【独自調査】次世代コミュニケーションを牽引するSNS関連スタートアップの動向

【独自調査】次世代コミュニケーションを牽引するSNS関連スタートアップの動向

written by

谷口 毅

2023年7月にTwitterに対抗する短文投稿SNSとしてMetaが「Threads」を発表した。20億人のユーザーを獲得しているInstagramとの連携が可能な点で優位性があり、オンラインサービスでは最速の5日間で登録者数1億人を超えたという。TikTokが隆盛したタイミングのように大規模な勢力図の転換が起こった場合、今後求められるSNSサービスが大きく変わりうる。

2021年における世界のソーシャルメディア使用者数は42.6億人で、2027年には、世界人口の約70%である60億人近くになると予想されている※1。一日当たりの使用時間も、世界平均151分/日(2022年)※2と年々増加している。

こうした中、複数のSNSを用途別に使い分けたり、特定のSNSの中で複数アカウントを所持するといった利用方法が若い世代を中心に主流となり、現在多くのユーザーを獲得しているSNSプラットフォーム以外にも、細分化され個々のニーズに答えるようなサービスへの需要が高まっている。

例えば投資情報に特化したものや、家族や友人とのコミュニケーションに限定されたサービスが挙げられる。「誰とでもつながる」ことよりも「誰と何でつながるか」を基軸としたプラットフォームが誕生するなど、サービスの多様化が注目される。また、AIやメタバースを活用したSNSも登場するなど、様々な領域との融合も期待される。

本レポートでは、転換期を迎えるSNS市場について、国内スタートアップ企業とその動向を考察していく。

ソーシャルメディア市場の現状

SNS(広告収入含む)の世界市場規模は、2022年に1246億米ドルとなり、2027年までの年平均成長率は7%で1831億米ドルに達すると予測されている※3。市場の成長は、使用者数の増加にほぼ連動する形となり、単価上昇はあまり見込まれていない。

2023年の国内ソーシャルメディアマーケティング市場は、1兆899億円で前年比17%増の見通しである。2027年には2023年比約1.7倍の1兆8868億円に達すると予想されている※4

国内のSNSマーケティング市場が大きく伸びている理由としては、消費者の行動変容が挙げられる。購買の意思決定の際に、SNSを活用する傾向が若い世代を中心に増え、それに合わせて企業の投資も増加したと考えられる。海外よりも少し遅れてこの傾向が現れたため、世界と比較して日本の方が高い成長率となっている。

海外と日本の比較

月あたりのアクティブユーザーを示すMAU(Monthly Active Users)を基準とした世界と日本のSNSランキングをまとめた。

世界SNS(世界)MAU ※5日本SNSMAU ※6
1位Facebook29.6億1位LINE9500万
2位YouTube25.1億2位YouTube7000万
3位WhatsApp20億3位Twitter4500万
3位Instagram20億4位Instagram3300万
5位WeChat13.1億5位Facebook2600万
6位TikTok10.5億6位TikTok1700万

海外と日本のMAUにおいて顕著な差が現れているのは、FacebookとTwitter、LINEとWhatsappである。Facebookは、海外ではビジネスアカウントとして活用されているが、実名での登録が必要なことから、日本での利用は伸びておらず、より匿名性の高いTwitterが情報発信のツールとして支持されていることが分かる。

また、日本では、Whatsappの利用が多くない一方、同じくメッセージングアプリのLINEは、ほぼすべての世代で使われる生活インフラとなっている。その背景には、日本ユーザーと相性の良い豊富なスタンプなど、日本という特定市場のユーザーに合わせた独自の開発が行われてきたことが挙げられる。

TikTokは、立ち上げから4年でMAU10億人を突破しており、他に類を見ないスピードで成長している。デジタルネイティブであるZ世代からTikTokなどの短尺動画SNSが支持を集めている。時間対効果を意識するユーザーが、直感的に内容を理解でき手軽に短時間で視聴や投稿ができるSNSを求めていることが背景にある。

こうした影響もあり、Facebookは10代の新規ユーザー獲得に苦戦している。既存SNSプレイヤーの中には、YouTubeの短縮動画サービス「Shorts」など、TikTokに対抗する動きも見られる。TikTokを禁止する方向に進む米国では、Trillerが使われ、TikTokを禁止しているインドでは、Mojが3億人のMAUを獲得している。今後、短尺動画を活用したサービスの増加が予想される。

