気球から発射する小型ロケットで日本に宇宙輸送のインフラを──AstroX小田氏

気球から発射する小型ロケットで日本に宇宙輸送のインフラを──AstroX小田氏

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KEPPLE編集部

衛星軌道投入ロケットを開発するAstroXが、プレシリーズAラウンドにて第三者割当増資による4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、インクルージョン・ジャパン、ニッセイ・キャピタル、ANOBAKA、三菱UFJキャピタル、ベクトル、鎌田企画、ユナイテッド、Iceblue Fund、90s、Spring Star Capital 、morich、G-STARTUPファンド、および個人投資家。

今回の資金調達により、宇宙空間到達に向けたロケット開発と人材採用を強化する。

日本に宇宙輸送インフラを 小型ロケット開発を推進

米国を中心に民間企業の宇宙産業参入が続く中、2022年の日本における人工衛星の輸送ロケット打ち上げ成功は0機。増える人工衛星の打ち上げ需要が海外に流出している形だ。

AstroXが開発するのは、人工衛星を宇宙に送り出す小型輸送ロケット。輸送対象とするのは主に100kg以下の小型衛星だ。2025年度には高度100kmの宇宙空間、2028年度には高度500kmの衛星軌道への打ち上げ成功を目指す。

同社が開発するサブオービタルロケット「FOX」には、成層圏まで気球で運び、そこから空中発射を行う「ロックーン(Rockoon)」方式を採用している。高頻度・低コストの打ち上げを実現できるという。

開発ロケットイメージ

今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 小田 翔武氏に今後の展望などについて詳しく話を伺った。

日本が宇宙産業で存在感を示すのは今しかない

―― 御社が開発を進めるロケットについて教えてください。

 小田氏:宇宙に人工衛星を打ち上げる小型の輸送ロケットを開発しています。当社では、ロックーン方式とハイブリッドロケット技術を組み合わせることで、コスト削減と高頻度の打ち上げを可能にする点が特徴です。

ロックーン方式は、ロケットとバルーンを組み合わせた造語です。バルーンで成層圏(高度20km前後)までロケットを運び、そこから空中発射します。ロケットは高度10〜15キロの層を脱出するのに最もエネルギーを使い、事故のリスクも高いのです。空気のある層をバルーンで脱出を希求で持ち上げることで効率よく発射できるのが利点です。ハイブリッドロケットを採用することで、爆発の可能性も低く安全に利用できます。

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ロケットの打ち上げにはスペースポート(射場)が必要です。日本は土地が狭く、スペースポートを作れる場所が限られています。海沿いは飛行機や船の航路で混雑しており、打ち上げタイミングの確保も困難なのです。当社ロケットは場所に依存せず、高頻度な打ち上げができる点が大きな強みです。

―― 衛星軌道投入ロケット事業開始の背景は?

宇宙産業が盛り上がりを見せる中、小型衛星の打ち上げ需要が急増しています。打ち上げのための小型ロケットが日本には足りていません。米国ではSpaceXが圧倒的なシェアを握り、インフラを支配しています。このままではIT業界におけるGAFAのようにプラットフォームを抑えられ、日本が宇宙産業で勝てない国になってしまいます。

IT企業を経営していた際にそのことを痛感する中、宇宙産業において日本には大きな可能性があることを知りました。一方でロケットという重要なインフラが不足している。それでは産業をスケールすることはできません。自国でインフラを作ることで日本の宇宙産業を成長させたいと思い、AstroXを創業しました。

世界の小型衛星の打ち上げ実績

従来、宇宙開発は世界中で国家プロジェクトとして進められてきました。ただ、産業として推し進めるにはスピード感が足りない。NASAはさまざまな部分を民間に委託していて、その成功例の一つがSpaceXです。日本でも、JAXAが民間企業との連携を強化し、民間主導で産業を作っていくという方向に変わってきています。

宇宙開発は「夢物語」ではない

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

今回の調達資金は、主にロケット開発と人材の確保に充てます。ロケットの打ち上げといっても、エンジンの燃焼試験など多くの実験が不可欠でそのための費用も必要になります。

今年度中には、成層圏でロケットの姿勢制御装置の稼働試験を成功させることが目標です。その実現に向けて毎月1名ペースで新たな人材を採用し、チームを強化していきます。

超小型ハイブリッドロケット「kogitsune」の発射実験の様子
8月には超小型ハイブリッドロケット「kogitsune」の発射実験に成功した

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

現在開発を進めているのは高度100kmの宇宙空間に到達して返ってくるロケットです。2025年度までの成功を目指しています。その先には、高度500kmの衛星軌道に到達するロケットの打ち上げを2028年度までに達成することが大きな目標です。

まずは衛星をロケットに搭載して宇宙に持っていくのがビジネスの主軸ですが、ロケット開発の次のステップとして、輸送能力を活かした衛星データサービスの提供も長期的に構想をしています。

宇宙というと「夢があるね」と言われることが少なくありません。実際はそうではないんです。すでにビジネスチャンスが広がっている。もっと言えばこれからの3年、5年が勝負です。ここを逃すとまたもや世界で戦えなくなってしまいます。今が産業として非常に面白い中で、資金的な部分や協業など、多くの企業と連携しながら取り組んでいきたいと思います。

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