【開催レポート】事業会社×スタートアップで、人・資源不足に立ち向かう──MUFG ICJ ESG アクセラレーター 2026 デモデイ
プロモーション

【開催レポート】事業会社×スタートアップで、人・資源不足に立ち向かう──MUFG ICJ ESG アクセラレーター 2026 デモデイ

Written by
KEPPLE編集部
xfacebooklinkedInnoteline

2026年6月11日、東京・虎ノ門で、「MUFG ICJ ESG アクセラレーター 2026」のデモデイが開催された。

本プログラムは、三菱UFJ銀行と、ESG領域でベンチャー投資・事業共創を手がけるインクルージョン・ジャパン(以下、ICJ)が共催するアクセラレータープログラムである。2021年の初開催以来、70社以上の大企業と470社以上のスタートアップが参画し、数々の協業事例を生み出してきた実績を持つ。

4回目となる今回は、「人・資源不足」の解決に取り組むスタートアップ・中小企業の社会的インパクトを可視化し、大企業との協業の意思決定を加速させることを狙いとしている。特徴的なのは、単なる協業マッチングにとどまらない点だ。ICJの投資先であるインパクトサークル株式会社のAI技術を活用し、参加企業が生み出す社会的価値を示すことで、投資家や事業パートナーへの説明力を高め、資金調達や事業成長へとつなげていく──そこまでを見据えた設計になっている。

少子高齢化による人手不足が各産業で深刻化する中で、資源価格の高騰や廃棄物の増大を背景に、限りある資源の有効活用も急務となっている。本プログラムではエネルギー、資源循環、食、AIによる人材不足解消などの領域から139社の応募があり、9社が採択された。

大企業、スタートアップ、中小企業、投資家、金融機関などのプレイヤーが一堂に会し、会場は熱気に包まれた。本稿では、その模様をレポートする。

CASE:01 日立製作所 × クオンタリスラボ × 石坂産業──再生材マーケットプレイスを、実取引できる場へ

最初のパネルディスカッションでは、協賛企業の日立製作所と、採択された2社──クオンタリスラボと石坂産業による協業が紹介された。再生プラスチック(再プラ)の「供給」と「品質保証」の課題を解決し、原料として安定利用できる再プラの流通拡大を目指す。

登壇者:

  • 日立製作所 生産・モノづくりイノベーションセンタ リーダ主任研究員 中土 裕樹氏
  • クオンタリスラボ 代表取締役 榎本 剛司氏
  • 石坂産業 執行役員 友國 裕弘氏

再生材は廃棄物由来ゆえにバージン材より品質が安定せず、製品への活用の難易度が高い。品質や規制物質の混入リスクを評価する一律の手法が普及してこなかったことも、流通のボトルネックとなってきた。

(左から)登壇した中土氏、榎本氏、友國氏

日立製作所はこれに対し、AIで材料開発を最適化するマテリアルズ・インフォマティクスの技術を活用し、「再生材マーケットプレイス」を構築。売り手と買い手をAIでマッチングして需給を最適化し、回収会社、リサイクラー、商社、素材・製品メーカーといったエコシステム全体の最適化を通じて循環型経済の実現を目指す。中土氏によれば、マーケットプレイス上に品質情報を示すことで、売り手は自社材の価値を客観的に伝えられ、買い手は用途に合った材料を選べるようになる。

続いて登壇した石坂産業の友國氏。まもなく創業60年を迎える同社は、建設系混合廃棄物を中心とした産業廃棄物の中間処理を手がけるリサイクラーだ。「ゴミをゴミにしない」を掲げ、廃棄物を分別・再資源化して世に戻してきた。経産省の実証事業で直面した再プラの「量」と「質」の課題、その質の壁を突破したいとの思いから協業に手を挙げた。

「品質」の部分を担うのが、静岡県立大学発のスタートアップ、クオンタリスラボだ。創業から1年余りの同社は「見えないリスクを科学の力で可視化する」をミッションに掲げる。狙った成分だけを見る従来のターゲット分析に対し、背後に隠れた化学物質まで網羅的に分析できる点が新しい。今回は石坂産業の再プラサンプルを分析し、製品由来プラスチックと板状プラスチックを比較。通常は見落とされがちな非意図的添加物(NIAS)などを可視化してみせた。こうした科学的特徴づけにより、リサイクラーが手間をかけて選別した再生材の価値を「見える化」し、安全性を担保できると説明した。

3社は今後、まず一つの具体的なユースケースを共同で構築することを次の目標に据える。日立のマテリアルズインフォマティクスを軸に、石坂産業の供給力とクオンタリスラボの品質評価技術が重なり合い、再プラを「実取引できる場」へ近づける挑戦が始まっている。

