【独自調査】仮想現実を探求するXR・メタバース関連スタートアップの動向

【独自調査】仮想現実を探求するXR・メタバース関連スタートアップの動向

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谷口 毅


XRデバイス開発の加速

成長が鈍化する海外テック企業を中心に、XRデバイスに活路を見出しており、XR市場が再加速している。2023年秋には、MetaがMR/VRヘッドセット「Meta Quest 3」の発売を予定している。主力事業のFacebook広告が飽和する中で、メタバースに新たな収益源を見出している。

これは、SNSという他者との交流のためのオンライン空間から、NFTアイテムや物の売買などビジネス利用も可能な空間への移行を意味している。同社の影響力が弱かったB2B領域の囲い込みにもつながりうる。また、SNSにおけるソフトウェアを重視した事業戦略とは違い、ハードウェア開発を目的とした企業買収や自社での研究開発を積極的に行ってきた※1。メタバース市場で覇権を取るために、ハードウェアと自社アプリをセットで販売する必要性を強く感じていると思われる。これは、GoogleやAppleのスマホというハードウェアとソフトウェアによるユーザーの囲い込みと重なる部分がある。

また、Appleは、同社初のXRデバイス「Apple Vision Pro」を発表した。今回発表した新製品を「空間コンピューター」と位置づけており、空間にディスプレイの様に画像を映し出し、コントローラーなしで視線や手だけで操作できる点を最大の特徴としている。

ゲームや映像観賞といった従来のVRデバイスの用途に加え、通話アプリや表計算ソフトウェアへの対応、製品の3D表示による設計業務の効率化など、デスクワークでの使用に重きを置いている点がMeta製品との違いである。約50万円と「Meta Quest 3」より42万円程度高額だが、主にアプリ開発者やテクノロジー好きの人々をユーザーとして想定しており、将来的には低価格の一般消費者向けデバイスも発表されるだろうとの意見もある※2

Appleは、2016年頃よりAR分野への投資を強化し、AR関連企業の買収やAR開発プラットフォーム「ARKit」のリリースを行ってきた経緯があり、Metaのように市場参入の準備を着実に進めてきた。今回の新製品発表はこうした取り組みが実った形となる。

代表的なXRデバイスの比較(価格は2023/7/28の為替レートによる)

代表的なXRデバイスの比較
AppleのCEO Tim Cook氏は、ARに注目する理由として、人のつながりを増幅させるのに役立つ点を指摘する。また、閉ざされた空間であるVRに対し、ARはより日常に近いため、iPhoneと同様に万人受けする技術であると話す※3。これは、MetaがVRやメタバースに注力しているのと対照的な戦略である。

VRやメタバースが完全な仮想空間上での活動であるのに対し、ARは現実世界にデジタルコンテンツを表示するため、日常の延長線上で気軽に利用でき、幅広い用途で活用できる印象がある。

XR市場の現状

世界のXR市場規模は、2022年時点の調査では138億ドルに達し、2026年には約4倍の509億ドルに増加すると推計されている。地域別のXR関連支出では、1位の米国が支出全体の3分の1以上、2位の中国が4分の1近くに達する見込みであり※4、この2か国の世界のGDPに占める割合を上回る。米国や中国が牽引役となる背景には、ヘルスケアやゲーム、教育などのXRを活用しやすいエンドユース産業の成長が見込まれる点が挙げられる※5

XR市場が拡大を続ける理由は、3つ挙げられる。

1つ目は、5Gの登場である。前世代の通信規格である4Gと比べ、高速でデータの送受信ができる。通信環境の向上により、オンライン会議は対面で話しているかのような自然なやり取りが可能になる。同時に接続できるデバイス数が増えることにより、人が多く集まる場所でXRを活用したイベントを実施するなど、これまでよりもXRの活用分野が広がることが予想される。

2つ目には、ソフトウェアの進化が挙げられる。一昔前の技術では仮想空間の質が悪く、満足のいく臨場感が得られなかったが、映像や音響の高性能化で、現実と遜色ない仮想空間を生成できるようになった※6。また、頭の動きと映像のズレによって発生する「VR酔い」を軽減する技術の登場などでより快適な体験を可能とした。

3つ目は、デバイスの進化だ。デバイスの低価格化が進んだことで、従来のように10万円前後のヘッドマウントディスプレイを購入する必要がない。PCなどに接続せずに単独で使えるスタンドアローン型で5万円前後、スマートフォンを差込むタイプであれば数千円で購入できる※6。VRデバイスの短所であった重量の問題も解消されつつある。例えば、Metaが発売予定の「Meta Quest 3」は、前モデルに比べ40%軽量化されており、長時間の使用でも快適性が保たれる設計となっている※7

