【開催レポート】Japan Summit 2026|未来を描く人と、現場を変える技術をつなぐ

【開催レポート】Japan Summit 2026|未来を描く人と、現場を変える技術をつなぐ

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KEPPLE編集部
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スタートアップと大企業などの共創をテーマとする「Japan Summit 2026」が、2026年10月21日・22日、東京都千代田区のTokyo Innovation Base(TIB)で開催された。主催はPlug and Play Japan株式会社。

今回のコンセプトは「Connect to What Matters―あなたの知恵が、誰かの価値に―」。AI時代の人間の役割や企業のAI活用に加え、モビリティ、ヘルスケア、金融、エネルギー、ディープテック、食など、幅広い分野のセッションが展開された。会場では、国内外のスタートアップによるピッチや製品の展示・デモも行われ、技術の社会実装や新たな事業創出に向けた取り組みが紹介された。

本稿では、取材したプログラムを中心に、議論の様子や登壇企業の取り組みをレポートする。

宮坂副知事、AI時代の働く意味に言及

オープニングで登壇した東京都副知事の宮坂 学氏

21日のオープニングでは、東京都副知事の宮坂 学氏が登壇した。宮坂氏は、仕事には収入だけでなく、生きがいや人とのつながりを得る役割もあると指摘。AIによる自動化が進む中で、雇用への対応とともに、人間にとって働く意味を考える必要があると語った。

その上で、各都市が直面する課題や取り組みを共有し、AIと人間の共存について議論する場を、東京からつくりたいとの考えを示した。

細田 守氏×田口 昂哉氏、AI時代に人間は何を探究するのか

左からPlug and Play Japan株式会社の西山 イサム氏、細田 守氏、田口 昂哉氏

基調対談「AI時代に、人類は何を探究するのか」には、アニメーション映画監督の細田 守氏と、株式会社Helical Fusion共同創業者、代表取締役CEOの田口 昂哉氏が登壇した。

対談では、人間とAIを対立する存在として捉える見方から、創作や起業を動かす意志、技術の進歩と人間の成長まで、幅広い議論が交わされた。細田氏は、AIも含めて社会が成り立つとの視点を示し、人間と技術の関係を二元論で捉えることに疑問を投げかけた。

創作や起業の動機については、2人が自身の経験を交えて語った。細田氏は、アイデアに心が動き、実現せずにはいられなくなる気持ちに言及。田口氏も、核融合による新たな未来を見たいとの思いが、起業の出発点にあったと振り返った。AIが多くの作業を担う時代に、人間の内側から生まれる関心や意志をどう大切にするかが論点となった。

さらに、未来を予測するだけでなく、自らつくる姿勢や、次の世代へ希望を伝える大人の役割にも話が及んだ。表現者と起業家の異なる立場から、技術の先にどのような社会を望むのかを考える対談となった。

Mobility & Physical AIのピッチに6社が登壇

当日は、金融やヘルスケアなど領域ごとにピッチセッションが開催された。そのうちの一つ「Startup Pitch(Mobility & Physical AI)」には、6社のスタートアップが登壇。空間のデータ活用、製造現場へのAI導入、設備の状態把握など、さまざまな課題に対する技術や事業が紹介された。

登壇企業

株式会社VISIONARIES777

XR(VRやARなどを含む技術の総称)やリアルタイム3D、デジタルツインを活用し、設計・製造・販売・保守などの業務を支援する企業。現実空間をデジタル上に再現し、教育研修や作業の案内、業務管理などに活用するソリューションを展開する。

ピッチでは、現実空間のデータをAIやロボットの学習に生かし、実際の作業から得た知見を再びデータへ戻す循環について紹介した。人とロボットが共通の空間情報を使う未来にも触れ、人の能力を引き出し、現場のノウハウを継承するための技術活用を語った。

株式会社ジオクリエイツ

VRや視線・脳波などのデータを用いて、建築や都市空間の体験を定量化するスタートアップ。設計者の経験則に頼りがちな空間づくりに、利用者の感情や行動のデータを取り入れ、設計の判断を支援する。

ピッチでは、天井の高さや窓、店舗の商品配置などが、人の感じ方や行動に及ぼす影響を検証する取り組みを紹介した。防災分野では、VRを使ったバーチャル避難訓練や、画像から危険箇所を判定する防火防災診断AIにも言及。空間のデータを、設計から日々の安全確保まで幅広く生かす可能性を示した。

キュービットインサイト

製造業に特化したAIエージェントを提供するスタートアップ。製造やサプライチェーンなど、全社共通の業務効率化ツールだけでは対応が難しい領域を対象に、現場の課題整理から製品のカスタマイズ、導入まで支援する。

ピッチでは、現場ごとに業務の進め方や課題が異なる点を挙げ、エンジニアが現地に入り、担当者とともに改善の対象を見極める支援方法を説明した。 

可視化や分析、業務の自動化といった機能を各現場に合わせ、AIの導入を事業上の効果につなげる方針を紹介した。

SYNRA株式会社

高速カメラとAIを活用し、肉眼では見えない微細な振動を非接触で計測・可視化する、広島大学発のスタートアップ。橋梁や工場の配管・タンクなどを対象に、振動の変化から設備の状態や異常の予兆を捉える技術を開発する。

ピッチでは、橋梁のたわみや、自動車のシートの揺れなどの計測例が紹介された。センサーを取り付けると動きが変わる柔らかい対象や、稼働を止めにくい設備にも触れ、従来の点検・計測を補う技術として、保守点検や研究開発への応用を示した。

