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微生物と遺伝子導入技術で切り拓く、サステナブルな化合物生成の新境地

植物は医薬品や生活用品の材料として古くから活用されてきたが、近年ではバイオテクノロジーの進歩により、これまで活用されていなかった植物の有用な成分を使用した新製品の開発が進んでいる。
世界の植物抽出物の市場規模は、2024年に63億4000万米ドル、2032年までに1327億米ドルに増加すると予想されている。ヨーロッパは、2024年に32.96%の市場シェアで植物抽出物市場を占め、米国でも大幅に増加している。※
植物市場には、ハーブ、スパイス、エッセンシャルオイル、植物抽出物など、幅広い植物由来の製品が含まれており、近年急速に成長している。これらの製品の中には、石油由来の化学製品や合成繊維の代替として機能し、環境負荷の低減することから注目を集めており、今後も成長が期待されている。
今回は、植物由来の製品や素材を開発するスタートアップについて触れる。
合成生物学を利用した独自の遺伝子導入技術により、植物由来の多様で複雑な化合物(二次代謝産物)を持続可能かつ安価に製造できる発酵生産プロセスを開発している。大腸菌などの微生物に多段階(20個以上)の遺伝子を組み合わせることで、これまで植物からしか抽出できなかった天然化合物の成分を人工的に生成する。
米国で研究が進んでいる分野ではあるものの、一つの微生物に20個以上の遺伝子の導入を可能にした技術は、他に類を見ない同社の強みである。この技術により、既存の医薬品・化粧品・健康食品の原料や、精製の難しかった生薬成分まで健康増進に寄与する化合物の開発が可能となった。
2023年6月には、シードラウンドにてBeyond Next Ventures、Angel Bridge、Plug and Play Japanを引受先とした第三者割当増資による2億円の資金調達を実施した。2025年3月には、一般社団法人 科学技術と経済の会が主催する【第12回技術経営・イノベーション大賞】において、「選考委員特別賞」を受賞した。
大豆などの植物由来原料を用いて肉に近い食感や味を再現する、プラントベースフードの製品企画を行う。パティやカレー、フライドチキン風食品などの食品を製造している。同社が製造するプラントベースフードは、国内五つ星ホテルのヴィーガン向けメニューへ採用された実績を持つ。大豆ベースのプラントベースフード製造には、素材となる粒状大豆たんぱくの生産など、中間の加工プロセスが発生する。
今後は、大豆を用いた食品の製品企画に限らず、大豆の生産や加工までを自社で新設する工場で行う計画だ。人口増加を背景とした食料不足が懸念される中、同社は環境変化に左右されない食品生産の仕組みを目指している。
2025年3月には、コンコードエグゼクティブグループを引受先とした資金調達を実施した。
企業HP:https://nil-co.jp
髪と頭皮のためのエイジングケアブランド「SUNA」を開発、提供する。SUNAは、白髪や髪のやせ細り、頭皮のダメージなどの現代の悩みに焦点を当て、「植物のチカラと最先端技術で、安全安心に健康的なエイジングケア」を叶えるための製品だ。一般的なナノ粒子よりさらに小さいサイズで、浸透・吸収されやすくなるようデザインした状態でナノ化するSNP(スーパーナノ粒子)技術が特徴。SUNA製品にはメラニンの生産を促進する効果があるオリジナル成分のタラタンニンを配合し、SNP技術で有効成分を毛根までダイレクトに浸透・吸収させることが可能となる。
2025年5月には、理美容・エステ・ネイル分野の総合商社として業界最大手である滝川株式会社と業務提携を締結し、「SUNAスカルプエッセンス ダブルブラックスーパー」の取扱いを開始した。
企業HP:https://circulife.jp
山林を整備する際に間引かれた間伐材から環境負荷の低減に貢献する「木糸」を製造し、木材の繊維を原料とする糸「木糸」生地を製造する。間伐材は伐採したまま放置されることもあり、これらの間伐材を木糸として活用し、地域の林業の活性化やCO2削減を目指す。同繊維は、靴・服・カーテンなどの製品に用いられる。
2023年7月には、非加熱15秒で染まる草木染め染料「Circular Dye/サーキュラーダイ」を発売した。
植物由来の新素材「PlaX」を開発する。PlaXは、サトウキビを原料とするポリ乳酸にBioworksが独自に開発する植物由来の添加剤を加え、品質と機能をアップデートさせた新しい合成繊維。植物由来のため石油を利用せず、また、燃やしてもCO2を発生しないため環境問題にも貢献する。
2024年1月には、Lavender Hill Capital、Purpose Venture Capital、ヤギ等を引受先とした第三者割当増資による4.15億円の資金調達を実施した。2025年5月には、初の海外拠点として台湾支店を設立した。また、台湾の繊維会社AceGreen Eco-Material Technology Co., Ltd.と提携し、台湾国内および欧米を中心とした国際市場におけるPlaXの糸(長繊維)販売・プロモーションを開始した。
植物内で作られるタンパク質「植物由来EGF(上皮成長因子)-Uni+」を開発・製造する。植物由来EGF-Uni+は、細胞増殖因子のひとつである上皮細胞増殖因子(EGF)活性を有する植物内で作られたタンパク質で、化粧品原料として用いられる。製造工程において、動物由来の成分を使用していないため、人獣共通感染症の原因となる病原因子が製品に混入する可能性はない。一過性遺伝子発現法というバイオ技術を用い、植物内で有用タンパク質を生産し、製品化を目指す。
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※FORTUNE BUSINESS INSIGHTS「植物抽出物の市場規模、シェア&業界分析、ソース(スパイス、ハーブ、花、葉など)、技術(CO2抽出、溶媒抽出、蒸気蒸留、包囲など)、アプリケーション(食品&飲料、薬学および栄養補助食品、および吸収症)、および地域予測、2025-2032」
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