世界の注目SNS

インド発のShareChatのMAUは、1.8億人にのぼる。写真や短文、動画をシェアすることができ、InstagramやTwitterといったアプリに似ているが、英語を排しインドにおける15のローカル言語に特化している点に特徴がある。英語は政府により準公用語とされているが、実際に英語を話すのは人口の10%程度と言われており、より馴染みのある地域言語に特化したShareChatが、使い心地の点で支持を集めたと考えられる。

親会社のMohalla Techは、2022年にGoogleやTimes Group、Temasekなどから2.6億米ドルの資金調達を行ったことを発表し、評価額は50億米ドル※7となった。同社はこの他に、上記に記載の短尺動画SNSのMojも運営している。

前述した米国発ショート動画SNSのTrillerは、ソーシャルメディアを活用するAI企業として差別化を図っている。複数動画を撮影するとAIが自動で編集しミュージックビデオを作成することができ、InstagramやTwitterといったアプリへの埋め込みも可能である。閉鎖的な既存のプラットフォームの障壁を取り払っていくことを目標とし、AIによりクリエイターのコンテンツ作成や視聴分析をより効果的に行えるとしている。

音楽やスポーツをはじめとした総合プラットフォームの構築を掲げ、メタバースへの参入を発表する※8など、AIを基軸としてSNSやメタバースといった他分野との融合により新たな価値を創造している。

特定の分野に特化したSNSとして挙げられるのは、女性役員をはじめとしたビジネスウーマン向けのプライベートソーシャルネットワークを運営するChiefである。2022年にCapitalGが主導するシリーズBラウンドで1億ドルの資金調達を行い、評価額11億米ドルでユニコーン入りを果たした。

組織におけるDEI(多様性、公平性、包括性)の重要性が高まる中、未だ企業の役員クラスでマイノリティの地位にある女性向けにコミュニティを構築し、共通する課題の解決やビジネスに関する情報交換、キャリア形成の場を提供している点が高く評価されている。登録には審査を通過する必要があり、2022年時点で12,000人の女性ビジネスリーダーが登録しているという※9

Chiefのように、ある特定の属性や分野に特化したSNSは後述する日本のスタートアップでも多く見受けられる。
SNS犯罪やトラブルが発生する中、安全性や信頼性が保証されたSNSのニーズが高まっている。例えば、米国のBlindは、大手テック企業の従業員に特化した匿名SNSで、会社のメールアドレスでの登録が必要なことから従業員であることを確認できる。一方で匿名という特性上、企業の裏情報や実名では相談しにくい給与や昇格・解雇に関する話題などをシェアすることができ、ユーザーを伸ばしているという。

SNSとメタバース

オンライン上の仮想世界で様々な体験や交流を行うメタバースは、SNSの可能性を拡張するプラットフォームとしても注目されている。

2021年にMetaがFacebookから社名変更した理由の一つに、メタバース上で様々なコミュニケーションや経済活動を行う未来が訪れるとの考えがある。同社が運営するメタバース「Horizon Worlds」は、VR機器を装着しアバターを使って仮想空間を体験する仕組みで、ゲームやイベント、コミュニケーションなどを楽しむことができる。

この他に、米国発ソーシャルVRの「VRChat」やシンガポールのMetadreamが運営するメタバースSNS「Bondee」などが人気を伸ばしており、メタバースがSNSの拡張版としてどの程度拡大していくのか注目である。

カオスマップと注目企業

本レポートでは、スタートアップデータベース「KEPPLE DB」の情報をもとに6月7日時点でSNSセクタータグが付与されている国内企業95社を21カテゴリーに分類分けした(非スタートアップ、SNS以外を主事業としている企業は除く)。以下、各カテゴリーにおける注目企業を紹介する。

カオスマップ
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マーケティング支援

マーケティング支援カテゴリーには、SNSマーケティング・運用支援を行う企業を13社分類し、最も企業数が多いカテゴリーとなった。企業活動において、SNSを活用したマーケティングは重要度を増しているが、その反面、社内に精通した人間が不足しているという課題があり、SNSマーケティングの企画立案から運営までワンストップで行う企業への期待が高まっている。

該当企業が多いため、顧客獲得における競争が激しいことが予想され、各クライアントに合わせた独自のSNSマーケティングを運営できるかが鍵となりそうだ。

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新卒で資産運用会社のFirst Sentier Investorsに入社し、アナリストとしてアジア・日本の株式の分析を行う。その後、リクルートでプロダクトマネージャーを経験。2022年にケップル入社。現在はデータベース部門を管掌、および海外事業部門を兼務。スタートアップデータ拡充のための企画、分析に加え、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信を行う。

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