上述の理由に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うオンラインイベントの増加もポジティブに働いている。

また、日本での市場規模は、2022年9月時点の調査で2021年は744億円、2022年は1825億円まで成長するとの推計がなされた。そして、2026年には約5倍の1兆円を超えるとの予測もある※8。成長率が世界市場に比べて高い理由は、需要拡大のフェーズが米国や中国から一足遅れてやってきたためと考えられる。これまで日本は先進国の中でもデジタル化が遅れていると指摘されていたが、新型コロナウイルスの拡大に伴い、特にビジネス分野でオンライン化・DX化が一気に進められた。

XRの種類とメタバース

XRとは、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)など、現実世界と仮想世界を融合して、新しい体験を創造する技術の総称である。各技術が融合しているサービスもXRに含まれる。今回はXRに含まれる以下3つの技術に加え、XRと密接な関係があるメタバースに焦点をあてる。

・VR(仮想現実)
VR用デバイスを装着することで、360度広がるデジタル上の3次元空間を体験することができる技術である。代表的なデバイスとしては、Sony Interactive Entertainmentの「PlayStation VR」や、Metaの「Meta Quest」などが挙げられる。ゲームでの利用が多かったが、VRによる不動産の内見、従業員研修、バーチャル店舗などビジネス分野での活用も進んでいる。

・AR(拡張現実)
スマートフォンや、サングラス型のARグラスを通して現実世界にデジタルコンテンツを重ね合わせて表示する技術である。Nianticが開発した現実の街並みにCGキャラクターが登場するゲーム「Pokémon GO」やSnow Corporationが運営するカメラアプリ「SNOW」などがある。専用デバイスがなくても使用できるため、ゲーム・広告などのエンターテインメント分野からビジネス分野、教育分野まで幅広く活用されている。

・MR(複合現実)
専用のゴーグルを使用し、ARで映し出された現実の世界に、VRが作り出す仮想の物体を組み合わせることで、現実空間と仮想空間を融合させる技術である。ARは現実世界にデジタルコンテンツを表示するのみであるのに対し、MRでは現実世界に表示されたデジタルコンテンツに触れたり、移動させたりすることが可能である。代表的なデバイスとしては、Microsoftの「HoloLens」が挙げられる。MRデバイスは、高度な3D開発が必要なためコストが高く、医療分野の研修や製造業での整備作業といったビジネスでの利用が主となっている。

・メタバース
オンライン上に存在する仮想世界を指す。メタバースの代表的な事例としては、複数のユーザーとシューティングゲームや建築を楽しめるゲーム「Fortnite」(運営:Epic Games)や、仮想空間にアバターでログインし、多人数でコミュニケーションができる「VRChat」(運営:VRChat)、アバターを使用し、メタバース内での会議や共同作業が可能なVRワークスペース「Horizon Workrooms」(運営:Meta)などがある。仮想空間に入り込むだけでなく、アバターを通じて仮想空間内での活動に参加し、他者と交流できる点がメタバースの大きな特徴といえる。

XRセクターカオスマップと注目企業

スタートアップデータベース「KEPPLE DB」の情報をもとに、2023/06/07時点で「XR」「VR」「AR」「アバター」「メタバース」いずれかのセクタータグを付与している国内企業152社を28カテゴリーに分類し、カオスマップを作成した(非スタートアップ、VTuber事務所などは除く)。

カオスマップ
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カオスマップ掲載企業のうち、KEPPLE DBにおけるPOST評価額が高く、直近で資金調達実績がある企業などを中心に、各カテゴリーにおける注目企業を紹介する。

バーチャルライブ配信

バーチャルライブ配信カテゴリーには、7社分類している。アンビリアルは、アバターを作成し雑談やカラオケを配信できるアプリ「トピア」を運営する企業である。近年、キャラクターアバターを使ったYouTube配信を行う「VTuber」と呼ばれる配信者が話題となることが多いが、「トピア」は特別な機材が必要なく、誰でも気軽にバーチャルキャラクターになり配信できるという特徴がある。

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新卒で資産運用会社のFirst Sentier Investorsに入社し、アナリストとしてアジア・日本の株式の分析を行う。その後、リクルートでプロダクトマネージャーを経験。2022年にケップル入社。現在はデータベース部門を管掌、および海外事業部門を兼務。スタートアップデータ拡充のための企画、分析に加え、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信を行う。

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