を拡充する方針だ。

資本業務提携を結んだ朝日新聞社とは、同社が保有するIPや報道・教育ネットワークを活用した共同開発、XR(クロスリアリティ)技術の研究分野で連携を進める予定となっている。具体的には、新聞社グループの歴史コンテンツや文化・教育分野でのVR/MR展開、報道事業へのXR技術活用の可能性などが検討されている。

MyDearestの今回の資金調達と提携は、日本発IPのグローバルVRゲーム市場展開、企業向けXRソリューション事業の拡張という二軸で事業の成長を図るものである。国内外でVR・XR産業が急速に発展する中、同社の今後の動向が期待される。

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

投資家向けサービス

スタートアップ向けサービス