CASE:02 関西電力 × OPTMASS──脱炭素支援の"その先"へ。関西電力が探す次の一手

(左から)登壇した坂本氏、和田山氏

2つ目のパネルでは、脱炭素ソリューションを展開してきた関西電力と、今回協業することとなったOPTMASSが登壇。

登壇者:

  • 関西電力 ソリューション本部 事業創出グループ部長 和田山 嗣倫氏
  • OPTMASS 代表取締役社長 坂本 雅典氏

協業相手のOPTMASSは2021年設立の京都大学発ベンチャーで、赤外線をエネルギーに変える「透明太陽電池」を開発する。既存の太陽電池は主に可視光を活用するもので、太陽エネルギーの約半分を占める赤外線は活かされてこなかった。同社は赤外線を選択的に吸収して発電する独自素材を持ち、吸収性能は既存素材を上回るとしている。同素材のフィルムを窓に貼れば大阪の高層ビル1棟で1メガワット級の発電も見込めるという。まずは関連技術を活用した遮熱フィルムを社会実装し、「フィルムを貼るだけ」という既存建物への施工のしやすさを強みに発電へ展開していく構想だ。

OPTMASSの最初の印象について和田山氏は、「(遮熱フィルムによる)省エネと(透明太陽電池による)創エネを組み合わせたロードマップがあるという点が、まず一番興味深いポイントだった」と述べる。「我々はエネルギーをお届けするというところを生業としている。そのため、最終的にエネルギーを作る透明太陽電池の社会実装に向けてどのようにお役立ちできるかをチームで議論してきた」(同氏)。

関西電力は、「AI時代のデジタルマーケティング」という観点からOPTMASSを支援すべく、ワークワンダース(後述)と連携し、発信アセットを迅速に構築。坂本氏もそのスピードとAI活用の的確さに手応えを感じたという。

和田山氏は、こうしたマーケティングの工夫も重要とした上で、「コアな尖った技術こそが何よりも重要だ」と強調する。省エネ用途の遮熱フィルムを入り口に、その先には窓が発電する「透明な太陽電池」という可能性が広がる。関西電力の顧客基盤と実装力が、OPTMASSの尖った技術と噛み合えば、街中の建物がエネルギーを生み出す未来も現実味を帯びてくる。脱炭素支援の「その先」を探る両社の協業は、その第一歩を踏み出したところだ。

採択企業ピッチ──多種多様なアプローチで人・資源不足に挑む

後半は、人・資源不足の解決に挑むスタートアップ6社が登壇。多様な領域から、それぞれの技術と事業構想が披露された。

サンリット・シードリングス──土壌微生物から農業の足元を変える

登壇者:代表取締役 石川 奏太氏

農業のイノベーションといえば、衛星やドローン、センサーを使ったリモートセンシングと機械化が思い浮かぶ。サンリット・シードリングスが挑むのは、その「足元」だ。農地の基盤となる土壌環境、とりわけ土壌微生物にこそイノベーションの余地があると石川氏は説く。新たな病害の増加や、戦争を背景とした肥料価格の高騰など、農業を取り巻くリスクとコストが増すなか、その解決のキーになるのが微生物だという。

同社は土壌の微生物分析と農地診断サービスを提供する。検査は、土を採取してポストに投函するだけで結果が出る簡易なキットに落とし込んでいる。結果として提出する分析レポートでは、土壌中の微生物の特性から、その土地に最適な資材、栽培方法までソリューションとして提示できるのが特徴だ。群馬県など行政との連携も進めており、「地域の特産物の栽培体系をより持続可能に変える栽培指導をするための調査インフラ」としての活用が進んでいるという。将来的には、林業や都市緑地など農業以外への展開も視野に入れる。

山伏(日本草木研究所)──日本の森を、食の切り口で宝の山に

登壇者:代表取締役 古谷 知華氏

日本の国土の7割を占める森。その林業市場は5000億円にとどまり、この50年で3分の1にまで縮小している。そして、林業産出額の大部分は、木材生産と栽培きのこ類の二択に偏っている。山伏は、ここに第三の「稼ぎ方」を持ち込む。

着目したのは、日本の森に眠るスパイスやハーブだ。和製カルダモンや野生のコショウ、レモングラスのような香りを持つ素材などがある。よく見かける杉も、新芽は美味しいという。

同社は北海道から沖縄まで20カ所の提携先とともに事業を展開し、山主からフェアトレード価格で原料を買い取る。販売先はNOT A HOTELなどのハイエンド宿泊施設やレストランで、加工済みのプロダクトは100店舗以上、原料は星付きを含む400店舗以上に供給されているという。オイシックスとのミールキット協業も進む。