Flexound Audio Oy

音と振動を同じ音源から生み出し、耳と身体の両方で音を感じる体験を提供するフィンランド発のスタートアップ。自閉症の子ども向けのセラピーツールを出発点に、映画館や家庭、ゲーム、自動車などへ用途を広げてきた経緯が紹介された。 

ピッチでは、自動車の車室空間での活用を中心に紹介した。座席ごとに異なる音を届ける音響体験に加え、運転者への警告やリラクゼーションなどにも応用を提案。日本の映画館への導入にも触れ、自動車メーカーやシートメーカーなどとの実証への関心を示した。

Foundation EGI

設計・製造向けの汎用AIを開発するアメリカ発のスタートアップ。製品の複雑さが増す中で、設計、工程計画、アフターサービスまで、製品のライフサイクル全体でエンジニアの業務を支えることを目指す。

ピッチでは、3Dモデルを基に技術文書や製造工程を生成するほか、設計用の部品表を製造・保守向けの部品表へ変換する例が紹介された。設計データを後工程でも活用し、部門や業務の間で生じる手作業や情報の受け渡しを、AIで支援する構想を示した。

その他のピッチ登壇企業・チーム

AI Center of Excellence
Sakana AI株式会社、First Recon AI、KAGUYA株式会社、株式会社ARCRA、株式会社エーアイ・アンド、株式会社Kikuvi、株式会社天地人

Financial Services
Max Now Pte. Ltd.、株式会社Tsukumo Labs、Canopy Inc.、トモロウ

Health
クオリィ株式会社、Ubie株式会社、トレジェムバイオファーマ株式会社、株式会社坪田ラボ

Food & Beverage
Armored Fresh Inc.、NoMy Japan株式会社、Fermentation Technologies Ltd、株式会社ファーメンステーション、カスフル株式会社、株式会社TREASURE IN STOMACH、株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ、ImpacFat Pte. Ltd.、インテグリカルチャー株式会社、株式会社オルガノイドファーム

Deeptech
ディーウェザー株式会社、LiSTie株式会社、株式会社カルマリオン

Energy
Janta Power、FloatSync、アティエーラ株式会社、株式会社Solafune、株式会社TerraInsight、Quon Energy、株式会社Greenphard Energy、株式会社バイオーム、株式会社TOWING

韓国ディープテック・素材イノベーターによるショーケース&ピッチ
AGEON、ANP CORPORATION、BIEUNGDODEUNGDAEGA、FluentT、GINNOLAB

韓国ヘルスケア・ライフスタイル分野のピッチ
IL JEWELRY、MetaDx、Munice、Nature Trace、SIGNALCARE

※その他のピッチ登壇企業・チームは、主催者の公式プログラムに基づく。 

ヒューマノイドに求められるのは、現場の仕事を担う力

22日に行われたセッション「Physical AI Goes to Work」には、Foundation Humanoid RoboticsのSenior Vice President of Finance、Gringeri Ben氏が登壇した。ヒューマノイドの産業・防衛分野への導入をテーマに、技術開発だけでは解決できない、現場での課題を語った。

同氏が強調したのは、顧客が求めるのは目を引くデモではなく、日々の作業を安全かつ安定して任せられることだ。同社の導入経験を交えながら、作業の速度や手順、品質の基準まで理解し、業務全体に対応する必要性を説明した。

例えば、故障時に生産ラインを長く止めないため、腕や脚などを交換し、取り外した部品を別の場所で修理できる設計を紹介した。ロボットの能力を高めるだけでなく、故障からの復旧や保守まで含めた運用が、本格導入を支える論点となった。

また、現場で働く人がロボットに不安を抱く場合もあり、安心して受け入れられる環境づくりにも言及した。技術の性能に加え、導入先の業務と人を理解することが、社会実装の鍵であると語った。

無人システムの進化に、日本企業はどう向き合うか

画像:講演で紹介された、無人システムの活用イメージ

セッション「無人システムは日本で本当に「使えて」「稼げる」のか?── グローバル市場から探る実装の鍵」に登壇したOndas Capital OÜのJames Acuna氏は、ウクライナの事例を交え、無人システムの技術や運用方法が急速に変化していると指摘した。スタートアップが資金調達や製品開発を進める間にも、現場で必要とされる技術は変わる。開発した製品を市場へ届けるだけでなく、現場の変化を継続的に取り込む必要性を語った。

また、無人システムを空のドローンや軍事用途に限って捉えない視点も示した。地上や水上、水中へと用途が広がる中、機体そのものに加え、位置情報の取得や周囲の認識、自律運用を支える技術にも言及。日本での事業化を考える上でも、完成品だけでなく、システムを構成する技術から参入の接点を探る示唆があった。

人間の役割については、1機ずつ操縦する形から、複数のシステムを監督・管理する形への移行を展望した。自律化の程度だけでなく、人がどの判断を担い、現場でどう運用するか。技術開発と運用設計を一体で考える重要性が浮かび上がる講演となった。

技術を現場へ届けるために、問われる企業間の連携

空間の設計、製造業務、設備の点検、ロボットの運用。各セッションの登壇企業が取り組む領域は異なるが、いずれも技術を実際の現場でどう役立てるかがテーマとなっていた。

基調対談では、何を実現したいかを自ら問い、未来をつくる人間の意志が語られた。その思いを形にするには、技術の開発に加え、導入先の業務や使う人への理解も欠かせない。新たな技術を生み出すだけでなく、現場で使い続けられる仕組みへ育てられるか。スタートアップと導入企業が知見を持ち寄る、共創のあり方が問われている。

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