株式会社あかり保証

かんぽ生命保険(以下、かんぽ生命)、アフラック生命保険(以下、アフラック生命)およびAflac Ventures Japan(以下AVJ)が共催するアクセラレータープログラム「かんぽ生命 - アフラック Acceleration Program 2026」の最終選考ピッチイベントが、2026年9月10日、東京・丸の内で開催された。書類選考と面談を通過した採択候補8社が、事業内容と各社との協業アイデアを経営陣に向けてピッチした。
本プログラムは、スタートアップのイノベーション創出力やアイデアと、かんぽ生命・アフラック生命が持つアセットを掛け合わせ、新たな価値の創造を目指す取り組みだ。2022年から毎年開催されており、多様化・複雑化する顧客ニーズに応えながら、既存事業の進化と新規事業の創出を狙う。
2026年は、ヘルスケア、顧客体験価値(CX)の向上、マーケティングセールス、AI/DX、人的資本の5領域に加え、特定領域を設けない「オープン募集」を新設。募集領域を広げ、166社から応募があった。
本稿では、最終選考のピッチイベントの様子をレポートする。
採択候補スタートアップ8社のピッチ
株式会社あかり保証──「老後ひとり難民」に、家族に代わる終身サポートを

単身者向けの終身サポート・身元保証サービスを提供するスタートアップ。万が一の際の駆けつけから入院手続きの代行、身元保証人の引き受け、住まい探し、死後事務までを包括的に担う。看護師やケアマネジャーなどの専門家がチームで対応する体制を整える。全国11拠点を構えており、年内に15拠点へと拡大する計画だという。アフラック生命に対しては、終身サポートと保険を組み合わせた「サービス統合型保険」の構想を提案した。
株式会社ヤグラ──「AIの攻撃を止められるのはAIだけ」、国産のAIセキュリティ

AIを活用したサイバーセキュリティのスタートアップ。社内のログやアラートをAIが探索し、検知から判断・遮断までを自動化する「ヤグラAI SOC」を主力に、セキュリティ製品ではなく「それを監視する人間」をAIに置き換える発想を掲げる。日本経済新聞社との事例では、アラート対応が導入前の約2時間半から2分弱に短縮されたと紹介された。かんぽ生命に対しては、金融機関を狙う最新のAI攻撃への対策において先進事例を共同でつくることを提案した。
ハノン・ケアシステム株式会社──訪問看護・在宅医療をAIで支える

訪問看護・在宅医療のDXと事業運営を手がけるスタートアップ。直営ステーションの運営で培った業務や人事、電子カルテ管理などを一気通貫で支える仕組みを構築する。AIネイティブな電子カルテを今年度中に直営ステーションに導入し、来年から外販する計画だ。看護にとどまらず介護・訪問診療への横展開も視野に入れる。アフラック生命に対しては、そのネットワークに、自社の電子カルテ(OEM提供)や6年分の運営データ・拠点・専門職コミュニティを掛け合わせた新事業の共創が提案された。
インパクトサークル株式会社──社会的インパクトを可視化し、価値として伝える

インパクトファイナンスとインパクト可視化を手がけるスタートアップ。企業や金融機関、ファンド向けに、事業が生む社会的インパクトの評価・測定から、顧客にとっての価値への「翻訳」と発信までを支援する。地域ベンチャーの資金調達を後押しした事例や、事業会社と制作した「インパクトブック」などを実績に持つ。アフラック生命に対しては、がん保障など「生きる」をテーマとする取り組みが契約者や社会に生む変化(アウトカム)を測定・可視化し、インパクトブックなどの形で社内外に発信することが提案された。
株式会社Carnot──自然言語で業務を自動化する生成AIプラットフォーム「Jinba」

米Y Combinatorからも出資を受ける、生成AIを活用した業務自動化のスタートアップ。非エンジニアでも自然言語で業務フローやAIエージェントを構築・実行できるプラットフォーム「Jinba」を提供し、これまで投資対効果の観点から見過ごされてきた「小さな改善」の自動化に狙いを置く。未経験者が約200人分の業務フロー自動化につなげた事例なども紹介された。提案では、現場に蓄積された業務ノウハウ(暗黙知)をAIに引き継ぎ、保険会社が共通して使える知見の基盤へと育てる構想が示された。
歯っぴー株式会社──薬剤を使わず歯垢を可視化、予防歯科のAIソリューション

口腔ヘルスケアの製品・AIソリューションを開発するスタートアップ。九州大学と共同開発したAI画像解析により、スマートフォンなどで口内を1枚撮影するだけで状態を分析し、臨床データに基づく食事のレコメンドなども示す。かんぽ生命に対しては、アプリ経由のデジタル動線や全国の郵便局を活用したリアル検診、将来的な予防型健康増進保険の共同開発などが提案された。
Flora株式会社──社員のヘルスケアを「コスト」ではなく「投資」に変える

働く人の健康を支援するヘルステックのスタートアップ。女性特有の健康課題などを起点に、企業向けの健康支援サービスを150社以上に提供してきた。多くの企業が「健康経営」の認定取得への対応で手一杯となり、本質的な従業員支援まで手が回っていない──今回は、その課題に向けた新サービス(PoC段階)が提案された。認定取得の作業をAIエージェントで支援・効率化し、その先のアプリによる健康支援まで接続することで、健康経営を「コスト」から「投資」へと転換する構想だ。
株式会社RightTouch──AIと人が協働するカスタマーサポート基盤「QANT」

AIを活用したカスタマーサポートプラットフォームのスタートアップ。Web上の行動履歴を捉える基盤をもとに、ログインエラーや商品ページの長時間閲覧といった「困りごと」を検知し、適切なFAQや問い合わせ窓口へ誘導するサービス「QANT」を提供する。大手金融機関を中心に導入が進んでいるとする。かんぽ生命に対しては、まずWebサポート領域での困りごと解決から着手し、将来的にはマーケティングや郵便局チャネルでのセールスへ展開する構想が示された。
かんぽ生命は3社、アフラック生命とAVJは2社と協業検討開始
ピッチ終了後、新規性・実現性・競争優位性・成長性等の観点による選考を経て、採択企業が発表された。かんぽ生命との協業検討に進む企業として、ヤグラ、歯っぴー、RightTouchの3社(採択候補としていた3社すべて)が、アフラック生命とAVJとの協業検討に進む企業として、あかり保証とハノン・ケアシステムの2社が発表された。協業時間軸などの観点で採択に至らなかった企業についても、事業内容・協業には引き続き高い関心があるとして、継続的なコミュニケーションを図る方針が示された。
保険会社とスタートアップの共創がどのような形で結実していくのか、今後の展開に注目したい。