次の目標として、年商1億円以上のリーディングカンパニー50社に森の在来植物を採用してもらうことを掲げ、安定供給に向けてスパイス栽培の研究にも着手している。

Sassor──蓄電池×AIで、捨てられる再エネを価値に変える

登壇者:代表取締役 石橋 秀一氏

再エネが増え、2050年には電源構成の5割近くを占めると見込まれるなか、天候に左右される発電と需要を一致させることが難しくなっている。Sassorが解決の鍵に据えるのが蓄電池だ。同社は、蓄電池制御による収益化プラットフォーム「ENES」を提供している。

同社は、多くの企業で災害に備えた「眠る資産」になりがちな蓄電池の遊休容量を活用し、エネルギーを貯めて電力を安定させる装置へと変えることを目指す。AIが施設の消費電力・発電量・市場価格を予測し、いつどの市場に充電・放電すればよいかを自動で判断する「複合制御」が技術の核だ。

同社によると、現時点の市況を前提とすれば、100kW級の比較的小さな産業用蓄電池でも年間100万円規模の収益を生み出せるという。経済産業省の実証プログラムに参画した実績を持ち、現在は事業化フェーズに入り、豊田自動織機の工場などで導入が進む。石橋氏は「エナジーイネイブラー」として、誰もが安心してエネルギーを使える世界を目指すと語った。自社の収益と、捨てられる再エネの活用という社会貢献が同じ方向を向いている点を、事業の本質的な強みとして挙げた。

Muso Action──フィジカルAIで、人手不足の現場を自動化する

登壇者:代表取締役CEO 村山 龍太郎氏

2030年には輸送できない荷物が3割以上に達するという試算もあるなか、物流をはじめとする現場の人手不足は待ったなしの課題だ。

昨年設立されたMuso Actionは、物流倉庫などで、これまでロボットが苦手としてきた非定型の作業を自動化していくためのソフトウェア「Muso」を開発する。

「目の前のものをつかんで」「箱に入れて」というような抽象的な指示でも目の前の状況に応じて物をつかみ、運ぶ動作が可能だという。さらに、AIによる自律動作だけに頼らず、ロボットが迷ったときには人が遠隔で操作・支援する「テレオペレーション」を組み合わせることで、現場で確実に動かせるようにしているのが特徴だ。

ロボット本体は安価な既製品を購入することでコストを抑え、将来的に人件費以下の価格でレンタルサービスを展開することを目指す。小売や物流などの領域ではすでに有償PoCを進めているといい、村山氏は将来的には在宅介護領域まで応用を広げたいと展望を語った。

同氏が、現場への理解を深めるため、自ら物流倉庫などで単発バイトをしてきたという泥臭いエピソードも会場の関心を集めた。

curioph──対話型AIで、現場の「なぜ」を可視化する

登壇者:COO 若狭 僚介氏

curiophは対話型AIリサーチツール「POLLS」を手がけ、経営層と現場社員の間に生まれる「ギャップの解消」を掲げる。

「(顧客や社員に対してヒアリング等の調査をする際に)現場で生まれた生々しい声は、上がっていく過程でどんどん要約され、数字に転換されていく。『何が起きているか』は分かっても、『なぜ起きたのか』という理由が見えづらくなる」──玉木氏は、このような課題が経営判断のずれに繋がる状況に課題を感じてきたという。

同社の対話型AIは、調査の設計から配信までを担い、従業員や現場の声を継続的に収集する。AIが深掘りのレイヤーまで設計できるため、定性的な「本音」に迫れるという。また、活用を続けることで会社専用のツールに育つこともメリットだ。

社内向けでは、営業日報や週報として情報を取得することで、日々のオペレーションに干渉しないようにデータ蓄積を行い、人事データの背後にある「なぜ」をたどれるナレッジづくりを進めているという。

ワークワンダース──伝わる言葉を、生成AIで量産する

登壇者:代表取締役CEO 安達 裕哉氏

ワークワンダースが掲げるのは「伝わる言葉の量産」。言葉の専門家のノウハウと生成AIを掛け合わせ、SEO記事、インタビュー記事、対談記事、PRリリース、メルマガ、調査レポートなど、企業に必要な文章制作を支援する会社だ。人材不足で継続的な発信に手が回らない企業や、専門の担当者を置きづらい中小企業に代わって、コンテンツ制作・運用の負担を引き受ける。

強みは経営陣のバックグラウンドにある。代表の安達氏は、著書『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者であり、取締役CPOの梅田悟司氏は元電通のコピーライターとして知られる。

同社のAIによるメディア自動運用サービス「AUTOMEDIA」は、AIが求められる成果物のトンマナを学習し、文章を生成し、チェックする体制も含めて構築している点が特徴だ。大幅に効率化することでリーズナブルな料金体系と納期短縮が可能になっているという。

