関連記事
衛星測位システムで社会を便利にするスタートアップ5選

位置情報AI技術および宇宙事業を手がけるLocationMind株式会社が、シリーズB Extensionラウンドで総額約17.9億円の資金調達を完了し、累計調達額が約67億円に到達した。今回のラウンドではエクイティ約8.5億円、デット約9.4億円を調達している。調達資金は、国内外のビジネス展開加速に充当する。
2019年2月設立のLocationMindは、AIを活用した人流・地理空間データ解析事業と、GNSS信号認証など衛星・測位技術領域を含む宇宙関連事業を主軸としている。複数の位置情報ソースとビッグデータを組み合わせた高度な空間解析技術、ならびにセキュリティ技術の開発に注力している。国内外の大手企業や自治体、研究機関との連携実績も多い。
米国の位置情報データ企業Irysの買収ならびに「pinable」事業取得を通じた子会社AdvertisementMindの設立など、M&Aによる事業基盤拡大。
AI事業領域では、スマートフォンやIoT機器から得られる人流データを活用し、都市交通の分析、店舗立地やイベント来場者の推定、感染症対策等、多様な分野で予測・解析サービスを展開している。新型コロナ禍では、感染拡大予測など社会課題への応用が進んだ。宇宙事業では、衛星測位信号の改ざん(スプーフィング)対策となる信号認証技術を開発し、官庁やインフラ事業者向けの利用環境構築を進めている。
代表取締役CEOの桐谷直毅氏は、ゴールドマン・サックスの投資銀行部門出身で、2019年にLocationMindを共同創業した。設立の背景には、東京大学空間情報科学センター・柴崎研究室の技術を事業化する目的があった。
位置情報分析業界は、スマートフォンやIoT端末の普及拡大に伴い、都市交通、小売、不動産、観光、行政支援など多様な分野での活用が進んでいる。世界市場規模は数百億ドル規模に達しており、2020年代後半には倍増が予測されている。一方、情報セキュリティやプライバシー保護の強化も求められている。日本国内では通信キャリアや地図会社、外資系データベンダーなどが主要プレーヤーだが、AI解析や複数データソース統合による差別化を図る企業は限られる。近年は、店舗型ビジネスの商圏分析やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の需要拡大も業界成長の背景にある。
2025年春に実施されたIrysの買収と「pinable」事業の取得を通じ、非連続な成長を狙う戦略的なものとなった。Irysの買収によって、LocationMindは世界150カ国以上のGPS由来ビッグデータ活用基盤を手に入れた。Irysはニューヨークに本拠を構え、ユニコーン企業を含むグローバルな顧客基盤を持つ。
AdvertisementMindはBluetoothビーコン「pinable」事業の取得を起点に、店舗や鉄道、公共施設での来場者行動データ分析やプッシュ型広告サービスの開発に取り組んでいる。これにより、従来の都市部人流ビッグデータに加え、屋内や施設単位での精密な位置検知技術の提供が可能となった。
サービス面では、NTTドコモなどパートナー企業とのデータ連携による「xPop」シリーズを展開し、商圏分析や広告効果測定など、行政や交通、商業分野への利用が拡大している。
プライバシー対策については、データ処理時に個人特定が不可能な匿名化や統計処理を導入し、用途確認やガバナンス体制の強化にも注力している。スタートアップによるグローバルM&AやPMI(買収後統合)、クロスボーダー組織構築などについても実績を積みつつある。
LocationMindは、今後もデータ基盤と解析技術のグローバル展開を計画している。自社保有のGPSやIoTデータのカバレッジ拡大、AI解析技術の高度化、広告領域や需要予測分野での新規事業開発が視野に入る。シナジーの期待できるM&Aや海外展開の継続的な検討も進めており、競争環境の変化に対応しつつ事業の拡大を図っている。
スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします。
※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします
※配信はいつでも停止できます