加えて、日々AIでコンテンツ制作を行う中で、AIに引用されやすいコンテンツのナレッジが蓄積しているため、「AI検索対策」を得意としているという。大手企業のオウンドメディア含め、100メディア以上での採用実績を有する。

インパクト可視化講評──事業の社会的価値を、どう読み解くか

登壇した五十嵐氏、加藤氏、大村氏
(左から)登壇した五十嵐氏、加藤氏、大村氏

会場では、採択企業それぞれの事業の社会的インパクトを分析しまとめた「インパクトブック」が配布された。

作成したインパクトサークルの大村 龍太郎氏は、その狙いを「金融機関や投資家との協業・共創を推進するためのコミュニケーションツール」と表現する。インパクトとは、事業が生み出す社会的・環境的な価値のこと。データを精緻に取って差分を換算する投資家向けの「インパクトレポート」とは異なり、定性的な分析も含む。ロジックモデルを各社と議論しながら整理する過程で、事業の価値は何か、重要なステークホルダーは誰か、どのアウトカムの優先順位が高いか、といった点を明らかにしていったという。

講評として、社会変革推進財団 インパクトオフィサー/事業部長の加藤 有也氏、KIBOW社会投資 インベストメントプロフェッショナルの五十嵐 剛志氏が、インパクトの観点から「面白い」と感じた1社をそれぞれ挙げた。

加藤氏が選んだのは、山伏(日本草木研究所)だ。インパクトの「具体性」の高さを評価した。「森林保全」という漠然としたテーマではなく、「地域の林業事業者の収入向上」という具体的なステークホルダーの変化を目指している点を挙げ、インパクトの創出と事業成長が結びついた構造になっていると指摘した。同社の古谷氏は「インパクトは定量的なものしか評価されないと思い込んでいた。仕組みそのものをインパクトとして捉えてもらえたのは大きな気づきだった」と応じ、今後事業展開を続ける中で対外的な説明資料としても活用したいと語った。

五十嵐氏が選んだのは、Muso Action。評価したのは「誰の人手不足を解決するのか」がはっきりしている点だ。対象の広い「人手不足の解消」のなかで、流通・製造・小売、そして将来的には家庭での介護へと、助ける相手と狙う市場を具体的に描けており、インパクトブックを作る過程でその輪郭がより明確になったと指摘した。さらに、同社が目指すのは人手不足を埋めること自体ではなく、人間が創造的な仕事に集中できる社会だ。そのゴールから逆算すると、働き手のリスキリング(学び直し)支援のような未着手の領域も見えてくる。そこにこそ他社との共創のチャンスがあるという。同社の村山氏は「お客様に使っていただけるロボットにしたいという考え方や、目指すビジョンが可視化されたのは非常に良かった」と手応えを述べた。

次の協業の芽が生まれる場へ

イベント終盤には、採択企業らによるデモ展示と軽食を交えたネットワーキングも行われた。

主催者として挨拶に立ったICJ 代表取締役の服部 結花氏は、スタートアップ単独では成長しきれない部分を中堅・中小企業や大企業との連携で実現していく重要性を語り、中堅・中小企業も加わる形が実現した今回のプログラムに手応えを示した。会場に集まった一人ひとりのエネルギーから新たな営みが生まれると確信していると述べ、「次の協業の芽を育ててほしい」と呼びかけた。

「人・資源不足」という、いま日本社会が直面する切実なテーマのもとに、再生材、脱炭素、農業、林業、エネルギー、ロボティクス、AIと、実に多様な領域のプレイヤーが集まった4回目のデモデイ。

印象的だったのは、大企業×スタートアップという従来の枠組みに、中小企業・ベンチャーまでもが加わり、それぞれの強みを重ね合わせて社会課題に挑む構図だ。日立製作所・クオンタリスラボ・石坂産業の3社協業に象徴されるように、協業の解像度は着実に上がっている。

そしてもう一つの軸が、社会的価値を「インパクトブック」として可視化する試みである。事業ピッチだけでは伝わりきらない、事業の社会的意義やステークホルダーへの価値を言語化することは、投資家や事業パートナーへの説明力を高め、資金調達や採用、さらなる協業へとつながっていく。インパクト創出を、事業成長と分かちがたく結びついたものとして捉え直す視点が、会場全体に共有された一日だった。

ここで生まれた出会いが、どのような協業へと育っていくのか。続報が楽しみだ。


※本記事は以上です。


「MUFG ICJ ESGアクセラレーター 2026」公式サイトでは、協業ケースの議論サマリーや、登壇企業のインパクトブックをご覧いただけます。

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業